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【比較試乗】「VWアルテオン TSI 4モーション エレガンスvsアウディA5スポーツバック45 TFSI クワトロ スポーツ」アルテオンはデザイン良し、パッケージング良し、パフォーマンス良し!

上品さと押しの強さが共存するアルテオンは、戦略的な価格設定の上、最大限に総合力が高められた

「アルテオンが予想以上に売れている」。そんな話を耳にしたからか、このところ街で頻繁に見かける気がする。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンの広報部に尋ねてみると、「予想の2倍売れているんですよ!」と喜びの声。はたして、その理由は何なのか? ライバル、アウディA5との比較試乗と、アルテオン商品企画担当者への取材で明らかにしたい。

フォルクスワーゲンのアルテオンが売れている。日本市場では、2017年秋の導入以来、伝統のブランドであるパサートを超えるヒットを続けているというのだ。
そこで今回は、アルテオンと競合モデルに挙げられるアウディA5スポーツバックの2台を用意して、アルテオン快進撃の秘密を探ってみた。
テストカーは、昨秋に追加設定されたアルテオンTSI 4モーション・エレガンスで、A5スポーツバックは45TFSIクワトロ・スポーツをチョイス。どちらも2?直4ターボを搭載した4WDの4ドアクーペ(正確には5ドア・ハッチバック)である。

優等生だが地味というフォルクスワーゲンのイメージを吹っ切ったアルテオン。セダンとクーペを融合させたフォルムは流麗で、直線的なキャラクターラインが全周をぐるりとまわる。

アルテオンの2L直4ターボは、最高出力280ps、最大トルク350Nmと、かなりのハイスペックである。本国ドイツには1.5L直4ターボや数種類のディーゼルなども設定されているが、日本仕様はガソリンの上級ユニット1本に絞り、日本におけるフォルクスワーゲンブランドのフラッグシップとして明確なキャラクターを打ち出している。
一方のA5スポーツバックは、前輪駆動モデルには190ps仕様が搭載されるが、今回の45TFSIクワトロ・スポーツには252psと370Nmを発揮する2L直4ターボが搭載される。ピークパワーはアルテオンに軍配が上がるが、マックストルクはA5スポーツバックが上回る。トランスミッションは、アルテオンが7速DSG、A5スポーツバックは7速Sトロニックで、どちらも湿式のDCTである。

上品さと押しの強さが共存するアルテオン

2台を並べてみて、より強い存在感を放つのはアルテオンだ。今回のテストカーは、スタイリングが若干控え目なエレガンスだが、やはり横長のルーバーを備えた大開口のグリルから左右のヘッドライトに繋がる、横方向の広がりをこれでもかと強調したフロントマスクのインパクトは大きい。ボディサイズも全長4865mm、全幅1875mm、全高1435mmと、A5スポーツバックよりもひとまわり大きく、20インチの大径タイヤ&アルミホイールを履くこともあって、佇まい自体に迫力がある。
対するA5スポーツバックは、アルテオンに押し出しでは負けるが、プレミアムカーらしく洗練されたデザインを纏う。低く長いボンネットから強く傾斜したフロントウインドー、滑らかなカーブを描いてリアエンドまで伸びるルーフラインが生み出すフォルムは、アルテオンより明らかにクーペらしくエレガントだ。インテリアも、A5スポーツバックの方がやはり質感は高い。アルミパネルやレザーを多用したインパネまわりや、各種操作系のタッチなどは、さすがに車両本体価格が675万円(消費税込み)とアルテオンより76万円も高いだけはある。

AUDI A5 SPORTBACK 45 TFSI QUATTRO SPORT/クーペ風4ドア市場を築いた名手。アルテオンとの76万円の価格差は、シートに座れば納得。成熟度や完成度はA5の方が一枚上手だ。荷室容量は通常時で480L。

だがアルテオンも、フォルクスワーゲン・ブランドの他のモデルと部品を共用化しながら、レザーシートやレザーシフトセレクター、ウッドパネルなどが奢られていて、十分に上質な空間に仕立てられている。特筆すべきは室内空間の広さだ。A5スポーツバックもDセグメントの4ドアクーペとして標準レベル以上のスペースを確保し、リアパッセンジャースペースも十分に実用的な広さを備えているが、アルテオンの広さはA5スポーツバックの比ではない。
エンジンを縦置きするA5スポーツバックに対して、横置きであることから、よりキャブフォワードなパッケージングが可能なアルテオンは、タンデムディスタンス(前後シートのヒップポイント間の距離)が、このクラスの4ドアクーペとしては異例に長く、後席は身長180cmの大柄な男性が座っても、余裕で脚が組めるほど広々としているのである。ヘッドクリアランスも、A5スポーツバックより余裕があり、クーペフォルムであることを忘れてしまうほど。ラゲッジ容量も通常時で563Lもあり、4人乗車でゴルフバッグ4つを問題なく積めるのだ。

