
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number86(SEASON.9):世界をリードするトヨタとVWのミディアムセダン両雄が対峙する
フォルクス ワーゲン・パサート GTEアドバンス vs トヨタ・カムリ G レザーパッケージ/Test02:ウェット旋回ブレーキテスト
●テストの「方法」と「狙い」:ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
フォルクスワーゲン パサート GTE アドバンス VS トヨタ カムリ G レザーパッケージ(ウェット旋回ブレーキ編)
タイヤコンデション
TOYOTA CAMRY G LEATHER PACKAGE
カムリ用に開発されたブリヂストン・トランザT005は乗り心地の良さを保ちながらシュアなステアリングのレスポンスを生み出している。ウェットグリップは平均的だった。9分山の状態でテストを実施。
VOLKSWAGEN PASSAT GTE ADVANCE
ピレリ・チントゥラートP7はカムリと同サイズだが、BSトランザよりもウェットグリップが高く、安心感は抜群。接地感が高く、乗り心地はパサートのクオリティにあっている。タイヤは8分山。
装着タイヤのパフォーマンスが勝負の行方に大きな影響を与えた
TOYOTA CAMRY G LEATHER PACKAGE
●制動距離:70.0m(★★★☆☆)
ハイブリッドというと、どうしてもカタログ燃費を気にした、転がり抵抗を重視したタイヤ性能になりがちだが、カムリが採用したBSトランザのウェットグリップは走りを意識したものだった。ウェット旋回は悪くないが、ABSの初期制動が強すぎて、ターンイン初期の舵の効きが甘くなる。2回目のテストではステアリングを早めに操舵してABSの制御をテストしたがバラツキは少なく、これは合格点。だが、パサートはカムリよりも短い距離で止まれて、ライントレースも良かったので、カムリはブレーキ性能を含めたシャシー性能に改善の余地がありそうだ。具体的にはABSのリニアリティをさらに高めたいところだ。
VOLKSWAGEN PASSAT GTE ADVANCE
●制動距離:56.5m(★★★★★)
プラグイン・ハイブリッドということで、カムリより120kgくらい重いため、少し不安な状態で挑んだが、テストでは真逆の結果になった。パサートのブレーキは、直線時の制動と同じくらいの減速Gを発生してガツーンと効く。しかもステアリングの正確性は揺るがない。フロントタイヤはまるでレールの上を走るように、イン側のラインをトレースする。一切のアンダーステアを感じないまま完全停止できたのだ。想定外の結果には驚くばかりで、何をどうチューニングしたらこうなるのか知りたくなったが、タイヤが貢献していることは間違いない。制動性能はポルシェ・レベル、いやそれ以上かもしれない。