
道を選ばない正統派SUVが凱旋帰国!
オフロード走破性が格段に高められ、従来モデルにも増してアクティブシーンでの活躍が期待されるホンダのCR-V。―― 果たして、その実力はどれほどなのか?――
平日はプロスノーボーダーなどの撮影で“道具”としてクルマを駆使し、週末はファミリーカーとして家族を乗せる、カメラマン柳田由人氏がCR-Vをテストユース。彼をして良き相棒と讃える、確かな実力が見えた!
Photographer 柳田由人氏
カメラマンであった父の影響から写真の道を志す。スノーボードに限らず様々なプロスポーツ、クルマ、オートバイ等のメディアからタレントやモデル撮影まで、幅広いシーンで活躍。趣味はサーフィン、SUP、釣りと多才。
https://www.yoshitoyanagida.net/
オン/オフ問わずに高い安心感を与えてくれる
「極寒の雪山にクルマを駐めておくと、走る前にクルマを温めて窓やルーフの雪下ろしをしたり、自分が着替えたり暖を取ったりするためにアイドリングをしていなければならない。ハイブリッドカーならエンジンのかかっている時間を最小限に抑えられるので、お財布と地球に優しそうですね」
と、言いながら彼は慣れた所作でウエアに着替え、ラゲッジからスノーボードとバックパックを取り出す。リアシートはレバーを引くだけでパタンと簡単に倒れるから、スノーボードの収納に困らない。カメラ機材とスノーボードギアを含めて20kg近くにまで及ぶというバックパックを、その重さを感じさせないほど軽やかに背負って、彼は雪山のてっぺんを見る。
自ら胸を張ってスノーボードカメラマンと名乗る柳田由人氏だ。今でこそあらゆるスポーツを撮影し、また本誌をはじめ自動車メディアでも活躍する彼だが、その芯にあるのは大自然の中でスノーボーダーの刹那な一瞬を切り取る姿である。トップアスリートとともに雪山に登り、重い機材を背負って彼らと同じペースで滑りながら撮影をこなすのだから、並大抵のカメラマンでは務まらない。彼自身、かつてはプロのスノーボーダーを目指していただけに相当な腕前だ。整備の行き届いたゲレンデだけに止まらず、誰も足を踏み入れない未開の地(バックカントリー)にまで赴いて撮影する。
常に危険と隣り合わせで活動する彼だからこそ、機材やアウトドアギアに求めるのは安心感だという。一歩間違えば命を落とすような自然を相手にする現場で100%の仕事をするためには、可能な限り不安材料を減らしておかなければならない。

カメラにストロボにスノーボードにスコップに……と、柳田氏が雪山で撮影する際は多くの機材を持っていく。20kg近い重さのバックパックを軽々と背負って雪山に登る彼の体力に圧倒されつつ、それを楽に飲み込んでくれたCR-Vのラゲッジルームにも感心させられた。
その象徴にしてもっとも重要な“機材”こそ、日々をともに過ごす愛車である。シーズン中は自宅のある茅ヶ崎から全国各地の雪山まで毎日のように繰り出す。だからこそハイウェイから積雪した山道までの長距離を疲れ知らず、故障知らずで走ってくれる性能が必須だ。彼にとっての愛車は見栄を張るものではなければ、ファッションアイテムでもない。必要な機材を収納できて、安心感を持つべき純然たる機材である。
5代目となり、2年ぶりに日本市場に戻ってきたホンダCR-Vは、そうした意味で彼の相棒にふさわしい存在だった。今回、彼にとっての頼れる“機材”としてCR-VハイブリッドEX・マスターピース(4WD)に乗ってもらい、実際に雪山への撮影に繰り出した。ことさら尖らず奇をてらわず、究極的に普通のモビリティをつくる、という目的を持って開発されたCR-Vは、あらゆるシチュエーションにおいて彼の要求性能にマッチしていたようだった。
気が利くユーティリティは仕事でも遊びでも大満足
「高速ではゆとりがあるし、凍った山道だってしっかりトラクションを感じるので安心して走れます。これなら疲れ知らずで現場まで行けますね。スノーボードでの撮影中は、新雪のパウダースノーかと思って飛び込んだら実は凍っていて、カチカチだったりとかよくあるんです。自然と向き合い、あらゆる雪の表情を自分自身でクリアしなければならない。だけどCR-Vはクルマ側でちゃんとサポートしてくれるような感じかな」
