シトロエン

【海外試乗】間もなく本格上陸! シトロエンC3エアクロスは2CVの再来?

デザインよりも仕上げに見るべき点が多々ある

「NEWシトロエンC3エアクロス・コンパクトSUVロードショー」と銘打って、5月18日(土)~6月30日(日)の期間で全国8店舗のシトロエン販売店で先行展示を行っているシトロエンのC3エアクロス。ちょっとSUVルックなニューC3に続き、Bセグメント・コンパクトSUVの本命としてデビューしたその実力を、フランス本国試乗で試してみた。

リアビューもなかなかファニー度が高い。蛍光オレンジのアクセントを馴染ませる節度と配分のセンスは、他社が真似できない領域だ。

今回は、おもに欧州市場向けの1.6LディーゼルのBlueHD 130S&S(スタート&ストップ)+6速MT仕様と、日本仕様として可能性が高い1.2Lピュアテック110S&S+6速ATという、ふたつのパワートレインを試すことができた。感覚的な物言いながら、ディーゼルよりガソリンの方が好感触だったことは、久々だったと思う。欧州でガソリン回帰が進んだことを実感した。

ガソリン仕様は、3気筒1.2Lターボのピュアテック110スタート&ストップに、6速ATを組み合わせという、プジョー・シトロエンですでに定評あるパワートレインを採用。

C3エアクロスの特徴は、まずは外観だろう。シトロエンが「baroudeur(バルゥドゥール、好戦的なる者、の意)と呼ぶアクティブなデザインは、なるほどツワモノ風だ。だが全長4155×全幅1825×全高1630mmの外寸の中で実現されたそれは、少しデフォルメされたSUV。ようはハードな本格派SUVの「お洒落パロディ版」に見える。例によってパワートレインはFFのみ、4WDは用意されない。代わりにプジョー2008と同様に、氷雪路や砂、泥といった未舗装路面でESPの延長で駆動力を最適化するグリップコントロール機構は備わる。街中に重きがある「非・本格派」SUVであることに開き直っている訳だが、4WD化による重量増より、燃費やハンドリングを優先させた現実的な選択でもある。

ディーゼル、ガソリンともグレードは「シャイン」でファブリック内装だが、これがすこぶる出来がいい。前者は後者より明るいトーンで緑がかっており、ウール生地の風合いにヴィンテージ感すらある。後者はもっとスポーティな、濃いグレーでワッフル仕立ての生地。いずれも同じ生地がダッシュボードにまで張り込まれ、乗員の手肘や視線に固いプラスチックが無粋に触れることを、巧みに避けている。とてもインテリジェントな内装だ。

室内のデザインはセンスのいい仕上がり

こちらは明るめのグレーを採用したディーゼルの6速MT仕様。アナログ2連メーターの上方にイグニッションONでヘッドアップディスプレイ表示が出現。インフォテイメントは7インチのタッチスクリーンに集約。

グレー基調に蛍光オレンジのアクセント・ラインが入っていて、メーターバイザーの上にヘッドアップディスプレイが備わる点は共通。色合いとしてはけっこう冒険している類だが、野暮ったく見えない点がさすがシトロエン、口にするのも野暮ったいが、パリ生まれの自動車メーカーだけある。近頃のコンパクト系の内装の仕上げといえば、Bセグに限らず化学繊維の安っぽさ丸出しで、殺伐としたレンタカー・グレード並のものが多いことを思えば、いい大人が落ち着けるレベルにあること自体、貴重だ。日本未導入だったC3ピカソの実質的な後継車種だけに、C3エアクロスの室内のルーミーさ・インテリアの洗練ぶりは、正常進化の範囲内ではある。

パノラミックサンルーフは開放感だけでなく、前席頭上の辺りまで開閉が効くようになった。センターコンソールにはダイヤル式のグリップコントロールが備わる。フロアシフト奥の収納は、スマートフォンをワイヤレス・チャージできるトレイになっている。遊びと実用性のバランス感が秀逸だ。

走りについては、鼻先の重いディーゼルよりガソリン仕様の方が明らかに前脚のつっぱり感がなく、自然なロールと軽快なハンドリングを見せる。乗り心地や段差越えで不快さはないものの、明らかに高速道路での巡航を得意とするタイプではない。というのも、角ばったボディが空力的でないのか、120km/h以上からアクセルを緩めるとエアブレーキが効いたかと思うほど速度は落ちるし、110km/h前後でメーター上の瞬間燃費も劇的に改善される。日本の法定速度内なら問題にならないはずとはいえ、130km/h巡航では風切り音も、小さな空気の流れが表面でブツかっているような、細かな揺れが始終伴う。

荷室は後席を目いっぱい後ろに引いている時は410Lほど。後席を畳んだ最大時は1289Lにまで拡大できる。後席ドリンクホルダーや、2段階の床下収納も備え、実用度が高い。

ようは、ニューC3よりルーフが高くなった分、それなりのもっさり感はある。ところがC3エアクロスで走ることは苦痛どころか、逆に下道で90㎞/h以下の領域で遠くに行くのが楽しいと思わせる。そこに、このクルマの矛盾した魅力がある。動的質感という観点で微視的に見たら粗はある。だがそれらは予想も制御も可能な粗で、わざわざ粗の出る走り方をしなくなる。逆に内装の居住性、というか居心地そのものがよいので、妙な寛ぎオーラも、そうさせる。

この、矛盾がひと巡りして醸し出されるスローな安心感。そういう意味で、ニューC3が至極快適に距離をグイグイと飲み込んでいくBXに近いコンパクトとすれば、C3エアクロスは2CVに近いと思う。シトロエン・ワールドは間口がより広くなって今も健在だ。

【SPECIFICATION】シトロエンC3エアクロス
■全長×全幅×全高=4155×1825×1630mm
■ホイールベース=2604mm
■トレッド=前1513、後1491mm
■車両重量=1159kg
■エンジン種類=直3DOHC12V+ターボ
■内径×外径=75.0×95.0mm
■総排気量=1199cc
■圧縮比=10.5
■最高出力=110ps(81kW)/5500rpm
■最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/1500rpm
■燃料タンク容量=45L(プレミアム)
■トランスミッション形式=6速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後215/50R17

問い合わせ先=プジョー・シトロエン・ジャポン℡0120-840-240

https://www.citroen.jp/

リポート&フォト:南陽一浩 K.Nanyo ル・ボラン2018年6月号より転載
南陽一浩

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