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試乗インプレ【フェラーリ・ポルトフィーノ】グランドツーリングの 新境地を開拓するオープンスポーツ

リトラクタブルハードトップのオープンスポーツ、という気軽さが受け、フェラーリの新規顧客増加に貢献したカリフォルニアの後継モデルがポルトフィーノだ。目を引くのは大胆に変貌を遂げたスタイリングだが、中身も大幅に進化していた!

スタイリッシュかつエレガントなエクステリア

フロントエンジン、2+2のリトラクタブルハードトップ・オープンというフェラーリの新たな境地を開くコンセプトを引っ提げて登場したカリフォルニアシリーズは、販売の実に70%を新規ユーザーが占める成功で、フェラーリのグローバルセールス拡大に大きく貢献した。ポルトフィーノは、その後継モデル。まず何より目を惹き付けるのが、格段にスタイリッシュになったルックスだ。

やや腰高で、スマートとは言い難かった前作に較べて、フォルムは圧倒的にエレガント。特にクローズ時の、往年の名車デイトナにインスパイアされたというファストバックフォルムは、オープン云々ということを忘れさせる完成された美しさを誇る。

美しさを増したデザインをまといつつ、大幅に刺激を高めた走りを手に入れた。

単に見目麗しいだけではない。たとえばボディサイドの特徴的なスリットは、ヘッドライト脇の開口部から取り込んだ空気をホイールアーチを通過させた後に排出することで、空気抵抗の5%の低減に繋げているという。他にもアンダーボディの再設計、新形状のリアウインドスクリーン、スポイラーなどの採用により、Cd値はカリフォルニアTに対して6%向上していると謳われる。あくまでも機能を伴った美しさなのだ。

ヘッドライトには488にも似たシャープなデザインを採用。

なお、ボディサイズは全長4586×全幅1938×全高1318mmと、カリフォルニアTよりほんのわずかに大きくなった程度に収まっている。幅はそれなりに広いとは言え、この全長なら日本の都心でも、使い勝手は悪くないと評していいはずである。

サイドまで張り出したエアインテーク、エアの抜けを考慮したクオーター部分、そしてリアディフューザーも備わることで、空力性能も大幅に向上している。

外観と同様にインテリアも、完全に新しいデザインが採用されている。広がり感のある横基調のダッシュボードは、センターに大画面のタッチスクリーンを用いたインフォテインメントシステムを置くレイアウト。ステアリングホイールは新デザインとなっており、従来はリムにあったホーンボタンがやっと一般的な、そして圧倒的に扱いやすいセンターパッドに移されている。

10.2インチ・タッチスクリーンのインフォテインメントシステムをはじ め、新世代フェラーリと共通の意匠が与えられたコクピット。

フロントシートは骨格から新設計とされているが、主にその恩恵に与るのは実はリアシートの方。薄型バックレストの採用により、足元の余裕が5cm増やされているのだ。2+2とはいえリアシートは基本的にはコートや手荷物の置き場だろうというのは勝手な思い込みで、実際には乗員用として使われることも、きっと少なくなかったのだろう。ルーフを閉じた状態なら機内持ち込みサイズのスーツケースを3セットも飲み込むラゲッジスペースも含めて、ファーストカーとして十分使えるほどの実用性が確保されているのだ。

フロントの電動シートは何と18通りに調整が可能。また、新デザインのバックレストを採用することで、リア・パッセンジャーの足元のスペースを格段に拡げている。

では、肝心の走りはどうか。まだまだ暑い最中ではあったが、撮影も兼ねてルーフを開けた状態のままクルマを発進させると、まずはそのフットワークの軽やかさ、そして高い剛性感から来るソリッドなレスポンスに頬が緩んだ

ポルトフィーノのオープンボディはカリフォルニアTと同じくオールアルミ製ながら、完全な新設計。車両重量を80kg軽減しながらボディ剛性を静的捻れで35%、サスペンション取付け部については50%向上させたと謳う。これは主に鋳造の一体成形部品の数が増やされたこと、空力特性向上のためのアンダーカバーが従来の樹脂製から構造部材としても働くプレス成形のアルミ製とされるなど、構造の刷新の効果である。

パワフルなエンジンに質感の高い乗り心地

前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションは、短いストロークの中でしっかりとした減衰力を発揮して、引き締まっていながらも質の高い乗り心地を実現している。路面の継ぎ目を通過する時などの鋭い入力に対しては、やや華奢な感じもなくはないが、快適性は期待以上と言っていい。

20インチホイールには、前245/35、後285/35サイズのピレリPゼロが組み合わされる。ブレーキディスクはカーボンセラミック製だ。

エンジンのパワフルさも気分を昂揚させる。V型8気筒3.9リッターツインターボエンジンは、カリフォルニアTに積まれていたものの改良版で、最高出力は600ps、最大トルクは760Nmを発生する。実際のところ低回転域ではレスポンスがやや緩慢で、トランスアクスルレイアウトとされた7速F1-DCTも、ダイレクトな変速感と引き換えに、ややギクシャクとした感触を伝えることもあるが、アクセルを踏み込んでいくと回転上昇は俄然スムーズになるから、ついペースが上がってしまう。

