清水和夫のDST

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・ファーストエディション vs ポルシェ・マカン 情熱のイタリアンSUVが、ベンチマークたるジャーマンSUVに挑む【清水和夫のDST】#96-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number96 SEASON.11:情熱のイタリアンSUVが、ベンチマークたるジャーマンSUVに挑む

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・ファーストエディション vs ポルシェ・マカン

前CEOセルジオ・マルキオンネの強い意思で復活を果たしたアルファ・ロメオのFRスポーツセダン、ジュリアのSUV版であるステルヴィオ。対するのはアウディQ5をベースに、ポルシェチューンによってスポーティさに磨きをかけた大人気のマカンだ。走りではマカンが一歩リード!? と予想していたが、意外なテスト結果が待っていた。

ウェルバランスなジャーマンSUVのマカン

ポルシェは911でスポーツカーの分野を牽引してきただけでなく、プレミアムSUVの世界を生み出したパイオニアでもある。その象徴がカイエンだが、コンパクトなマカンの人気も高く、昨今SUVのイメージも強い。

2モデルとも、フォルクスワーゲン・グループ内でプラットフォームを共有するが、ポルシェ独自の技術で他のブランドにはないスポーティな走行性能をストロングポイントにして、いまや会社を支える中心的なモデルに成長した。

アルファ・ロメオは、戦前フォーミュラ1で名を馳せたイタリアの名門自動車メーカーとしてレースとも深く関わってきた。いまだに熱狂的なファンから支持されるブランドとしても知られているが、亡きセルジオ・マルキオンネ氏(FCAグループの前CEO)の強いリーダーシップの元でFRプラットフォームの開発に着手し、悲願だったスポーツセダンのジュリアを世に送り出したのはご存知の通りだ。そして新時代のアルファ・ロメオは、世界でもっともホットなSUVとしてステルヴィオを誕生させたのだ。

イタリア車らしいホットなステルヴィオ

ステルヴィオに乗り込むと、エンジンスターターの位置と、ステアリングホイールとは独立したパドルシフトがフェラーリとまったく同じ位置にあることに気づく。フェラーリのオーナーが自然に乗れるという思想なのだろう。高速道路では本当に気持ち良く走れ、ジュリアと同じくクイックなギアレシオを持つステアフィールにはあまり遊びがない。このダイレクト感こそが最大の特徴である。

マカンはステルヴィオとは違って、ステアリングはクイックではないが、重い操作感と剛性感があり、塊のようにクルマ全体が動き、ステアリングのフィールとボディロールの動きが見事に一体化。911から貫かれているソリッド感が受け継がれている。

キャラクター的にはまったく異なる2台だが、両車の違いがさらに明確になったのがダブルレーンチェンジだ。素早いステアリング操作でクルマがどのくらい俊敏に動けるのか。そして、すぐに安定した状態に戻れるのか。一秒以内で生じる俊敏性と収斂性の挙動バランスが問われるテストで、ステルヴィオは素早く、マカンはバランスよくレーンチェンジ。マカンの方がより万人向きで、ステルヴィオの方がスポーティなのである。

時に天才的なクルマ作りをするアルファ・ロメオだが、テスト中に色々なアラートが間違って表示された。例えば「ウインドー・ウォッシャーが出ません!」だったり……。イタリア人は自分たちの好きな仕事は一生懸命突き詰めてやるけど、あまり気にしていない部分はルーズなのかもしれない。
世界中に生息するイタリア車好きが、その愛でダメな部分を許しているとしたらそれは大きな間違いで、品質は徹底的に改善してもらいたい。アルファ・ロメオを評価する時にいつまでも愛が必要では困ったものである。

オールラウンダーのマカン、熱き血が滾るステルヴィオ

新型が発表されたばかりのマカン。テスト車両はマイチェン前のモデルだったが、強敵ステルヴィオはスポーツブランドのSUV戦線に突如落ちた隕石のような衝撃を与えた。

BMW X3の独壇場だったセグメントに、マカンが殴り込み、今度はイタリアから刺客が送られたわけである。あらためて両車を分析してみると、マカンが乗り心地、高速安定性、ハンドリングに至るまで、オールラウンドで秀逸な走りを信条とするのに対し、ステルヴィオはレーシーで、正直その走りに血が騒いだ。結果としてタイヤの減り具合でマカンは敗れたが、性能は互角。結果は僅差でステルヴィオが上回った。

RESULT

俊敏性とエンジンパワーでステルヴィオが勝利
●ポルシェ・マカン:16.5/20点
●アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・ファーストエディション:17.5/20点
※通信簿は絶対評価なので比較した点数ではない

 

リポート:清水和夫/K.Shimizu フォト:篠原晃一/K.Shinohara ル・ボラン 2019年2月号より転載

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