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【ジムニー徹底解剖-4】新旧ジムニー比較試乗!! 新型有利も捨てがたい先代の魅力があった!

ジムニー試乗レポートの第二弾は、先代モデルとの新旧対決。20年も経っていれば、圧倒的な差があるかと思いきや、モデル末期になるほどウィークポイントの改良が進み、完成されていったJB23型は根強く人気をキープしただけあって、新型に負けない部分もみられた。

熟成された先代も評価は高いものの、ほとんどすべてが一新されて飛躍的進化

3代目ジムニー(JB23/43型)が登場して、20年ぶりの新型(JB64/74型)登場となったわけだが、20年間でジムニーは9回もの仕様変更を実施して、なんと10型まで進化させていたことは意外と知られていない。継ぎ接ぎで凌いできたとはいえ、10型のクロカン4WDとしての完成度の高さは、十分な評価に値するものだ。

だが、当然ながら新型の進化はそれをはるかに上回る。コストが非常に高いラダーフレームは完全に新造され、ボディ剛性は大幅に向上。2本の新クロスメンバーに加えて、Xメンバーを追加し、さらに高張力鋼板の使用率を20%から約65%にまで高めた。フレーム剛性の向上は、サスペンションの動きにも大きな影響を与える。一部旧型からの部品流用があるとはいっても、そのフィーリングはまるで別物だ。

対照的な新旧のスタイリング。単体で見るとスクエアな新型が大きく見えるものの、並べてみるとライトが大きく、丸っこい先代も小さいというよりは存在感のあるカタチだ。

ラダーフレームやボディの剛性強化のみならず、アクスルハウジングの骨格も強化されている。こうした各部の見直しは、驚くほどの乗り味の違いとなって顕れている。ステアリングダンパーの新採用も見逃せない改良であり、高速走行時のシミーが旧型とは比べものにならないほど軽減されている。またプロペラシャフトの新工法の採用によって、パワートレーンから出ていた耳障りなノイズも解消された。

 

山崎友貴(やまざき ともたか)
フリーエディター。四輪駆動車雑誌編集長を経て、SUVやキャンピングカーなどを中心に記事を執筆している。Jeepラングラーで日本全国の山に出向き、登山や岩登りをするのがもっぱらの趣味。

その前のモデルから一気に乗用車的にリファインされた先代と、SUV全盛の時代において再びクロカン4WDテイストを強めた新型。それぞれに魅力のあるスタイルといえる。

古さを感じさせない先代と軽自動車らしからぬ大きさ感の新型

今回は、JB23でも末期となる10型と新型を並べて試乗できる幸運に恵まれた。JB23型はSUVの人気黎明期に企画されたモデルのため、新型とは180度逆のベクトルでデザインされている。だが、18年経った今でもいいデザインだと思う。一方、JB64型はスペース効率を上げるという理由のほかに、クロカン4WDらしさを追求したため、いまのご時世ではめずらしい真四角のボディを採用。そのためか、軽自動車規格とは思えない大きさ感がある。

新型はウインドーが立てられ、グラスエリアより上の室内空間に余裕が生まれた。横開きのバックドアは共通だが、開口部が大きくなった新型は使い勝手も向上している。

スクエアなボディは四隅の掴みやすさ、見切りの良さにも寄与しており、SUVにはない実用性を持っている。一方、JB23型はボンネット前方が下がっていること、フロントウインドーが大きいということがあり、ドライバーポジションがJB64型よりもアップライトであるように感じられる。実際はほぼ同じ位置なのだが、JB64型の方が閉塞感を感じてしまう。シートはJB23型の方がサポート性が良く、新しいモデルのシートがいいとは限らないことを実感させられた。

新型シート(JB64)

旧型シート(JB23/純正シートカバー装着)

新型シート(JB64)

旧型シート(JB23/純正シートカバー装着)

少々前時代的ではあるものの、先代のK6Aターボエンジンのフィーリングもアリ

さて、旧型と新型の乗り味の違いは、火を見るより明らかだ。旧型に搭載されているK6A型エンジンは、高回転型かつターボラグがある前時代のユニット。オフロードでは過給前と後の出力特性が大きく変わるため多少扱いにくさはあるが、オンロードを飛ばすには面白いフィーリングを持っている。一方、新型のR06A型は前述の通り、胸のすくような加速感はないが、下からトルクで走らせる堅実なフィーリングが身上だ。R06A型には電子スロットルが組み合わされたこともあり、レスポンスなどすべてにおいてマイルドな感じがする。

K6A型エンジン(JB23)

運動性能の点では、ボディ剛性が大幅に向上したJB64型に物言いなしで軍配が上がる。JB23型はサスペンションのロールを感じ取りながら、ボディと相談して曲がっているというフィーリングがあったが、JB64型はステアリング操作と曲がるときの感じが完全にリンクしており、怖いと思うドライバーはほぼいないはずだ。そのドライブフィールはラダーフレームのクロカン4WDというよりは、モノコックボディのSUVに近いと感じた。

R06A型エンジン(JB64)

4速ATについていえば、ロックアップ機構が付いたため、高速走行中の「滑り」がなくなり、ダイレクトな加速ができるようになったのは歓迎したい。また5速MTは旧型よりも、1~3速がローレシオ化、4・5速はハイレシオ化させているされ、旧型のような急坂の山道における頻繁なシフトチェンジもない。

誰にでもオフロードにおけるイージードライブを可能にさせた新型の最新デバイス

さて、ジムニーの本領ともなるオフロード性能だが、旧型よりも新型が優れていることは間違いない。ただ、単純に優れているというよりは、「誰にでもオフロードでのイージードライブが可能になった」と表現するほうが正確だろう。新型には前述したように、ブレーキLSDトラクションコントロールという、タイヤの空転によるスタックを防ぐ電子制御装置が採用されている。このデバイスはABSのユニットを流用した、簡易版のメカニカルLSDで、タイヤのトラクション性能を上回る路面状況では実に頼りになる装備だ。泥や砂、雪の路面において、特別な悪路走破テクニックを知らなくても、車両をグイグイ進ませてくれるのはすごい。ただ、テクニックを持っている人間にとっては邪魔な装備でしかない。それは、ときにこのデバイスが走破性を削ぐケースも少なくなく、実は役立つシーンは日常に限られてくるのでは……というのは率直な感想だからだ。ちなみに、トランスファーレバーがスイッチ式から手動レバー式に戻されて、昔に戻ったようだが、操作性・信頼性とも逆に向上したといえる。

新型インパネ(JB64)

旧型インパネ(JB23)

総じて、新型には紛れもなく良さがある。JB23型には熟成された良さがあったが、JB64型には造り変えただけの良さが感じられた。旧型ほどクロカン4WDというカテゴリーを意識することなく乗れる快適さが、新型ジムニーにはある。さらにSUVにはない「本物」を感じさせるデザインもまた、国内で大ウケしているファクターなのではないだろうか。

新型ラゲッジスペース(JB64)

旧型ラゲッジスペース(JB23)

テキスト:山崎友貴/フォト:宮越孝政
LE VOLANT web編集部

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