
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 68:体躯は似ていても性格は正反対な2台が真っ向勝負!
フォルクスワーゲン・ゴルフGTE vs ホンダ・シビック・タイプR
TEST 02:ウェット旋回ブレーキテスト
テストの「方法」と「狙い」
ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
【参考データ】減速Gと横Gの平均値
前後重量配分やステアリング系の剛性で勝るゴルフは、旋回性能に優れたダイナミクスを持っていた。意外だったのは、タイヤのウェットグリップがやや不足気味であったこと。燃費(あるいは電費)を意識しているのだろう。
前後左右のG測定したことで、ウェット旋回性能の差が歴然に。データを分析すると、シビック・タイプRは止まる能力に長けているが曲がりにくい。ステアリング系の剛性を高めないと、19インチタイヤの性能を引き出せないだろう。
止めるか曲げるか
もう少し“らしい”個性に期待したかった
VOLKSWAGEN Golf GTE
●制動距離:48.5m(★★★☆)
シビック・タイプRよりも約150kg重いゴルフGTE。スペックを見て気付いたのが、バッテリーをリアに搭載しているため前軸荷重は56%と、シビック・タイプRの65%と大きく異なること。そのため舵の効きはスムーズで、ライントレース性も非常に高い。2回目のステアリングを先行させるロバストテストでも、ライントレースは確保されていた。その証拠に、停止時の姿勢はノーズが進行方向を向いている。ABSのチューニングも優れているが、ストッピングパワーはあまり褒められない。18インチのブリヂストン・ポテンザS001のウェット性能は、シビック・タイプRの履くコンチネンタルよりも甘めだ。コンパウンドに転がり抵抗が少ないタイプを採用しているので、ウェット性能に影響したのかもしれない。
HONDA Civic Type R
●制動距離:39.5m(★★★★)
タイヤの摩耗状態とウェット性能が大きく影響するテストだが、最近はABSのロバスト性も重要な評価ポイントだ。シビック・タイ プRが選んだタイヤはコンチネンタル・スポーツコンタクト6。フロントは7分山くらいだが、ウェット性能は悪くない。操舵と同時に強くブレーキを踏むとABSが作動するが、結果的にはライントレースよりストッピングパワーが優っていた。このクルマのキャラクターを考えると、もっとライントレースを重視したシャシー性能が必要ではないだろうか。2回目のテストで若干ステアリングを先行させてブレーキを踏むと、ABSが低μだと誤判定しやすく、リアブレーキが効きにくくなる。実際にABSがブレーキの液圧を抜きすぎて制動力が低下した。ライントレース性を高め、ABSのロバスト性を改善したほうがいいだろう。