コラム

いまさら聞けないクルマのアレコレ【Honda SH-AWD編】

モーターとエンジンの利点をブレンド

 ホンダ独自の技術である「SH-AWD(スーパー・ハンドリング オールホイールドライブ)」。これは、コーナリング中の外側と内側の車輪間で生じる走行距離の差を逆手にとって、外側のタイヤに駆動力を大きく配分することでクルマを積極的に曲げる技術だ。SH-AWDでは、エンジンが発生する駆動トルクを左右輪に分配するが、現行旗艦モデルのレジェンドと2代目NSXでは、ひとつのエンジンに3つのモーターを組み合わせ、それぞれのトルクを統合制御して全輪を駆動する「SPORT HYBRID SH-AWD」が採用されている。これにより、前後左右の4輪ごとのきめ細かいトルク配分制御や、瞬間的かつ強大な加速、ニュートラルなハンドリング特性を得ることが可能となっている。

 

3.5リッターV型6気筒エンジン+3モーター

 レジェンドもNSXも3.5リッターのV型6気筒エンジンを搭載し、組み合わせるトランスミッションはデュアルクラッチ式(DCT=奇数/偶数2系統のギアそれぞれにクラッチを有し交互に変速する機構)だ。エンジン側にはモーターがひとつ配置され(レジェンドはDCTに内蔵、NSXはエンジンとDCTの間にマウント)、それとは逆の車軸側にツインモーターが積まれている。パワートレインの構成要素を単純に比較すれば両車とも同じ、乱暴ないい方をするならば、レジェンドを前後方向に反転させるとNSXのレイアウトとなる。とはいえ、運動性能を研ぎ澄ませたスーパースポーツと、贅を尽くしたラグジュアリーサルーンというキャラを反映して、それぞれの細かい搭載方法や種類、出力、トランスミッションの仕様などは大きく異なるのだ。

違いはエンジン出力とマウント方向

   レジェンドに搭載されるV型6気筒エンジンには自然吸気式が採用されており、最高出力は314psとなっている。一方で、NSXのV型6気筒エンジンにはVバンクそれぞれにターボチャージャーが備えられており、その最高出力は507psにまで高められている。

 

  また、フロントのボンネット・フード内に収まるレジェンドのエンジンは横置きであり、後輪はモーターによってのみ駆動させるので、ガソリン車としての成り立ちとしてはFFレイアウトであることがわかる。対して、エンジンを乗員の後方に積むミッドシップのNSXでは、エンジンは縦置きに搭載されている。

 

 

モーターによってトルクベクタリングを実現

 そして、レジェンドとNSXが採用したトルクベクタリングが従来までのSH-AWDと大きく異なる点は、制動方向の作動が加わっているところにある。これまでは、アクセル・ペダルを踏んで車体を加速させる際にトルクを左右の駆動輪に可変分配して、コーナーリング中のヨーモーメントを発生させて積極的なコーナリング姿勢を作り出してきた。

 SPORT HYBRID SH-AWDでは、それに加えてモーターによる回生ブレーキを用いることで、アクセル・オンだけでなくアクセル・オフでも姿勢制御が働くようになっている。つまり、コーナーの進入時に内側のタイヤにより強い回生ブレーキをかけることでノーズをアクティブにインに向けているわけだ。アクセル・オン時に外側のタイヤに大きなトルクをかけるのは従来通りであるが、これらのトルクベクタリング制御はすべてツイン・モーターで行うのも特徴である。すなわち、レジェンドであれば後輪で、NSXであれば前輪がこの役割を担っている。AWD化で走行安定性を向上させつつ、電子制御で積極的にクルマを曲げていくのがSPORT HYBRID SH-AWDなのである。

 

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