ドイツ的上質かつ高性能なスポーツサルーンの萌芽
1961年のフランクフルト・ショーにてデビューした4ドアリムジーネ「1500」に端を発する、一連のBMW「ノイエ・クラッセ」シリーズは、現代の5シリーズに相当するアッパーミドルセダン。BMWの技術的な方向性を決定づけるような最新技術が早くも大量投入されていたが、中でも注目すべきは軽合金製のSOHCヘッドを持つ水冷直列4気筒ユニットと、4輪独立懸架のサスペンション。ともに世界中のセダンに絶大な影響を与えることになった。
この優れた基本構成をコンパクトなボディに合わせれば、最上のスポーツサルーンとなる。そんな市場の要望に応えるかたちで1966年に登場する2ドアセダンが「1600-2」だ。ホイールベースはもちろん全長、全幅ともに縮小され、現代の3シリーズの源流となるこちらも、BMW首脳陣の期待に違わず大きなヒットを博すことになる。
一方この時期のノイエ・クラッセには、最上級/高性能版として1990ccまでスケールアップした「2000」が設定されていた。そしてこの高性能ユニットと、小型/軽量の2ドアボディが、すでに同じメーカーが有していれば、それを組み合わせるというアイデアは極めて自然なものと言うべきだろう。果たして1968年の1月には、BMWにとって、そして自動車史にとっても極めて重要なモデル「2002」が姿を現すのだ。
マーケットでの2002のヒットは非常に順当ながら、それはBMWの予想をも上回るものだった。そこで2002には、同時にデビューしたツインキャブの高性能版「ti」のほかにも、1971年からはカロッセリー・バウアー製のカブリオレや、リアに実用的なハッチゲートが装着された3ドアモデルのツーリング、そしてtiをベースにさらなる高性能を期してクーゲルフィッシャー製燃料噴射を装着した「tii」などの派出モデルが続々と追加されてゆく。
さらに、2002によるツーリングカーレース活動で獲得した経験、あるいは1972年に製作/発表され、のちの「M1」の起源になったとも言われるコンセプトカー「BMWターボ」の経験をフィードバックした市販モデルとして、現在では歴史的名作と称される「2002ターボ」が生み出されたのである。
エンジンはtii用ユニットをベースに、シェファー社製インジェクションとKKK社製ターボチャージャーとの組み合わせで170psを発生。専用のサスチューンやブレーキ強化も相まって、同時代の2.0L級スポーツセダンの常識を遥かに上回る高性能を獲得したものの、オイルショックなどの諸事情により、残念ながら短命に終わる。
しかし、現代の3シリーズにも継承されるスポーツイメージの源流として、2002ターボに代表される2002一族の功績は計り知れないものがあるのだ。