メルセデス・ベンツ

【海外試乗】「メルセデス・ベンツEQC 400 4MATIC」“EQ”ブランド初の市販EV登場!

EQブランド初の市販EVが満を持して本格始動

2016年のジェネレーションEQコンセプト公開から2年。「EQ」ブランドとして初の市販EV「EQC」の海外試乗会がノルウェーのオスロで開催された。今後のメルセデスの電動化戦略を占う先鋒の気になる第一報をお届けしよう。

センターコンソールを運転席側へ向けるなど、ドライバーオリエンテッドなデザインも垣間見える。エアコンの吹き出し口にあしらわれた赤銅色は、モーターのコイルをイメージしたものらしい。

2016年のパリ・サロンでお披露目となったメルセデス・ベンツの新しいブランド“EQ”は「エレクトリック・インテリジェンス」を意味し、EQブランド初の量産車がEQCとなる。同時にこれはメルセデ初の量産型BEVでもある。メルセデスではPHEVを“EQパワー”、BSG仕様やISG仕様を“EQブースト”とそれぞれ呼んでいるが、電動化されたモデルにはなんらかの形で“EQ”という名称を使うことで、電動化に対する積極的な取り組みをアピールする狙いがあるようだ。

メルセデス初のBEVだから、プラットフォームから専用のものを仕立ててくると思っていた。ところがボディスペックや試乗会会場に置いてあったベアシャシーをよく観察してみると、基本的にはGLCと共有していることが分かった。2873mmのホイールベースは欧州仕様の値だが、GLCの欧州仕様もまったく同じ数値で、フロントが4リンク、リアがマルチリンクのサスペンション形式も同一。しかし決定的に違うのは、リアのみに空気ばねを使っている点。2トンを超える車重でもクルマの挙動をきちんとコントロールするために、部分的に専用の設計が必要だったという。ちなみにダンパーは電子制御式ではなく、AMGラインを選んでも、サスペンション設定に変更はない。

ドライブフィーリングはまごうかたなきメルセデス

モーターは前後にひとつずつ置かれ、フロントは主に低負荷から中負荷で、リヤはそれ以上のダイナミックな走りの時に威力を発揮する4WD方式となる。システム最高出力は408ps、最大トルク760Nmを発生するそうだ。フロア下に敷き詰められたリチウムイオン電池の電力量は80kWhで、バッテリー単体での重量は652kgにも及ぶ。充電時間はACの普通充電で約11時間、DCの急速充電で約40分。日本仕様はCHAdeMO対応となるそうで、高速道路などの急速充電器が使用できる。最高速は180km/h、0→100km/hは5.1秒で、航続距離は使用状況にもよるが445kmから471kmと発表されている。

モーター/リダクションギア/ディファレンシャル/冷却システムはひとつのハウジングに収められ、これが前後共サブフレームにマウントされている。

走り出してすぐに乗り心地のよさと静粛性の高さが実感できるが、これはBEVならどんなモデルにも共通する印象である。床下に652kgのバッテリーを搭載する2495kgの車重があれば、ばね上の動きはある程度自動的に抑えられるはず。電子制御式ダンパーをあえて採用しなかったのは、おそらくその必要がなかったと考えられる。静粛性に関しては、特にリアのフェンダー周りに遮音/吸音の処置が施されていた。内燃機よりも圧倒的に静かなBEVでは、内燃機仕様車でさほどきにならなかった音が耳障りに感じる場合がある。フェンダー周りの処理は主にスプラッシュノイズ対策だろう。1万3000回転まで回るモーター特有の高周波ノイズもうまく遮断されていた。

荷室容量は後席を倒さずに500Lで、GLCよりも50少ない(数値はいずれも欧州仕様)。

ハンドリングはまさにメルセデスのそれである。ステアリングレスポンス、コーナリング時の過渡特性、荷重移動など、メルセデスのSUV系と何ら変わりない安定志向の味付けになっていた。動力性能も同様で、ドライブモードのコンフォートやエコを選んでいる限り、スロットルペダルの動きに対するパワーデリバリーは内燃機仕様車と酷似していて違和感をまったく感じない。スポーツを選ぶと瞬時にトルクが立ち上がるEVらしいパワフルな加速が顕著に体感できた。

とりあえず初めてのBEVは、革新的というよりも保守的にまとめてきた印象が強い。メルセデスも、この先10年くらいのパワートレインの動向が正確には掴めていないようで、EQCでしばらく市場の反応を窺うつもりなのだろう。専用プラットフォームの開発についての言及はなかった。

【Specification】メルセデス・ベンツEQC 400 4MATIC
■全長×全幅×全高=4761×1884×1623mm
■ホイールベース=2873mm
■トレッド=前1625、後1615mm
■車両重量=2495kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■バッテリー総電圧=405V
■バッテリー総電力量=80kWh
■最高出力=408ps(300kw)/—rpm
■最大トルク=760Nm(77.5kg-m)/—rpm
■航続距離=(WLTC)445-471km
■最終減速比=1.000
■サスペンション形式=前4リンク/コイル、後マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前235/50R20、後255/45R20

ボディサイズはプラットフォームを共有するGLCと比べると全長で2mm長く、全幅で6mm狭く、全高で16mm低い。ドライブモードの“マックスレンジ”を選ぶと、速度標識を読み取って制限速度を超えないようにスロットルペダルの踏力が制御される。回生ブレーキの強さは2段階で調整可能。

【問い合わせ

メルセデス・ベンツ日本0120-190-610

リポート:渡辺慎太郎/S.Watanabe フォト:メルセデス・ベンツ日本/Mercedes-Benz JAPAN ル・ボラン2019年7月号より転載
LE VOLANT web編集部

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