
千里浜なぎさ ドライブウェイ(No.057)
夏には道路標識まで出現する世界でも珍しい渚の道。
のと里山海道の千里浜ICと今浜ICの間に、およそ8kmにわたって続く砂浜の道。きめ細かな砂が海水を含んで引き締まることにより、場所によっては舗装路のようにしっかりした路面になり、乗用車やバイクはもちろん、観光バスも自由に行き来する。夏海水浴シーズンには車線を区分けするロープが張られ、その脇には速度制限と駐車禁止の道路標識まで出現。日本海に沈む夕日を眺めるには絶好のスポットだが、落ち着いた風情を味わいたいなら、行楽シーズンは外した方がいいだろう。
外浦街道(No.058)
ゆるやかな時の流れに身を任せ、海辺の風景を味わう。
城下町・金沢を起点に能登の海岸線を時計回りに走って行くと、羽咋(はくい)の町をすぎたあたりから、行き交うクルマの数が急に少なくなる。ここから先、半島をぐるっと一周して七尾市に至るまで、途中にある大きな町といえば人口3万人あまりの輪島市くらいのもの。さらに国道249号を外れ、海岸線を忠実にトレースする県道に入ったりすると、対向車とは滅多に出会わない。まるで美しい入り江をめぐる海辺の道を独り占めしているような気分になってくる。
能登路という言葉に華やいだイメージをもつ人は、たぶん少ないだろう。大きなレジャー施設はなく、能登半島有料道路(現在は県道の「のと里山海道」として無料開放)ができるまでは、交通の不便さを表現するのに『陸の孤島』というフレーズも使われていた。
ただし、実際にここを走っていると、同じ半島でも下北のような、いかにも最果ての気配はまるでない。海も山もおだやかで、家並みには落ち着きがあり、人々の話す京都訛りの言葉もどことなく上品な響きがある。
こうした能登半島の不思議な印象は、古代における大陸との交流、北前船の寄港地としての繁栄といった、長い歴史のなかで積み重ねてきた役割の大きさにあるのかもしれない。
先を急がず、のんびり走り続ければ、この外浦を巡る道の魅力はもっと鮮明に見えてくるに違いない。
ご当地情報
A:輪島朝市校
売り手は女性のみ、1000年前から続く朝市設
輪島の本町通りで開かれる朝市は1000年以上の歴史があるといわれる。通りを行けば賑やかな売り手のおばちゃんたちから「買(こ)うてくだぁー」の呼び声がかかり、商品を吟味しながらの値引き交渉も楽しい。その日の朝、獲れたばかりの新鮮な魚や野菜が店先に並ぶほか、輪島塗などの土産物を売っている店もある。
●8:00-12:00/第2&4水曜定休/輪島市河井町本町通り/Tel:0768-22-7653(輪島市朝市組合)
B:上時国家
大納言の間に能登の豊かさを垣間見る
壇ノ浦の戦いで敗れ、奥能登に配流された平時忠の子、時国が源氏の追討を逃れるため『平』の苗字を捨てたことが時国家の始まり。代々、庄屋(農民)の身分ながら回船や製塩で財をなし、現在まで続いている。平家の定紋『丸に揚羽蝶』が金箔で描かれた大納言の間に入れるのは当主のみ。加賀の殿様も立ち入り禁止だったという。
●入館料520円/8:30-17:30/無休/輪島市町野町南時国13-4/Tel:0768-32-0171)
C:葭ヶ浦温泉・ランプの宿
上質なホスピタリティを堪能できる奥能登の宿
開湯400年の歴史をもつ奥能登の秘湯。かつては船でしか訪れることができず、館内の明かりが電気になったのもわずか20年ほど前のこと。設備もホスピタリティもきわめて上質な宿だが、ランプの宿の風情はしっかりと受け継がれている。海の幸を贅沢に使った心づくしの料理、波打ち際の露天風呂などが身も心も癒やしてくれる。
●1泊2食付19,590円-/珠洲市三崎町寺家10-11/Tel:0768-86-8000
千里浜なぎさ ドライブウェイ
◎区間距離/約8km(千里浜IC-今浜IC)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/7月中旬
外浦街道
◎正式名称/国道249号/県道28号
◎区間距離/約120km(羽咋市-禄剛崎)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/7月中旬
アクセスガイド
金沢を起点に能登半島をぐるりとひと回りし、七尾へと至る国道249号の総延長は約250km。あちこち寄り道しながら走るなら1泊2日はほしいところ。奥能登エリアへダイレクトにアプローチするには、のと里山海道(無料)が便利。首都圏から能登半島をめざすときは、金沢回りより北陸道・能越道経由の方が早道。氷見ICから国道415号を30分程度で千里浜に抜けられる。
観光情報
羽咋市観光協会 Tel:0767-22-5333
輪島市観光協会
0768-22-1503
珠洲市観光協会
0768-82-4688
文:佐々木 節/写真:平島 格