国内試乗

【国内試乗】「日産GT-R」より扱いやすく、乗りやすくなった!

乗ってまず嬉しいのは日常領域の乗り心地の良さ

日産GT-Rといえば、われらが誇る“ニッポンのスーパースポーツ”。そのルーツをスカイランのレーシングホモロゲーションモデルに置き、スポーツセダン形状でポルシェやフェラーリといった世界のスーパーカー達と、互角以上に渡り合うパワーアイコンだ。そんなGT-Rがこの度「nismo」と「標準車」の2020年モデルを発表し、今回後者に試乗することができた。折しも今年はGT-Rと並ぶ日産の二枚看板「フェアレディZ」が共に生誕50周年に当たり、それぞれに「50th Anniversary」モデルも発表されている。

日産GT-Rのステアリングを握っていつも驚かされるのは、その走りが今もって強烈な個性を放っていることだ。もちろん一向に次期型の存在が公式に聞こえてこないのは残念だが(一節では電動化を見据え開発検討中で、登場は数年後という話だが)、毎年とは言わないまでもモデルイヤーでの機能改良を地道に施すだけで、約12年もの歳月を生き延びていることには本当に驚かされる。特にここ数年の改良は磨き上げ的な内容が多いことを考えても、基本コンポーネンツの実力は最初からかなりのレベルで設定されたのであろうことが、今さらながらによくわかる。

そんなMY20モデルで行われた改良は、以下の4つだ。ひとつは3.8Lの排気量を持つ「VR38DETT」のツインターボユニットに、「nismo」譲りの「アブレダブルシール」が採用された。さらにエンジンレスポンスの向上に合わせて「Rモード」専用のアダプティブシフトコントロール(ASC)の制御が、よりアグレッシブなものへと変更された。

こうしたパワーユニット面での磨き上げに対してシャシーは、まずサスペンションをリセッティング。またブレーキブースターの特性をチューニングすることで、「短いストロークで効きが立ち上がるように」したのだという。いずれにしても小改良である。しかしその小さな改良はGT-Rを、また一段ロードゴーイングカーとして洗練させた。

MY20に乗ってまず嬉しくなるのは、日常領域における柔軟性(すなわち乗り心地)の獲得である。特に、開発責任者に田村宏志CPSを迎えてからのGT-Rは、MY14からその乗り味を大きく変えた。具体的にはサスペンション剛性がソフトになり、ダンパーがより低荷重領域で追従するように修正された。とはいえそこはGT-R、乗り味がヤワになったという意味では決してない。むしろそれまでのコンセプトが、オープンロードではストイックに過ぎたのだ。

MY14は従来と快適性の差を大きく見せたかったのか、初期ストローク時の減衰力がやや足りず、その速さにスタビリティが追いつかない部分があった。そしてMY20ではこの部分がきっちりと補填され、ステアリングの切り始めからロールスピードを抑え、なおつかつしなやか伸縮するようになっていた。

もちろんここには、MY17で組み込まれた空力アップデートなども密接に絡み合っているのだろう。巌(いわお)のようなボディ、そして低く唸るV6ツインターボのすごみをひしひしと感じながらも、これを緊張感なしに走らせられる喜びは、オーナーであれば「高い金を払ってよかった!」と思える瞬間だと思う。標準モデルのGT-Rは、この“すごみ”と“快適性”のバランスが非常によい。

 

惜しむらくはせっかくサスペンションをしなやかに縮ませても、専用タイヤ(ダンロップ SP SPORT MAXX GT600)が小刻みな横揺れを起こしてしまうことだろうか。このタイヤは剛性が高い上に、ショルダーからサイドウォールにかけての形状がスクエアだから、路面の凹凸や轍に対して敏感に反応してしまう。どうやら「nismo」だとタイヤがラウンドショルダータイプになるようだが、標準車こそこうした配慮を取った方が良かったのかも知れない。

