大山環状道路(No.072)
さまざまに表情を変える孤高の山を仰ぎ見ながら走る。
なだらかな中国山地にあって、ただひとり異彩を放っているのが大山である。この山は古いカルデラの上に巨大な溶岩ドームが成長した成層複式火山で、最高峰は剣ヶ峰の1729m。標高だけをみると大したことがないように思えるが、周囲に並ぶ者のない独立峰だけに、遠くから見てもひと目でそれとわかる。
そんな大山の標高800m前後の中腹をぐるりと一周する県道が大山環状道路である。この道のいちばんの魅力は車窓からの眺めが実に変化に富んでいること。何より驚くのは、環状道路の中心にそびえる大山が、見る場所によって、まるで別の山のように大きく山容を変えていくことだ。
主峰の剣ヶ峰を中心に弥山、三鈷峰と山頂の稜線が東西に連なる大山は、その南面と北面が鋭い刃物でえぐられたように崩落している。まるで巨大な鉈の刃を天に向かって突き上げたような形状なのだ。そのため、南の鍵掛峠から眺めると、目の前に断崖絶壁がそそり立ち、北の一息坂峠あたりからは本州のアルプスの高峰群のように荒々しく岩肌がむき出しになっている。
一方、崩落面が見えない西の米子側からは、山頂まで緑におおわれた端正な円錐形をしている。伯耆国(ほうきのくに・鳥取県)にありながら、古来『出雲富士』とも呼ばれてきたのはそのためである。
道も、景色も、山の姿も、めまぐるしくその表情を変えていく。

南麓を走る国道482号・内海乢(だわ)から眺める大山。ここからだと荒々しい南側の崩落面がはっきりと見てとれる。
◎通行料金/普通車1250円(片道)
◎区間距離/約16km(伊勢市-鳥羽市)
◎冬季閉鎖/なし・7:00-19:00(夏季などは延長)
◎撮影時期/5月上旬

蒜山大山スカイライン(No.073)
緑豊かな高原地帯を大山に向かって気持ちよく走る。
岡山県の蒜山高原から大山に向かって延びる爽快なワインディングロード。かつては有料道路だった道で、1993年から県道114号として無料開放されている。のどかな牧草地帯やブナの原生林を適度なアップダウンとコーナーを繰り返しながら上っていく。見返峠の南にある鬼女台(きめんだい)展望休憩所からは大山の荒々しい南面とたおやかにうねる蒜山高原の山並みを一望。見返峠まで走ると鋭い山頂を持つ烏ヶ山と大山の岩壁が並び立つ姿も見ることができる。

360度の展望が広がる鬼女台展望休憩所。敷地内には売店とトイレもある。
◎正式名称/県道114号大山上福田線
◎区間距離/約11.5km(国道482号交点~鏡ヶ成)
◎冬季閉鎖/12月下旬-3月下旬
◎撮影時期/6月上旬
ご当地情報

★メインカット撮影ポイント
A:大山寺
西日本有数の僧兵勢力を誇った寺

大山信仰の中心地として、平安時代には3000人もの僧兵を抱える一大勢力として隆盛を誇った大山寺。その繁栄は寺領3000石あまりを与えられた江戸時代まで続いた。現在の本堂は山岳信仰の修験者たちが研鑽を重ねた修行道場。長い石段で上る奥宮は、明治新政府の神仏分離令(廃仏毀釈)により大神山神社として独立している。
●拝観自由(宝物館入場料300 円)/9:00-16:00 /大山町大山9/℡ Tel:0859-52-2158
B:湯原温泉 砂湯
自噴する温泉も数多い温泉界の横綱

昭和56年に温泉評論家・野口冬人さんが中心になってまとめた『露天風呂番付』で、見事、西の横綱にランクされたのが湯原温泉。そのシンボルともいえるのが、高さ74mの湯原ダムの真下に湧く砂湯だ。24時間、無料で利用できる超開放的な混浴露天で、底から砂を吹き上げながら源泉が湧き出していることから砂湯の名がある。
●無料/24 時間/水曜午前など閉鎖/真庭市湯原温泉/Tel:0867-62-2526(湯原観光情報センター)
C:味覚工房そばの館
名産地でいただくこだわりの蒜山そば

冷涼な蒜山高原は昔からソバの栽培が盛んなエリア。この地でソバを自ら栽培し、挽きたて、打ちたて、茹でたての美味しいそばを味わわせてくれるのが味覚工房そばの館。天ざる(並盛り1058円)などが人気。向かいにある道の駅・風の家では、B級グルメとして人気の蒜山焼きそばが味わえる。
●10:30-16:00/不定休(4-11月は無休)/真庭市蒜山上徳山1375-1/Tel:0867-66-7101


大山の麓には西日本最大級のブナ原生林もある。そこはまるで緑のトンネルのよう。
アクセスガイド
大山・蒜山エリアの玄関口、米子道・蒜山ICまでは中国吹田ICから208km。そこから蒜山大山スカイライン、鍵掛峠などを抜けて大山寺までは32km、約1時間の道のりだ。県道30/45号などを抜けていく大山環状道路は、ぐるっと一周するとトータルの走行距離は60kmあまり。一部には道幅が狭く、コーナーのきつい区間もあるので、所要時間は2-3時間といったところ。
観光情報
大山観光局 Tel:0859-52-2502
米子市観光協会 Tel:0859-37-2311
真庭観光連盟 Tel:0867-45-7111
蒜山観光協会 Tel:0867-66-3220
文:佐々木 節/写真:平島 格