アウディ

【国内試乗】「AUDI Q8」満を持してSUVに与えたフラッグシップコード“8”

Q7を超える存在として新たなフラッグシップモデルとなるのが「Q8」

さっそくドライブすると、その走りにも最新のアウディらしさが感じ取れる仕上がりになっている。Q8 55 TFSIクワトロには、過給器付きの3LV6エンジンが搭載されている。同じ3LでもQ7がスーパーチャージャーで過給するのに対して、Q8ではターボチャージャーを用いる最新エンジンを採用。最高出力が340ps、最大トルクが500Nmと、Q7のアウトプットをそれぞれ6ps、60Nm上回るのだ。それだけに、車両重量が2200kgに達するQ8に対しても余裕あるパフォーマンスを発揮し、1500rpm手前あたりの低回転域から豊かなトルクを絞り出してくれる。一方、アクセルペダルを大きく踏み込んだときの加速も爽快で、3500rpmを超えたあたりからさらに力強さを増し、レブリミットの6500rpmまで勢いは衰えない。

一方、スーパーチャージャーに対して、低回転域の反応の鈍さ、すなわちターボラグを心配していたが、このQ8ではアクセルに対するレスポンスが良く、街中でも気持ちの良い運転ができた。Q8には、48V電源システムに加えて、リチウムイオンバッテリーとベルト駆動式オルタネータースターターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムが採用されているが、加速時にこのモーターがエンジンをアシストしているようで、それが低回転域でのターボラグを補っているようなのだ。

コクピットは新型A6と共通の仕様で、上下二段のMMIタッチレスポンスを採用。

もちろん、マイルドハイブリッドシステム本来の機能が燃費の向上に加えて、さまざまなメリットをもたらしている。たとえば、アイドリングストップ時でもエアコンが効くし、エンジンの再始動も軽い。高速走行時にアクセルをオフにすると、短時間だがエンジンが完全にストップするなど、これまでのアイドリングストップ機構とは一線を画する快適さがうれしいところだ。

試乗車にはアダプティブエアサスペンションが装着され、走行状況に合わせて車高を最大+50mmから65mmの115mmの範囲で調節が可能。

試乗車はよりスポーティなSラインで、アダプティブエアサスペンションスポーツを標準装備。さらに、285/40R22という見た目にもアグレッシブなサイズのタイヤが装着されていた。しかし、その乗り心地は22インチとは思えないほどマイルドなもので、常用するオートモードで使用する限りは十分快適である。高速道路でも落ち着いた動きを見せる。

ラゲッジスペース容量は、通常時で605L。40:20:40分割可倒式リアシートを畳めば、1755Lまで拡張できる。

感心したのは、オプション装備として選択されていた4輪操舵のオールホイールステアリング。低速では前後ホイールを逆位相に動かしてクイックな動きに、反対に高速では前後ホイールを同位相に動かして安定性を増すというもの。その効果は偉大で、大きな車体であっても意外なほどにも狭い道で切り返しせずにUターンができるほど回転半径が小さいし、一方、高速ではレーンチェンジの安定感が高く、その際のロールもしっかりと抑えられるため、運転し始めると、大きなSUVであることを忘れてしまうほどだ。

Q7より30mm低い全高だが、ほどよいクーペライクなルーフラインのため、後席には十分な居住空間が確保されている。

もともとサイズに余裕があるQ8だけに、後席は大人が座っても十分過ぎるほどのゆとりがあるし、ラゲッジスペースも、少なくとも私には広すぎるくらいだ。ドイツ本国ではQ7がマイナーチェンジし、このQ8とほぼ同じ内容にバージョンアップしている。そうなると、クーペスタイルのQ8と、3列シートが用意されるQ7という2つの選択肢から、ライフスタイルにあった一台を選べば良いが、よりスタイリッシュなQ8に惹かれるのは私だけだろうか?

リポート=生方 聡/S.Ubukata フォト=郡 大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年9月号より転載
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