12年前のモデルとは思えないほどの高いボディ剛性

またこうしたモデルにこそ、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を機軸とした先進安全装備が欲しかった。油圧式から電動パワステへのコンバートは容易でないのかもしれないが、サーキットのような然るべき場所へ着くまでの安全蔵置としてこれを装備するのは悪くないと思う。たとえ標準仕様のGT-Rが「ストリート」を意識したモデルだとしても。また今後も生き残る! という意思表示を見せるためにも、アイドリングストップ機能を搭載して欲しかった。

こうして普段使いに磨きをかけたMY20だが、その神髄は間違いなく「R」モードにある。コンソールのスイッチを押し上げて長押しすると、GT-Rは臨戦態勢に入る。ダンパーは引き締まり、重たいV6エンジンを積んだノーズが、これまでよりもずっと早いテンポでコーナーの内側へと入り込んで行く。

ブレーキに対してはノーズをじわりとダイブさせ、操舵に対しては穏やかなロールモーメントを起こす。そんなお手本のような挙動が一変して、一気に全てをネジ込む走りへと変貌するのである。さらに路面の起伏で跳ねたり、ピッチングが起こらないのも素晴らしい。高められた減衰力はしかし、突っ張ることなく荷重を受け止めている。これぞ基本となるボディ剛性の高さなのだと思う。

吸気漏れを抑制するというアブレダブルシールの効果は、正直わからなかった。匠の手によって組まれたエンジンはとにかく精緻に周り、2機掛けのターボは鋭く過給して怒濤のパワーを紡いで行く。むしろどこまでも伸び続けてしまいそうなパワーを諫めるために、シフトアップが必要だった。ただその速さを落ち着いて制御し、操縦できたことこそが、エンジンの洗練であり、シフト制御を先鋭化した恩恵だったのかもしれない。570PS/637Nmというパワー&トルクは最新の911ターボ(540PS)を上回る数値であり、これに古さなどは微塵も感じられない。

比較次いでに言えば911ターボや、同じセダン形状で言えばメルセデス C63AMGの洗練されきった身のこなしと比較して、Rモードに入ったGT-Rは粗野で荒々しい。フロントにドライブシャフトを通す関係から明らかに高まった重心を、上から抑え込むようにシャシーがねじ伏せる。センターパネルのデジタルメーターを見れば、フロントには常に微弱なトルクが掛かっている。そのことからも分かる通りハンドリングは弱アンダーステアが基本だが、だからこそGT-Rは“踏める”クルマになっている。

たとえば6速のデュアルクラッチは、もう少しだけ細かくクロスレシオ化した多段化が望ましい。今の安定性を確保したまま、さらにこれを曲げて行くディファレンシャルや4輪制御技術があれば、さらに素晴らしい。こうした進化は、次期型にキャリーオーバーされるべき内容なのかもしれない。

明らかに、無骨。

しかしその味わいは、決して価格差や年次の古さだけがもたらすものではないと感じる。スポーツカーに比べ、スポーツとはいえセダン然とした腰高感。広く開放的なキャビンがもたらす解放感にはミスマッチなほど強烈な加速力を与え、それを力でねじ伏せ安定させる不思議な高揚感こそが、GT-Rのキャラクターなのだと思う。

それが刹那の快楽であったとしても。こうしたGT-Rとしての本性を味わえる一瞬があることに、MY20の価値がある。だからこそ、普段の快適性が重要な意味を持つのだと思えた試乗だった。

GT-Rは、やっぱりニッポンの宝である。

【SPECIFICATION】日産GT-Rプレミアム・エディション

■全長×全幅×全高=4710×1895×1370mm
■ホイールベース=2780mm
■トレッド(前/後)=1590/1600mm
■車両重量=1770kg
■エンジン型式/種類=VR38DETT/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径/行径=95.5×88.4mm
■総排気量=3799cc
■最高出力=570s(419kw)/6800rpm
■最大トルク=637Nm(65.0kg-m)/3300-5800rpm
■燃料タンク容量=74L(プレミアム)
■トランスミッション形式=6速DCT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/40ZRF20(9.5J)、後285/35ZRF20(10.5J)
■車両本体価格(税込)=12,105,720円

フォト:望月浩彦(H.Mochizuki)
山田弘樹

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