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欧州プレミアムが認めたYOKOHAMA【ADVAN Sport V105】の真価とは?(前編)

クルマの性能を左右する最重要パーツである

自動車というものを構成するパーツの中には、自動車メーカー自身が事実上自らの手でつくることのできないものがある。極めて専門性の高いタイヤは、その代表選手のようなものだ。乗員の生命を左右するのはもちろん、そのクルマの性能や性格をある意味では定めてしまう重要なパーツでもあり、クルマの潜在的な性能が上がるにつれて自動車メーカーがタイヤに対して要求するレベルも年々高度になってきている。あまり知られてないことだが、タイヤを供給するタイヤメーカーにとって自動車メーカーに純正採用されるというのは、さまざまな意味でハードルが高いのである。

ADVAN Sport V105

ところがその分野において、ふと気づいてみると大幅にシェアを広げていた日本のタイヤメーカーがあった。横浜ゴムである。ヨーロッパのプレミアムカーブランドを中心に、“ADVAN Sport V105(アドバン・スポーツ・ブイイチマルゴ)”を純正装着するモデルが着実に増えているのだ。

タイヤを知れば、クルマはさらに面白くなる。ADVAN Sport V105(以下、V105)がとりわけ欧州メーカーで高評価を得ているのはなぜなのか? そもそもV105とはどのようにして開発されてきたのか? そのあたりを、横浜ゴムのタイヤ海外直需営業推進室 海外直需課 課長の川口周穂(かわぐちしゅうほ)さん、タイヤ第2設計部 副部長の大聖康次郎(だいしょうやすじろう)さんという、V105に深く携わってきたおふたりにうかがった。皆さんのタイヤ選び、そしてクルマ選びの、ひとつの参考にしていただきたい……。

──V105は欧州の、それもジャーマン・ブランドのクルマ達に次々と純正採用されている印象が強いのですが、そもそもV105の開発の狙いはどんなところにあったんですか?

タイヤ海外直需営業推進室 海外直需課 川口周穂氏

【川口】 V105は、もともと自動車メーカーの純正装着タイヤとして開発をスタートしたものです。次世代欧州車の要求性能を満たして、さらにプラスアルファの性能を味わっていただきたい、というところが開発の目的ですね。最初に納入したのがメルセデス・ベンツのSLKとCLSで、それが2011年のこと。それ以降、海外メーカーとしては引き続きメルセデスおよびAMG、2014年からはポルシェ、そして2018年からはBMWおよびBMW M、と純正採用されてきています。アフターマーケット用のV105を発表したのは2013年でした。

タイヤ第2設計部 副部長 大聖康次郎氏

──あくまでもOE(純正採用)向けが先行した、ということですね。

【大聖】そうですね。ADVAN Sportシリーズとしてはリプレイスやアフターマーケットに向けた製品も開発しているのですが、このV105の前にハイパフォーマンスタイヤの“AVSスポーツ”という製品もありまして、基本的にAVSスポーツとADVAN Sportの流れを汲むタイヤは、すべてヨーロッパのOE向けとして開発をスタートしているんです。そこで性能とかパターンとか仕様が固まってきたものが土台となって、リプレイス用タイヤに落とし込むという流れです。

──ちなみにV105の設計や開発は、いつ頃からスタートしたんですか?

【大聖】開発のスタートは2006年頃でした。ADVAN Sportのシリーズとしては、このV105の前にV103というのがありまして、それがまだ現役で自動車メーカーへのOE装着のための活動を進めていた当時、V103で出てきた“もう少し性能をこうしたい”というアイデアがある程度固まって、トレッドパターンまで変えていかないと次世代のプレミアムにはマッチしないと判断したのが開発着手のきっかけでした。

【川口】たしか2006年の終わり頃に、とあるヨーロッパの自動車メーカーから仕様データを受け取って、その要求性能を満たすためには新製品を立ち上げないということでV105の企画がスタートしたんでしたね。

──2000年代というのは欧州メーカーのクルマ達の性能が飛躍的に上がった時代。なのでV103では要求性能を満たせないレベルまで到達してしまったのですね。でも、そこを見据えて開発した新製品のV105を発売してからも、クルマの性能は上がり続けていますよね?

【大聖】実は先代のV103も現在のV105も、6~7年という商品ライフの中で、パッと見では判らないくらいの変化、進化をしてるんです。極端なたとえですけど、OE向けタイヤは1品1仕様だったりもします。例えば、パターンやピッチ配列といった細かいチューニングが、静粛性を重視するメルセデスやBMW用とポルシェ用とでは微妙に違っていたりとか。

──自動車メーカー納入用のタイヤは、ほぼ車種ごとの専用開発ということですか?

【川口】そうですね。OE向けのタイヤは、メーカーからの要望に応じてチューニングしていく車種専用開発といえるでしょうね。

【大聖】トレッドパターンなどはそんなにコロコロと変えたりはしないんですけど、例えばコンパウンドや内部構造などは、OEの場合にはすべて個々にチューニングし直しています。金型、つまりトレッドのデザインも、必要に応じて“よりドライ性能に特化”だとか“より静粛性を重視”という要求に合わせて、少しパターンをモディファイしています。

──自動車メーカーの要求に応じて臨機応変に開発した製品が純正装着されているというわけですね。

【大聖】そうですね。一方、リプレイス/アフターマーケット用のタイヤの場合は、逆にそれらを一旦クリアにして、最大公約数的にどんなクルマにもマッチするようにという考え方です。

──純正装着タイヤが対象モデルの特性に対して100点満点であるとするなら、リプレイス/アフターマーケット用は様々な性能を均等化しているということですか?