600ps/760Nmを発生する3.9L V8ターボ ユニットは、先代のカリフォルニアTより40ps の出力アップを実現。0→100km/h加速3.5 秒、最高速度320km/h以上を誇る。

エキゾーストサウンドはかなり低音寄り。特に低速域ではバリバリという破裂音が響くが、これも回していけば、さすがにソプラノにはならないもののずいぶんと澄んだ音を聞かせてくれるようになる。とは言え、期待値からすればもう少し、ヌケのいい音が欲しいのは事実。ツインスクロールターボチャージャーを内蔵した鋳造ワンピース・ターボエキゾーストを採用するなど、排気管長をできるだけ確保し、等長に近づけようと努力はしているのだが、488GTBなどと較べてエンジンベイの絶対的なスペースが足りないだけに、ここは如何ともし難いところなのだろう。

トップを閉じれば、ご覧のようにスタイリッシュなクーペボディへと様変わり。リトラクタブルハードトップの開閉時間は14秒で、40km/h以下なら走行中でも操作が可能だ。

ウインドディフレクターは、空気の巻き込みを30%低減したという新構造。これがないと、やはり顔や髪の毛は盛大に風に晒されることになる。たまらずルーフの開閉スイッチに手を伸びた。走行中でも40km/h未満なら開閉可能なのは、信号待ちなどでサッと開け閉めしたい時に、とても助かる。

ルーフが閉まると、走りの印象も大きく変わった。さすがハードトップだけに、それだけでボディの剛性感が格段に高まり、ステアリングの応答性も格段にリニアリティを増したのである。

クローズ時のトランク容量は292Lと、スポーツカーとしては優秀な数値をマーク。

ステアリングホイール上のノブで走行モードを切り替えることができるマネッティーノが、標準の「コンフォート」にセットされている時には、電子制御ディファレンシャルのE-Diff3は外輪へより多くの駆動力を配分するトルクベクタリングによって、旋回性を高める働きをする。思えばカリフォルニアの初期型などは、ステアリングのゲインを相当に高めることでクイックさを演出していたが、ポルトフィーノはそれをリアの駆動力によって、よりリニアに行なっているのだ

ノブを右に1段ひねって「スポーツ」に切り替えると、ハンドリングも性格が変わる。このモードはトラクション確保が最優先となり、左右輪のトルク配分が均等に近づく。旋回性がやや大人しくなる代わりに、アクセルオンでリアから蹴り出すような挙動が強調されるのだ。リアタイヤは285サイズと、60ps0のFRの割には太くはないが、それでもトラクションに不足はなし。もっとも、都心の一般道ではその差はほとんど体感できないから、自分ならそのパフォーマンスを余さず味わうべく、きっと週末にはワインディングロードやサーキットに行きたくなりそうだ。ただし、フェラーリがGTと位置づけるポルトフィーノにはマネッティーノの「レース」「CTオフ」は用意されない。

フェラーリの調べでは、カリフォルニア/カリフォルニアTは、歴代フェラーリの中でも、もっともデイリーユースに供される比率の高いモデルだったという。新規ユーザーを多く獲得できたのも、それを可能にする高い完成度があってこそだったはずである。

ダッシュ中央のエア吹き出し口間には、ハニカム形状のデザインが施される。

ポルトフィーノは、その美点はそのままに一層美しさを増したデザインをまとい、何より大幅に刺激を高めた走りを手に入れた。進化は、まさに全方位に及ぶ。今度も間違いなく、大きな成功を収めるだろう。実際、すでに納車待ちの列は、ずいぶん長くなっているということだ。

Specification
フェラーリ ポルトフィーノ
車両本体価格(税込):25,300,000円
全長/全幅/全高[mm]:4586/1938/1318
ホイールベース[mm]:2670
トレッド(前/後)[mm]:1633/1635
車両重量[kg]:1664
最小回転半径[m]:-
乗車定員[名]:2
エンジン型式/種類:-/V8DOHC32V+ツインターボ
内径×行程[mm]:86.5×82.0
総排気量[cc]:3855
圧縮比:9.5
最高出力ps(kW)/rpm:600(441)/7500
最大トルクNm(kg-m)/rpm:760(51.0)/3000-5250
燃料タンク容量[L]:80(プレミアム)
燃費(JC08/WMTC)[km/L]:-/-
ミッション形式:7速DCT
変速比:1)3.397、2)2.185、3)1.626、4)1.286、5)1.028、6)0.839、7)0.635、R)2.791、F)3.875
サスペンション形式:前 Wウィッシュボーン/コイル、後 Wウィッシュボーン/コイル
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤ(ホイール):前245/35R20(8J)、後285/35R20(10J)

フォト:柏田芳敬/ル・ボラン2018年11月号より転載
島下泰久

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