VOLKSWAGEN ARTEON TSI 4MOTION ELEGANCE/フラッグシップでありながら実用性は非常に高く、荷室容量は563Lから1557Lまで広大。横置きエンジン最大のメリットは、後席のニースペースの広さに活かされている。

走りの質感も高い実力を備えている。パワフルなエンジンと先進的な4WDシステム、MQBプラットフォーム採用による高剛性ボディ、そして15段階もの減衰力調整が可能なサスペンションが生み出す走りは、とても力強くダイナミックでありながら、乗り心地はフラットでとても快適だ。2017年に本国でデビューした当時は、スポーツモードを選ぶとゴツゴツとした印象を受けたが、最新バージョンではそんなことはなく、明らかに改善されている。
A5スポーツバックもやはり上質感に溢れた走りを披露するが、アルテオンに対する80万円近くの価格差が納得できるレベルかというと、判断が分かれるところだ。先進的な運転支援システムなど装備の充実度も、アルテオンは全く引けを取らないだけに、バリュー・フォー・マネーの点でも魅力的な1台であることは間違いない。

AUDI A5 SPORTBACK 45 TFSI QUATTRO SPORT

アルテオンと比べるとパワーは小さいがトルクは大きい。2Lターボと7速DCTを組み合わせ、3000rpmあたりから2Lとは思えないほどのパワーを感じることができた。

【Specification】

■全長×全幅×全高=4750×1845×1390mm
■ホイールベース=2825mm
■車両重量=1610kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1984cc
■最高出力=252ps(185kW)/5000-6000rpm
■最大トルク=370Nm(37.7kg-m)/1600-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ウィッシュボーン:ウィッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=245/40R18:245/40R18
■車両本体価格(税込)=6,750,000円
■問い合わせ=アウディジャパン 0120-598-106

VOLKSWAGEN ARTEON TSI 4MOTION ELEGANCE

駆動方式は4WDでパワートレインは280psを発揮する2Lターボを搭載。サスペンションは可変ダンパーが採用され、インディビジュアルの設定で硬さを15段階調整できる。

【Specification】

■全長×全幅×全高=4865×1875×1435mm
■ホイールベース=2835mm
■車両重量=1700kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1984cc
■最高出力=280ps(206kW)/5600-6500rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1700-5600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=マクファーソンストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=245/35R20:245/35R20
■車両本体価格(税込)=5,990,000円
■問い合わせ=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 0120-993-199

【Interview】エクステリアデザインが新しいフォルクスワーゲンを象徴し、多くのカスタマーを惹きつけた

フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 営業本部 商品企画課 プロダクトプランナー 野中彦一郎氏

フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 営業本部 商品企画課 プロダクトマネージャー 沢村武史氏

フォルクスワーゲン・ブランドとしては異例なほどにインパクトのあるデザインを纏うアルテオンは、導入当初の見込みより2倍の勢いで売れているという。この人気の秘密をインポーターのエキスパートに尋ねてみた。

「2017年の東京モーターショーで国内導入が発表された時は、市場やユーザーの方からとても大きな反響をいただきました。“フォルクスワーゲンにこんなクルマがあるのか!”と。それまでショールームに足を運んでいただけなかった方にも来ていただけるようになりました。新しいフォルクスワーゲンを象徴するモデルになったと思います」(沢村さん)

アルテオン購入の決め手になっているのは、やはりそのルックスなのだろうか?

「そうですね。やはり洗練されたデザインが気に入って購入される方が最も多いです。280psの2.0TSIや4モーションによる高いパフォーマンスも大きな決め手になっています。ですが購入後には実用性の高さにも皆さん驚かれるんです」(野中さん)

戦略的な価格も後押ししているのでは?

「同等スペックの競合他車は600万円台後半から700万円台ですが、アルテオンは549万円~と当社らしいバリューを感じていただける価格にこだわりました。先進技術も含めて装備内容は基本的に“全部載せ”で、妥協なく盛り込んだクルマになっています」(沢村さん)

昨秋には新たにエレガンスも追加されたアルテオンは、日本における同社のフラッグシップとして、大きな存在感を放っている。

沢村さんいわく「国産メーカーのセダンから乗り替えられる方も少なくありません。価格や絞り込んだグレード設定などが、本当に上手くバランスした結果だと思います」。

フォト:篠原晃一/K.Shinohara フォト:勝村大輔/D.Katsumura ル・ボラン2019年8月号より転載

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