AIによるオンライン音声認識機能、「MBUX」が昨今の大きなトピックと言えるが、米国のバッテリー関連のベンチャー企業への出資などから、次世代EVブランド「EQ」への注力もうかがわせるメルセデス・ベンツ。今回はアッパーミドルSUVのGLEが次世代へと生まれ変わり、公道を走らせる機会を得た。3列目シートがデフォルトとなったGLEは、ファミリーSUVにして、もっとも上質な仕上がりと言えるだろう!
走りもインテリアも全方位にアップデート
強面だったGLEが柔和な顔つきになったというのが初対面の印象だ。CLSに始まったエッジやプレスラインを減らして面を強調する新世代のデザインが、SUVにも降りてきたというわけだ。
GLEはいわゆるプレミアムSUVの先駆者的存在である。1998年にMクラスとして登場。2015年にGLEへとモデル名を変更し、この新型は2代目となる。
国内仕様のラインナップは、GLEとして初の4気筒ディーゼルエンジンを搭載した「300d4マチック」、直列6気筒ディーゼル搭載の「400d4マチック・スポーツ」、そして今回試乗用に用意された直列6気筒ガソリンエンジンとISGを搭載した4504マチック・スポーツの3種だ。
新型のハイライトは3列7人乗り仕様になったこと。本国では5人乗り仕様もあるようだが、日本では7人乗りが標準となる。メルセデスはこれまでGLSに7人乗り仕様を設定していたが、いま世界的に7人乗りSUVの需要が高まっているようで、それではGLEにもという話のようだ。
先代比でホイールベースを80mm延長したことで、居住性を改善し3列仕様を実現している。2列目シートは世界初という6ウェイのパワーシートで、背面の角度調整はもちろん約100mmの前後スライドが可能。3列目に乗り込む際に前方に倒すのも電動式になっている。がっしりとした作りで重いシートゆえ、女性や子供でも操作しやすい配慮だ。3列目シートは2列目シートと融通し合えば約180cmの大人でも普通に座れる広さが確保されている。
インテリアは、12.3インチの液晶メーターと12.3インチのディスプレイが一連のものとして眼前に並ぶ。センターコンソールにはSUV特有の装備としてグラブハンドルが備わる。エアベントは近年のメルセデスではそのほとんどがオーバル形状であるのに対して、四角いデザインとなっている。これは標準モデルのフロントグリルに採用されているルーバーのデザインをモチーフにしたものという(試乗車はAMGライン仕様のマスクのためデザインが異なる)。マットな質感のウッドパネルをセンターコンソールからドアに至るまで広く配し、シート座面やドアハンドルに白のレザーを採用するなど、およそ泥んこになることは想定されていないかのようなラグジャリーカーの装いだ。また“ハイ、メルセデス”でお馴染みの対話型インフォテイメントシステムMBUXを搭載。ひとりでのドライブの際に色々話かけてみると眠気覚ましにもなって楽しい。
Sクラス譲りの3L直6ガソリン+ISGのスムーズさは、GLEでももちろん健在。わずか1600rpmから500Nmものトルクを発揮するだけあって力強く加速し、そのまま直6らしく高回転域まで軽く吹け上がる。組み合わせるトランスミッションは9速ATで、450には電子制御多板クラッチ式で前後100〜0%から0〜100%の範囲でトルク配分を行なう新開発の4マチックを搭載する。このパワートレインは出色の出来といえるものだ。
足回りはエアサスペンションを標準装備しており、当たりは柔らかい。コンフォートモードからスポーツモードへ切り替えても過度にかたくなることはなく適度にハーシュネスが抑えられている。また、このエアサス仕様は、荷物の積み下ろしをする際にラゲッジルームにあるスイッチで車高を約40mm下げることも可能だ。
ハンドリングは大柄のSUVだけにアジリティを強調したものではないが、かといってダルな印象もない。極めて素直で正確に操舵に対して反応するメルセデスらしいものだ。安全運転支援システムもSクラス譲りの充実ぶり。全方位での正常進化というわけだ。