FCVのパイオニアはトヨタかホンダか
トヨタとホンダのFCVのダイナミック比較テストは、恐らく世界初の試みだが、自動車史に残る2台のFCVのパフォーマンスは、今後のベンチマークとなることは間違いない。他ブランドの海外試乗会で出会う世界のメディアからも、FCVに関する質問をされることが多い。VWのようにFCVよりもEVにシフトするメーカーは少なくないが、トヨタとホンダが本気を出していることに、多少なりとも世界のメディアは驚いているのだ。
今から100年後、「誰が最初のFCVを作ったのか」という問に対して、トヨタと答えるべきか、あるいはトヨタとホンダと答えるべきか。私は、後者を選択したい。正確にはトヨタが先に市販したが、その差はわずか1年。しかもトヨタ・ミライが専用設計であるのに対して、ホンダは量産を前提としたプラットフォームを使っている。そう、クラリティは次期アコードハイブリッド(PHEV)のプラットフォームを先行採用しているのだ。しかもこのプラットフォームを用いたバッテリーEVもラインアップする予定だ。
ということで、ホンダのクラリティ・フューエルセルは法人リースという販売方式を選んではいるものの、設計は完全な量産を前提としている。したがってFCVの第1号は、「トヨタ・ミライとホンダ・クラリティ・フューエルセル」と、歴史に刻みたいと思ったのだ。
というのもガソリン車の場合、「ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツ」のふたりの技師が発明したとその名が歴史に刻まれているからだ。1886年、同じ時期に同じ地域でふたりの天才発明家がそれぞれガソリン車を発明したのだ。前者は4輪車、後者は3輪車だったが、後にダイムラー社とベンツ社が合併したこともあって、ふたりの名前が発明者として知られている。
いずれにしても、ポストガソリン車たるFCVを実用化したのが日本メーカーであることは、後世の日本人にとって誇れる史実だ。
だが、ドイツのメルセデスやアウディも、2017年のフランクフルト・ショーで正式にFCVを発表する予定だ。メルセデスはGLCベースのFCV予定だが、容量の大きな二次バッテリーを搭載したプラグインモデルとなりそうだ。メルセデスのロードマップでは、2025年頃にリチウムバッテリーが大幅に進化し、満充電で100km程度は走れるようになるそうだ。これなら水素スタンド不足の問題も軽減される。しかも後輪駆動らしい。
アウディもA4ベースのMLB-evoプラットフォームを使う、同じプラグインタイプの量産FCV「h-トロン」を発表予定だ。ドイツ勢は日本より数年遅れて市販するので、先進性だけでなくクルマとしての魅力を高めて勝負する。
トヨタで期待するのは、レクサスのFCV。FRなので、打倒テスラの先鋒となるかもしれない。ホンダはGMとのコラボで開発される次期型が’20年頃に登場するので、その進化が期待できる。