アウディ

【国内試乗】「アウディ A6」ある種の凄みすら感じさせる洗練度

これがハイテク・フォーリングスの最新世代

デザインとテクノロジーで時代をリードし、その後にアウディが進むべき道筋を描いてきたともいえるアッパーミドルクラスのA6。その実質的な8代目がようやく日本の路上を走り始めた。新型に投入された新機軸は多岐に渡るが、まずは走らせてみての第一報からお届けしよう。

55TFSIに搭載されるパワーユニットは、3L V6直噴ターボと48V駆動のMHEVシステムで構成。55-160km/hの幅広い領域でのコースティングを可能にしている。

アウディのアッパーミドルセダンは、車名がA6となってからこれで5代目。前身のアウディ100も合わせれば8世代で50年以上の歴史を誇ることになる。
新型A6は、遠目にもはっきりそれとわかることからコンサバにも思えるのだが、近づいていくにつれ今までにも増して端正な佇まいで洗練されていることに気づく。FF系のアウディは、FR系よりもフロントアクスルが後ろ寄りになるので伸びやかなフォルムを実現しづらいのだが、従来型に比べるとこれも改善。フロントタイヤとドアの間隔をみると従来型よりも長くなっていることからわかる通り、フロントアクスルが前出しされたのだ。全長は5mmしか伸びていないが、ホイールベースは15mm伸び、ロングノーズ&ショートオーバーハングというFRに近いフォルムを獲得している。

ブラックパネルを基調にしたクールでクリーンな仕立てはアウディならでは。最新のMMIタッチレスポンスが標準装備となる。

従来型はサイドのショルダーラインが前後を貫いていたのだが、新型は前後フェンダーからドアへ少し食い込んだあたりでスッと消えている。これによって張り詰めた面構成が強調されて、エレガントさを醸し出している。そのラインが水平を保っているのはアウディの伝統。前下がりにすると前進感が増してスポーティになり、後ろ下がりにするとエレガントになるなどの効果があるが、水平はあえて効果を狙わないことで飽きのこないデザインだと言える。フェンダーはクワトロブリスターと呼ばれる膨らみがもたされており、アイデンティティであるクワトロ感を強調。メルセデスやBMWもシンプル&クリーン方向のデザインへシフトしてきているが、アウディはもともとそういった志向であり、A8以降の新世代モデルは一層それに磨きをかけてフォルムの美しさが際立っている。

アバントのラゲッジルーム容量は通常時で565L、後席シートバックのアレンジ次第で最大1680Lまで拡大することが可能だ。

フロントマスクは紛れもなくアウディのそれだが、新世代のシングルフレームグリルは角が強調された六角形で、よりワイドにもなって存在感が高められている。ヘッドライトの形状は従来と似ているが、内部のメカメカしい造り込みで表情がキリッとしている。フロントマスク全体がシャープで洗練された印象だ。
インテリアは、デジタライズの先進感と上質なエレガントさが融合。ブラックパネルにアルミのトリムを組み合わせたディスプレイをセンター上下に配置し、MMIタッチレスポンスとなっているためスイッチ類が省略されてすっきりとしている。パネルをタッチして操作すると触覚(ハプティック)とクリック音が心地よく、いかにも最新モデルに触れているという喜びを感じさせてくれる。

セダンのトランクルーム容量は530Lで、スクエアな形状のためユーティリティ性は高そう。トランクスルー機構も備わる。

まず日本仕様に用意されたのはセダンとアバントの55TFSIクワトロで、パワートレインは3L V6ターボ+マイルドハイブリッド。48V電源のBAS(ベルト駆動オルタネータースターター)となっていて、最大12kWの回生を行ってリチウムイオンバッテリーに電力を貯める。走行中に必要な電力がふんだんにあるため、55-160km/hのコースティングではエンジンを完全停止することが可能。また、アイドリングストップからの再始動がきわめて素早くスムーズになっているのも特徴で、それを生かして22km/h以下になるとエンジンを止めて燃費改善効果を高めている。MHEVは100km走行あたり最大で0.7Lの燃料削減が可能だという。

