
パリ生まれのコンパクトラグジュアリーSUV
シトロエンから独立してから開発されたニューモデル第2弾、それがDS3クロスバックだ。FFのクロスオーバーSUVである点はDS7クロスバックと同じだが、今回はBセグ相当のサイズ感。アウディQ2やミニ・クロスオーバーよりコンパクトなボディに、グラマラスな内装、さらに走りにもDSらしいエッジが効いている。
昨夏に日本上陸したDS7クロスバック以来のブランニュー。シトロエンやプジョーとは異なる、新しいDSブランドの個性が、コンパクトSUVたるDS3クロスバックに乗ったいま、さらに明確に像を結んだ。飛ばしても怖くない柔らかな足回り、攻めてもひたすら破綻のないフラットライド、それでいてずば抜けた静粛性。独立後の第2弾モデルにしてDSは、その動的クオリティのあるべき姿を雄弁に語るように、しかし優雅に描き切って見せた。スペックで選ばれるような「高級」とは一線を画しているあたりも、物足りなく映るか小気味よいと思うか、顧客を選ぶところさえある。
DS3クロスバックは「コモン・モジュラー・プラットフォーム(CMP)」というPSAグループがおもにBセグメント用に開発した最新鋭アーキテクチャを、最初に採用したモデルだ。全長は4.2mに満たず、全幅も全高も日本の立体駐車場に楽々収まるコンパクトなボディ外寸でありながら、タイヤだけは外径690mmもの極大サイズ。具体的にはミシュランのプライマシー4で18インチの55扁平という、欧州Dセグ・サルーンが履いていてもおかしくない。にもかかわらず、DS3クロスバックは巧みなホイールコントロールに加え、フロア回りの振動やロードノイズをほとんど伝えてこない優れた静粛性でもって、巧みに履きこなしていたのだ。開発企画の段階で仕様書を作成した担当者によれば、ベンチマークはアウディQ2で、静粛性でQ2を凌ぐことは至上命題だったという。
高速道路や幹線道路で、バウンス感のある優しい乗り心地を味わえるだけではない。ワインディングでは1.3トンに満たない車重と低重心のおかげで、SUVらしからぬ軽快なハンドリングが楽しめる。足回りのストロークも剛性感も豊かで想像以上に追い舵が効くのに、車内が静かなためか、つい飛ばし過ぎてしまう。ガソリンエンジンは130ps/230Nmと155ps/240Nmの2種類が用意され、今夏上陸が予定される日本仕様は前者となるが、ピークトルクにあまり差がないせいか、加速感にさしたる違いはない。加速の伸びと一定の速度域でのエキゾースト音量については、クランクカバーまで新設計という155ps仕様に軍配が上がるのは確かだが、いずれの仕様も組み合わされる8速AT制御のスムーズさが、PSA史上最高といえる出色の出来である点は強調しておく。
新生DSのあるべき姿がこの一台に詰まっている
欠点はタイヤ外径に起因することだろうが、5.3mという最小回転半径はBセグとしては大きい。Uターン以上に旋回させられるヘアピンでは、ライン取りを前もって意識する要があった。
とはいえDS3クロスバックの魅力は、走り出す前から際立っている。その内的質感、インテリア内装の洒脱さは圧倒的でさえあり、同じセグメントに敵はない。「オペラ」あるいは初回限定版の「ラ・プルミエール」では、シート同様にダッシュボードに張られたナッパレザーに、染料を指にのせて表面にニュアンスをつけることで生まれる「パティーヌ仕上げ」が施されている。またオプション扱いながら、フランスの高級オーディオメーカーであるフォーカルを搭載するフランス車は他にもあるが、最上級システムの「エレクトラ」を選べるのはDSのみだ。
いわばDS3クロスバックには、小さな車格から窺い知れないほどの、エレガントな身のこなしと洗練された感触がある。「小さな高級車」であることは間違いないが、そんないい回しをどこか陳腐に感じさせてしまうのも、そのクラスレスな魅力の為せる技といえる。
【SPECIFICATION】DS3クロスバック ピュアテック130[DS3クロスバック ピュアテック155]
■全長×全幅×全高=4118×1791×1534
■車両重量=1205kg
■エンジン型式/種類=-/直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=1199cc
■最高出力=130ps(96kW)/5500rpm[155ps(115kW)/5500rpm]
■最大トルク=230Nm(23.4kg-m)/1750rpm[240Nm(24.4kg-m)/1750rpm]
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トレーリングアーム/トーションバー
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後215/55R18
【問い合わせ】
プジョー・シトロエン・ジャポン 0120-840-240