高級車の頂点に位置する永遠の宿敵
ひと昔前まで高級車市場を独占していたメルセデス・ベンツSクラス。現行のW222は、さらに力を入れて開発が行なわれた。た とえばパワートレイン。日本ではディーゼルハイブリッドとガソリンハイブリッド、さらにはプラグインハイブリッドに通常のV8ターボ、頂上にはAMG S63やS65もラインナップされ、4輪駆動も用意される。まるで、先進技術のデパートのような品揃えだ。
その豊富なバリエーションの中でも、今回テストしたディーゼルハイブリッドはユニークな存在だ。パワーユニットは2.2L直列4気筒ディーゼルに27ps/250Nmのモーターを組み合わせる。バッテリーはリチウムイオンだ。JC08モード燃費は20.7km/Lの結果を出しており、実際の長距離走行でも、法定速度で流すような走りであれば、モード通りの燃費で走れる。もちろん燃料代はガソリンよりも安い。
だが、その魅力は燃費や経済性だけではなく、トルクの塊とも表現できる走り味にある。できれば9速ATが欲しいが(新型Eクラ スには搭載)、オーラのようにトルクが湧き上がる走りには王者の風格がある。アイドリング音は外で聞くとうるさいが、室内はいたって静粛だ。ただし、走らせて愉しいパワーユニットというわけではない。
高速周回路でのドライブフィールはどうか。さすがメルセデスと思わせたのは、乗り心地とスタビリティのバランスだ。バンク下でフロントタイヤからスキール音が鳴るぐらい切り込んでも、安定性に揺るぎはない。まるでリアタイヤがイカリで繋がれているような安定性だ。この快適性と安全性こそが、メルセデスSクラスの最大のバリューである。