エモーションを喚起する快速オープンモデル
クーペでも感じたことだが、相変わらずグリップ感に賛同できないリトラクタブル・ドアハンドルを引いて、コクピットに腰を落とし込む。ヘッドレストと一体になったスポーツシートの座り心地、ホールド性そして快適性はほぼ完璧である。しかし、ドアハンドルと同じようにデザインの犠牲になったセレクトレバーは、フォルムも含めてブラウン製のトラベル・シェーバーのようで感触もよくない。ともあれ「R」「N」「D」のみが表示されたセクトレバーをDポジションにセット。まずはオープン・エアドライブを楽しむためにルーフを開けて走り出す。50km/h以下のスピードであれば、わずか12秒で開閉が可能だ。電動のウインドスクリーンを立てれば、リアシートは犠牲になるが、走行風の巻き込みを防ぐことができ、快適なクルージングを享受することができる。
操縦安定性については、クーペと同じように左右に40mmワイド化されたトレッドとフロント245/35ZR20、リアが305/30ZR21となるミックスサイズのタイヤのおかげで安定性がいっそう高まり、その一方で6%クイックになったステアリングで従来通りの敏捷性を残している。
カブリオレに新搭載のウェットモードもテストできた。これは前輪が捲きあげた水滴音をマイクが拾うと、メーター内に「WET」のウォーニングランプが点灯。この警告に従ってドライブロジックダイヤルをWETにセットすると、スロットルレスポンスやトラクションコントロール(PTM)、スタビリティコントロール(PSM)などが最適化、リアスポイラーも最大のダウンフォースが得られる位置まで起き上がる。特設のウエットコースでこのシステムの効果が確認できたが、エントリーモデルのボクスターやケイマンならともかく、スロットルワークの意味を理解した911のドライバーには必須とは言い難い。
ともあれ、当然のことながら911カブリオレはクーペと同様に進化している。それはいわゆる「最新のポルシェ911は最良のポルシェ911」というポルシェフリークの言い伝え(都市伝説?)が正しいことを証明するものだった。ただし私の個人的な意見を述べるならば、「次の911はベターな911だ」と言い換えようと思う。それは、エンジンをリアアクスル後方に搭載するという911ならではの不条理があり、その欠点を克服するための作業は未来永劫に続くネバーエンディングストーリーだと思うからだ。
ところで、この911カレラ・カブリオレは、すでに日本でも受注も始まっていて、価格はカレラSカブリオレが1891万円、カレラ4カブリオレが1997万円となっている。