シャシーは余裕たっぷりしかも驚くほど静かで快適

走行状況に合わせて車両を最適化する可変ドライブアシストや4輪操舵システム、そして最新のクワトロが常に安定した走りを提供する。

走り出してまず驚いたのは、動きがスムーズで上質感が漲っているいることだった。タイヤが丸い感覚そのままに滑らかに転がっていき、路面の凹凸を拾った際のサスペンションの上下動も角張ったところがまるでない。ステアリングやペダル類など操作系も含め、あらゆる可動部のフリクションが徹底的に低減されて洗練されたフィーリングを醸し出しているのだ。
エンジンは最大トルクが510Nmもあるのでもちろん頼もしいが、以前のアウディのようにスロットルが早開きして力強さを過剰に演出することなんてことがなく、あくまでリニアに落ち着いた雰囲気で加速していく。一般的な走行ならばエンジン回転は2000rpm程度で十二分で、まるでディーゼルエンジンのよう。それもそのはず、最大トルクは1370-4500rpmと超低回転から発生し、しかもトルクバンドが幅広い。首都高速や高速道路までを含めて、3000rpm以上を使うことなんて滅多にないぐらいだ。それでいてアクセルを深く踏み込んでいけば、鋭く吹け上がって6400rpmまで一気に上昇。そもそもシャシーのポテンシャルが高くクワトロでもあるから安心感は高いが、一方でのけぞるような速さがあるのが面白い。

日本仕様は当初セダン/アバントともSラインのみの設定で、ホイールは19インチが標準。オプションで20インチも選ぶこともできる。

静粛性の高さも驚きのひとつ。エンジン音は3000rpm以上回さないとかかっていないのかと勘違いしそうだし、ロードノイズもきわめて低いレベル。さらに、ウインドーノイズの処理も見事。サイドミラーの形状が巧みなようで、音の発生そのものが抑えられるとともにガラスの遮音性も高い。全体の音量が低い上に、どこかの音が目立つということのないバランスのいい静粛性能なのだ。
乗り心地のスムーズさは、ワインディングを元気に走らせるときでも変わらなかった。正確なライントレース性と抜群の操縦安定性によってスポーツカーも顔負けのコーナリング性能をみせつけるのだが、そういった走りのなかでもスムーズさが際立っているのだ。ステアリングフィールはあまりダイレクトではなく、ソフトな手応えでやや希薄とも言えるのだが、センターはしっかりとわかるし、ドライビングに必要なインフォメーションはきちんと伝わってくる。FRスポーツセダンの、拳にビンビンとくる感触とはまったく違うのだが、ボディはもちろんのこと、フロントのサスペンション回りやステアリング系の剛性が凄まじく高いことが窺い知れ、正確無比な動きをしっとりと感じさせるのが不思議と心地いいのだった。
どんなにペースを上げてもコーナーを攻めても、粛々と滑らかに、上質感をもって走っていく新型A6の洗練度にはある種の凄みすら感じる。A8以降の新世代アウディは、新たな境地を切り開いた。

ホイールベースの延長によりキャビン内は全方向にスペースを拡大。セダンのCd値は0.24と空力も優秀、高い静粛性に寄与している。

【Specification】アウディA6 55 TFSIクワトロSライン[アバント55 TFSIクワトロSライン]
■全長×全幅×全高=4950×1885×1430mm[4950×1885×1465mm]
■ホイールベース=2925mm
■トレッド=前1625、後1610mm
■車両重量=1880kg[1930kg]
■エンジン型式/種類=DLZ/V6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=84.5×89.0mm
■総排気量=2994cc
■圧縮比=12.3
■最高出力=340ps(250kW)/500-6400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1370-4500rpm
■燃料タンク容量=73L(プレミアム)
■燃費(JC08)=12.3km/h
■トランスミッション形式=7速DCT
■変速比=1速3.187、2速2.191、3速1.517、4速1.057、5速0.738、6速0.507、7速0.385、R2.749、F4.410/4.400
■サスペンション形式=前後Wウィッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後245/45R19(8.5J)
■車両本体価格(税込)=10,060,000円[10,410,000円]

新型A6にはアクティブレーンアシストをはじめ最新世代のドライバー支援システムを搭載。将来的には自動駐車も視野に入れている。

【問い合わせ】
アウディジャパ℡0120-598-106 https://www.audi.co.jp/

リポート:石井昌道/M.Ishii フォト:郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年6月号より転載
LE VOLANT web編集部

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