
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 70:その似て非なる味付けの違いが露わになった!
BMW 740i vs メルセデス・ベンツ S300h
TEST 03:ダブルレーンチェンジ
テストの「方法」と「狙い」
80km/hでコースに進入、障害物を回避してふたたびもとのレーンに戻るテスト。シャシーの総合性能、ESC(横滑り防止装置)など挙動安定化装置の能力をみる。そして、ドライバーが安心して操作できるかどうかも評価の対象となる。パニックに陥ったドライバーでも正確に操作できなくては、クルマが優れたシャシー性能を持っていても意味がないからだ。
ともに文句なしの操作性だからこそ、それぞれの個性をもっと主張してもいい。
メルセデス・ベンツ S300h
●操縦安定性:★★★★☆
●Wレーン通過タイム平均:70.21km/h(2回平均)
メルセデスは1990年代末に起きたAクラスのリコールで、ESP(ESC)の重要性や効用を再認識した。Aクラスは横転の可能性が指摘されたが、ESPを装備することで対処。それ以来、メルセデスはESPの性能開発に熱心だ。多くのメルセデスと同じようにS300hも、重い車体を安定させるために、ESPを積極的に使っている。左に急ハンドルを切った瞬間にブレーキが介入し、「早く・強く」制御される。車両を安定させるためにだけでなく、スピードも落とすので、元のレーンに 戻るのも楽になる。Sクラスの性格上、ハンドリングはあまり得意ではなく、そのためにスピードを低下させて安定性を確保する考えだ。スタビリティの高さは2.1トンのクルマとしては合格だ。
BMWに期待したいボディとタイヤの一体感
BMW 740i
●操縦安定性:★★★★☆
●Wレーン通過タイム平均:71.22km/h(2回平均))
Sクラスが高級サルーンの王道なら、BMW7シリーズは高級なドライバーズカーだ。つまりコンセプトは似て非なるもので、ドライバ ーが愉しく安心して操縦できるダイナミクスを持っている。しかし、テスト車が装着していた20インチタイヤの性能とバネ上ボディの動きは一致しない。ステアリングのレスポンスがシャープなのでロールが遅れて生じる感じだ。その後、ボディが揺れ動くのも気になった。BMWに期待したいのは最高級サルーンであってもミズスマシのようなボディとタイヤの一体感。その意味では18インチくらいがこのサスペンションには合うだろう。DSC(ESC)の使い方はメルセデスほど強くなく、ドライバーがコントロールできる領域は多かった。