
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 71:ポルシェのターボvs自然吸気論争に終止符
ポルシェ911カレラS(後期991Ⅱ)vs ポルシェ911カレラ4GTS(991型)
TEST 02:ウェット旋回ブレーキテスト
テストの「方法」と「狙い」
ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
タイヤコンデション
ポルシェ911カレラ4GTS
911カレラ4GTSが装着していたタイヤはピレリPゼロ。サイズはフロントが235/35ZR20、リアが305/30ZR20。溝残存率は右前90.2%/左前91.2%、右後94.5%/左後87.5%。リアの減りが左右均等ではなかった
ポルシェ911カレラS
銘柄は同じくピレリPゼロでサイズは20インチ。後期型はフロント右フロントが5mm、左6mmと減り方がアンバランスだった。一方、 リアはフロントと同じくらい減っていたので、アンダーステアの形跡が残っていた。
タイヤの磨耗度が同等ならテスト結果にも変化はあっただろう
PORSCHE 911 CARRERA4 GTS
●制動距離:37.0m(★★★★☆)
フロントタイヤはほぼ新品状態だったので、ステアリングの効きは十分満足できた。100km/hで半径40Rの旋回路に進入し、フルブレーキングと同時にステアリングを操舵。このときカレラ4GTSは正確にライントレースし、制動力も大きかった。991型のABSはブレーキを踏んでからステアリングを操舵すると、制動力を少し弱めてステアリングが効きやすくなる制御が採用されている。一般的にはステアリングを先行させてからブレーキを踏むと、ABSは滑りやすい路面と勘違いして、かなり制動力を弱めてしまうが、ポルシェのABSはドライバーの意思を正確に汲み取り、操作がバラついてもロバスト性は守られている。基本性能と電子制御の勝利といえるだろう。
PORSCHE 911 CARRERA S
●制動距離:47.5m(★★★☆☆)
シャシー性能が進化したことはハンドリングでも確認済みだが、ウェット旋回ではタイヤの摩耗度が影響して、予想した結果は得られなかった。リアタイヤの摩耗は911カレラ4GTSと比べて1mmくらいしか減っていないが、問題はフロントタイヤのショルダーブロックの偏摩耗の大きさ。ハイドロプレーニングでは、PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)も効果を発揮しきれなかった。急ブレーキを踏みながらステアリングを操舵するが、路面に対してタイヤが完全に負けて曲がる気配はなし。2回目のテストではステアリングをやや早めに操舵するが、ライントレース性は満足できなかった。タイヤの摩耗で20%もウェット性能が悪化したのだ。