幻の984やパナメリカーナなど1980年代のプロトタイプが5車のうち3車を占める
昨年70周年を迎えたポルシェAGがユニークな「トップ5」の発表を続けている。昨年12月初めには「最も高価なトップ5」を発表し、トップには一人のコレクターが1400万ドル(約15億4000万円)以上を払ったポルシェ917K-024が選ばれたが、コレクターズアイテムの価格というのは天井知らずのことが多く、価格も実感がないだけに、あまり興味の湧くものではないだろう。
続いて「最も興味深いプロトタイプ・トップ5」を選定するが、これは本当に興味深いクルマが選ばれている。市販されずに倉庫に眠っているとポルシェは説明するが、1位はポルシェ918スパイダー・ローリングシャシーをチョイス。コアなポルシェファンならご存じだろうが、2012年に公開された918のローリングシャシーは、エンジンと電動モーターのマッチングを見るために開発された試作車で、4.6LのV8と2基のモーターの組み合わせにより、0→100km/h加速は2.8秒とされたスーパースポーツだ。これをトップに選んだのもポルシェらしいところだ。
2位には1989年に公開されたパナメリカーナで、独特のデザインが目を引いた。3位の911カレラ3.2スピードスターは1987年に登場したもので、911ボディのスピードスターとして多くの人が市販を望んだものの実現しなかった。4位は2003年に公開されたカイエンのカブリオを選定。ちょっと妙なスタイルではあるものの、今ならけっこう売れそうだ。そして5位は1984年から1987年に開発されていた幻のポルシェ984。空冷2Lをリアに搭載するコンパクトポルシェとして、当時は市販化も伝えられていたが、1987年のアメリカの経済危機により開発は中断。4万ドイツマルク(当時のレートで約350万円)で発売されるとされていた廉価版ポルシェは幻となった。
トップ5のうち3台が1980年代のモデルというのも興味深いが、それだけポルシェもいろいろ試していた面白い時代だったのだろう。ちなみにその後、ポルシェはアメリカの女性デザイナーによる「ファンシーシートデザイン・トップ5」も選定し、1977年の911タルガSCの変則チェッカー柄を選んでいる。2017年の「希少ポルシェ・トップ5」から始まり、かなり間を空けて復活したトップ5だが、これを機に今後もさまざまなジャンルでの「トップ5」の発表を楽しみにしたい。