かつてはドリフト競技に熱中するほど、運転技術の高い彼が注目したのはその走りだった。シビック譲りの新世代プラットフォームに加え、欧州のワインディングやアウトバーンで調律したサスペンション、さらにホンダお得意のスポーツハイブリッドi-MMDに初めて組み合わされた4WD(リアルタイムAWD)が、速度域や路面環境に合わせて安定した走りをもたらしてくれる。機材に安心感を求める彼にとっては、好ましい走りっぷりである。
「収納のしやすさや容量は充分ですね。いざとなったらルーフボックスをつければいいし。たとえボックスをつけても、駐車場の全高制限に引っかかりにくいサイズ感もいい。ミニバンにボックスをつけると、都内なんかでは入れなくなる地下駐車場が増えるんです。でも、屋根に何か載せたらサンルーフ(電動パノラミックサンルーフ)の魅力が減っちゃいそうだし、ここはちょっと悩みどころ」
つい擬似オーナーになって考え込んでしまうほど、CR-Vはお気に入りの様子である。安心感を持てる機材として十二分に満足しながら、同時に乗員に優しいデザインや雰囲気、構造を持つこともまた魅力だった。
「山奥で撮影が終わって自分のクルマに戻ってくると、いつもホッとするんです。そういう時に、こんなオシャレな雰囲気ならいいですね。車内は広いし空を見上げられるし、レザーシートだって丈夫そう。雪山だけじゃなくて、釣りにサーフィンにと、どこへでも連れ出したくなる。たとえ車体が泥だらけになっても服が汚れにくいドアの構造なんて、ホントに考えられていると思います」
1971年に公開された傑作カーアクション映画『栄光のル・マン』では、よりリアリティのある映像を求めて、カメラカーを前年のル・マン24時間に実際に参戦させたという。CR-Vでゲレンデに乗りつけ、自由自在に滑走しながら撮影する姿を見て、ふとそんなことを思い出したのは、彼も同じ精神で仕事をしているからなのだろう。無事に撮影を終えた後、雪道で泥だらけになったCR-Vが、『栄光のル・マン』で実際に使われたカメラカー、ポルシェ908と重なって見えた。
specification
CR-V HYBRID EX.Masterpiece(4WD)
■全長×全幅×全高=4605×1855×1690mm
■ホイールベース=2660mm
■車両重量=1700kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+モーター/1993cc
■最高出力145ps(107kW)/6200rpm
■最大トルク=175Nm(17.8kg-m)/4000rpm
■モーター最高出力=184ps(135kW)/5000-6000rpm
■モーター最大トルク=315Nm(32.1kg-m)/0-2000rpm
■トランスミッション=CVT
■サスペンション(F:R)=マクファーソンストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/60R18:235/60R18
■車両本体価格(税込)=4,361,040円

通算で5代目となるCR-Vが、約2年ぶりに日本市場で復活した。搭載されるパワーユニットは1.5L VTEC ターボ、CR-V初の2.0L+ハイブリッド(スポーツハイブリッドi-MMD)の2本立て。後者は走行状況に応じて「EVドライブ」「ハイブリッド」「エンジンドライブ」の3つを瞬時に切り替え、低燃費と走りの良さを両立させる。いずれもFFに加えて4WDが設定される。標準グレードEX Honda SENSINGに対して、豪華装備をまとうのがEX・Masterpiece。安全運転支援システム「Honda SENSING」は全グレードに標準装備される。
ガソリン車は3列シート7人乗り仕様も用意
1.5Lターボを搭載するガソリンモデルには3列シート7人乗り仕様が存在する。荷室床面を上下2段階で調節可能なほか、3列目のシートを畳めば広大なラゲッジルームとなる。
■取材協力=本田技研工業
■撮影協力=グランデコスノーリゾート https://www.snow-grandeco.com/