【川口】高次元でバランスさせたものとご理解ください。メーカー純正装着のV105はあくまでメーカーの要求にしっかり応えることを前提に開発しますので、性能の一部に尖っているところもあれば、丸くなっている部分があったりもします。その性能面のトータルバランス化を図ったのがリプレイス/アフターマーケット向け用のV105なのです。

──リプレイス/アフターマーケット用のものは一般のタイヤ販売店でも買えるわけですけど、そうした自動車メーカーの純正装着と同じ仕様のADVAN Sportは、それぞれの正規ディーラーじゃないと手に入らないのですか?

【川口】海外メーカーの純正装着品と同じ仕様のタイヤについては、一般的なタイヤ販売店でもお買い求めいただけます。海外メーカーに納入する認証タイヤはすべてV105がベースになっていますので、たとえばメルセデス・ベンツAクラス純正なら、225/45R17サイズの“ADVAN SportV105 MO”だとか、BMWの認証スターマーク付きタイヤだとか、そういうかたちでYOKOHAMAのタイヤ製品カタログにも掲載しています。

ADVAN Sport進化のポイントは?

──ところで横浜ゴムは1989年にポルシェに純正採用されて以来、ずっと海外メーカーでの純正装着タイヤに採用されていて、以前のV103もさまざまなモデルに装着されてましたよね。そのV103からV105への進化のポイントはどんなところですか?

YOKOHAMA A008をベースとして開発したYOKOHAMA A008Pの15インチサイズが、ポルシェ89年モデル924S、944、944Sの3車種について技術承認を取得。横浜ゴムにとって、欧州カーメーカーに対する初の新車装着となった。

【大聖】まず、開発の背景には環境問題がありました。自動車メーカーはクルマの燃費を良くしなければならず、そこに貢献するためにはタイヤの転がり抵抗を改善する、という土台があったんです。出荷先の国によっては、いくら性能のいいタイヤを作っても、環境性能をクリアしなければ販売すらできないのです。ADVAN Sportでは、もちろんその環境性能をしっかりと構築するのが前提ではありましたけど、ドライとウェットの両方の操縦安定性と制動性能の向上を必須条件として開発を進めました。それらの全てが、特に欧州のプレミアムモデルではクルマの改良に応じて強く要求されるポイントなんです。

──V105の最大の長所はどんなところですか?

【川口】いろいろあるのですが、まずは高強度、高剛性というところでしょうか。V105はいわゆるマトリックス・ボディ・プライという構造を採っていて、長めのカーカスを斜めに配列しながらベルト下まで折り曲げて持っていくことで、強度や剛性を高めています。

【大聖】それはレーシングタイヤに使う手法で、ハンドリング性能やトラクション、制動に効くんです。タイヤの単体重量を増やすことなく部分的に剛性をアップすることができる。追加物なしに捻り剛性を上げられるんです。通常、スリックタイヤやSタイヤは化学繊維ですが、ADVAN Sportはレーヨン、天然素材を使ってます。だから高速でも熱に強くて溶けない。このような素材や製法まで工夫することにより、操縦安定性も万全です。

【川口】レーヨンは高価で、管理も難しいんです。自動車メーカーから定期的に品質の監査が入るくらい繊細な素材なんですよ。素材の段階からものすごく手間をかけてます。

【大聖】ブロックのエッジを面取りしていることも、長所を生んでいますね。エッジをキツくすると有効な溝の体積が減って、ウェット性能もダウンしちゃうんです。ブロックの面取りをしてエッジを丸めることで剛性不足を解消できるし、接地圧も均一にコントロールできるんです。もうひとつ、V105のブロックは断面の形状が微妙に凸状になっていて、それも接地圧のコントロールに有効です。

──さすがに自信を持ってリリースされてるだけあって、いろいろと出てきますね。ならば、V105のアドバンテージをひと言でまとめるなら……?

【大聖】ドライの性能とウェットの性能を高い次元でバランスできていること。それに高速耐久性のマージンですね。( )付きYレンジは300km/h超を保障するものですが、十分な安全マージンを持って設計しています。まぁ、ヨーロッパでのみ有効な話ではあるんですが。

──ライバルに据えている製品だとかブランドはありますか?

【川口】アフターマーケットで申し上げるなら、V105の設計コンセプトがヨーロッパOEですから、あちらの大手タイヤメーカーとのシェア争いを想定して作り込みました。

──ずばり、勝ってると思われますか?

【川口】はい、少なくともウェット性能では自信があります。

──即答! 相当の自信作ですね。

【川口】これもあくまでアフターマーケットでのお話なんですが、ストリート用スポーツタイヤの“NEOVA”で、もともとADVANのドライ性能は高い評価をいただいてたんです。V105は、それに加えてさらにウェット性能を向上させるという目標で開発しました。2013年に発売してみたら、ユーザーさんの評価で“まるで水掻きがついているようだ”というようなコメントもいただきました。狙い通りの性能を体感いただけたので、とても嬉しかったですね。それに日本国内もさることながら、特に欧州でも高く評価していただきました。現地の自動車専門誌のテストでもナンバーワンの評価をいただいたくらいです。

……と、お話がようやくヨーロッパに戻ろうとしているところで恐縮ながら、続きは次回へ。とりわけジャーマン・ブランドに関心の高い人には、それぞれの自動車に対する開発アプローチのようなものが窺い知ることのできる、興味深いお話をお届けすることができるだろう。お楽しみに!

ADVAN Sport V105製品サイト https://www.y-yokohama.com/product/tire/advan_v105/

フォト&ムービー:菊池貴之 T.Kikuchi
嶋田智之

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