
自動運転分野では協力しあうDセグの両雄
Dセグメントのトレンドセッターとして、ともに凌ぎを削ってきたメルセデス・ベンツCクラスとBMW3シリーズ。現行モデルはブランドの個性を維持しながらも、もはやライバルを超えた存在として個性を放っている。今回、東京〜白川郷の1300kmを走破し、それぞれの道を模索する2台の実像に清水和夫が迫った。
もはやライバルではない!? 独自性が際立つ各々の個性
永遠のライバルとして位置づけられてきた、Cクラスと3シリーズ。しかし今回、現行モデルを1300kmの道程で試すなかで、それぞれが自らの道へと歩み出したことをあらためて実感した。
新型Cクラスは、昨年のビックマイナーチェンジで6500もの変更を受けた。3シリーズが新しいプラットフォームで登場することを意識してか、大幅にブラッシュアップされた。外観、ボディディメンションに大きな変化はないが、新しい電動車両のアイコンとなるEQブーストを採用。テスト車のC200には新開発の1.5L 4気筒ターボに、48Vで駆動するベルトドライブ・スターター・ジェネレーター(BSG)が搭載されている。12Vの4倍の電圧によって、オルタネーターでも10 kW近い出力でタイヤを駆動することができ、エンジンスターターから回生ブレーキまで、BSGはマルチに三役をこなす。
01. MERCEDES BENZ C200 4MATIC

6500もの変更を受けたCクラスだが、インテリアではナビゲーションなどを表示するセンターモニターを変更し、大型化。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックの操作はステアリング右側に集約してワンクリックでその機能をオンにできる。1.5L直4ターボはBSGとの組み合わせにより、スムーズな発進を実現し、数字以上にパワフルだ。取材車両のC200 4マチックにはシリーズ初となるエアサスペンションが装備され、タイヤ&ホイールは17インチが標準だが、オプションの18インチサイズがセットされていた。1300km走行での平均燃費は13.9km/L。
パワーユニットは、最高出力184㎰、最大トルク280Nmを発揮する1.5Lエンジンの不得意なところを48VのBSGがカバー。そうすることで、ターボを高速用に使えるメリットが生まれ、本当に1.5Lターボなのかと、疑いたくなるパワーを与えてくれる。さらにスムーズな加速やオプション装備したエアサスによるしっとりとして上質な乗り心地はワンランク上のクラスレベル。またシャシー性能が高いため、ADAS(先進運転支援システム)も扱いやすく、安全機能はSクラスと同等のデバイスが与えられている。
メルセデスの安全性能のプリンシパルは「ユーザーのミスユースをなくすこと」、「ユーザーが直感的に使いやすくすること」だ。ゆえにCクラスのACCは、右ハンドル車では右手の親指、左ハンドル車では左手の親指で操作が可能。技術屋よがりにならず、人はミスをするという前提に立って、安全なクルマづくりを実践している。ヘッドアップディスプレイも余計な情報を与えず、自車速度と規制速度がわかりやすく表示され、アナログとデジタルを巧みに使いこなす。実際に走ってみると、車線維持のために電動パワーステアリングが自動で動くが、その反力はごく自然で、ドライバーの感覚のなかにひっそりと入り込むようでハイテクを意識させない。車線逸脱防止はESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)のブレーキ制御を使って、元のレーンに強制的に戻し、リスクが高いケースでは、ドライバーの記憶にしっかりと刻むマネージメントを貫く。
スポーツ性を維持しながら快適性も磨いた3シリーズ
一方の3シリーズは、単に楽しい走りを提供するだけでなく、実用的なスポーツセダンとして開発された。エクステリアは、精悍さが増した立体的なキドニーグリルとLEDヘッドランプが特徴的だ。先代と比べると、そのスケールは現行の5シリーズに近づき、スーパー3シリーズともいえるボディサイズを有する。
全長で+76mm、全幅で+16mm、ホイールベースで+41mmも拡大され、後席の居住性は3シリーズがCクラスを圧倒している。走りに影響を及ぼす前後トレッドは43mm/21mmもワイド化、重心点も10mm低く設定。クルマを正面から見て、左右輪と重心点を結んでつくる三角形は、底辺が長い平べったい形となり、ロール剛性がより高まっている。つまりバネやスタビライザーを強化せずとも、同じロール安定性が得られる。この基本シャシーの諸元性能こそ、3シリーズの真なる魅力なのである。
重量に関しては、プラットフォームが最大で55kgも軽量化されている。低重心化の理由は軽量素材の配置転換によるものであり、車体のねじり剛性は50%も向上しているという。とくに効果的だったのは、タイヤからの力を受けるサブフレームとボディの結合部分と、ストラットのトップとボディの結合部分の剛性を徹底的に高めたこと。その結果、新型3シリーズは驚くほど静粛性が高い。開発エンジニアも音と振動にはこだわり抜いたようで、走行音をキャビンに侵入させないために、フロントウインドーにはアコースティック・ガラスを標準採用する。
取材車両の330iは258㎰を絞り出す2L直4ターボを搭載しており、静かでスムーズな上級グレードのクルマに乗っているような上質感。乗り心地はサスの伸び側を規制する新開発のダンパーにより、ボディの上下動が減少し、荒れた路面でも快適性を損なうことがない。
02.BMW 330i M SPORT

3シリーズはオールデジタルメーターパネルを採用。視認性が高いのが特徴だ。AI音声会話システムのインテリジェント・パーソナル・アシスタントを搭載し、ドライビングだけでなく、ライフスタイルのサポートもしてくれる。2L 直4ターボのパワーは、想像以上に強烈でスポーツ性が際立つ。取材車がスポーツサスを装備するMスポーツ仕様であったことに加え、ランフラットタイヤのため、ややライドフィールは硬い印象だった。前席ではあまり感じないが、後席は3シリーズの方が、空間的に余裕(特にヘッドクリアランス)があり、居住性は高い。1300km走行での平均燃費は12.3km/L。
ADASについては、レーダークルーズのACCと車線維持LKASが使いやすい。さらに歩行者と自転車を検知する自動ブレーキなども標準装備する。高速道路でLKASを試したが、車線から逸脱しそうになると、ステアリングの反力がズッシリと重くなり、車線の中に大きなワダチがあるような感覚だ。メルセデスはステアリングの反力は極力弱められた、真逆の思想となる。自動化技術ではメルセデスとの協業が進むなかで、ブランドの掟を守りながらどんな支援(あるいは自動化)が望ましいのか。BMWは今後も独自の答えを導き出していくのだろう。
【SPECIFICATION】MERCEDES BENZ C200 4MATIC
■全長×全幅×全高=4690×1810×1425mm
■ホイールベース=2840mm
■車両重量=1550kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒DOHC16V+ターボ/1497cc
■最高出力=184ps(135kw)/5800-6100rpm
■最大トルク=280Nm(28.6kg-m)/3000-4000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション(F:R)=4リンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/50 R17:225/50 R17
■車両本体価格(税込)=5,600,000円
■問い合わせ=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610
【SPECIFICATION】BMW 330i M SPORT
■全長×全幅×全高=4715×1825×1430mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1630kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒 DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=258ps(190kw)/5000rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1550-4400rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/45 R18:255/45 R18
■車両本体価格(税込)=6,320,000円
■問い合わせ=BMWジャパン 0120-269-437