あらゆる面でコスパが高いC3
スマート・フォーフォー・ブラバスは、独特のインパクトを持つルックスと走りっぷり、上手に演出された上質感を兼ね備えたモデルだ。ブランド違いだからちょっと妙な言い方だけど、まるで乗用車ベースで作られたメルセデスAMGモデルの最も小さいヤツみたいな印象、といえばいいか。かわいい系のスマート・フォーフォーをいかつい姿に仕立て上げたそのルックスは心の中の“男の子”な部分を掻き立ててくれるし、いかにもジャーマンチューンドカーっぽいガツンと締まった乗り味も気分を高めてくれる。実際、0.9Lとは思えないぐらいに速いし、結構楽しい。フットワークも悪くない。各部にレザーをあしらうインテリアのトーンもあって、小さなGTカーのような感じを受ける。なかなか上々なのだ。が、それだけに価格は318万円。価値観を見出せる人にはいいけれど。
フィアット500Xは、ルーツであるチンクエチェントの持っていた独自の明るい世界観と走らせる楽しさを、コンパクトSUVに落とし込んだモデルだ。本能的に親しみを感じちゃうようななごみ系のキャラクターは唯一無二。新しい1.3Lエンジンの爽快なフィール、それに違和感ひとつなくスポーティなフットワークは、週末に運転手を務めるパパ(かママ)が最も楽しめるクルマであることを示している。いろんな意味で、気分がとにかく上がるのだ。そのぶん乗り味も躍動感に満ちた感じだから物静かな気分にはちょっとなれないけど、何だかやたらとエネルギッシュな気分にはなれる。典型的なイタリアン! なのだ。298万円からという価格は、車格が実際のところは半分ぐらい上であることを考えれば、まぁ妥当というところだろう。
それでは今回の主役、シトロエンC3はどうなのか。まずはナンバーワンよりオンリーワンを重んじるフランスならではの、特徴的なスタイリングだ。視覚的な優劣や好嫌は見る人の心に宿るものだから語るつもりはないけれど、これが多くの人の目を惹き付けているのは間違いない。そして柔軟にして密度感のある、極上の乗り心地だ。これほど快適なコンパクトカーは他にない。その2点だけで、C3を選ぶ価値は充分にある。その上ポロ並みの実用性はあるし、スマート・ブラバスとは正反対ながらインパクトと上質感はあるし、500Xと別種ながら“シトロエン”というブランドそのものといえる世界観を強力に薫らせてもいる。意外や速さもあるし、マジカルだけどハンドリングも悪くない。見た目に惑わされがちだけど、1台の乗用車としての出来映えは相当にいいのだ。222万円からという価格でここまで満足感の高いクルマは、そうはないとすら思う。実はシトロエンって、昔から脈々とそういうクルマばかり作り続けてきてたブランドなのだけど……。全てのシトロエンがそうなのだけど、一般的にはメジャーとはいえないながら、反面、その味にはひとたび知ってしまうと驚異的に後を引く恐ろしい成分が含まれていて、ずっと乗り続けたい気にさせられるか、降りてしまったとしてもそれから常に気になる存在であり続ける症状に苛まれる、というようなところがある。このC3が日本におけるシトロエンの世界をドラスティックに変えていくことになるのかどうか、楽しみだ。