国内試乗

STIの補強アイテムで操舵レスポンスが大幅に向上したフォレスターとインプレッサ【ワークスチューニング合同試乗会】

ボディチューンとエアロダイナミクスでステアリング操作が最小限に

スーパーGT300クラス(BRZ)やニュルブルクリンク24時間耐久(WRX STI)といったスバルのモータースポーツ活動を支えるSTI(スバルテクニカインターナショナル)。しかし、STIが同社のノウハウをストリートにフィードバックする“ワークスチューニング”の好例として用意したデモカーはフォレスターとインプレッサスポーツだった。いずれもNAエンジンで、トランスミッションはCVTである。一見すると、スポーツドライビングとはほど遠いようにも思えるかもしれない。

とはいえ、どちらもスバルの最新アーキテクチャといえる「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」に基づいたモデルであり、STIがこの2台を用意したのはSGPに対して効果的なアイテムを開発したことのアピールのためだ。そしてSTIのコンセプトを理解するキーワードが『体幹チューニング』と『疲れにくいを実現するエアロパーツ』である。

まずは『体幹チューニング』から説明しよう。人間が体幹をトレーニングするようにクルマの体幹といえるプラットフォームを鍛えるパーツを装着しようというのが考え方の基本。ただし、鍛えるというのは無闇に補強パーツをプラスしてボディを硬くするという意味ではない。強靭かつしなやかであることを目指し、フレキシブルタワーバーやフレキシブルドロースティフナーといったボディの変形を適度に活かしつつ、必要な部分では踏ん張らせるというアイテムを生み出してきた。そうしたSTI流の考え方はニュルブルクリンク24時間耐久マシンにも採用されているもので、タイヤの接地を確保し、乗りやすさを向上させる。ストリートチューンとして見ると、ボディ全体をしなやかにすることで乗り心地も改善させる。

そして、STIの体幹ボディチューンとして新たなパーツが誕生した。それが「サポートフロントキット」と呼ばれるものだ。これはステアリングギアボックスとフロントロアアームのマウント部分といったサブフレーム周りの剛性を高めようというもの。形状としては純正のステアリングギアボックスマウントステーと似たもので、材質も同じハイテン鋼というが、フランジを立てることでステー自体の剛性を上げている。さらにノーマルにはないステーを追加することでロアアームの付け根部分の変形を抑えている。結果としてステアリングフィールを大きく改善することに成功した。

実際に、ツインリンクもてぎ北ショートコースでボディ補強アイテムの有無で比較することができたが、サポートフロントキットなどを装着するとコーナー進入時のステアリング操作が指一本ほど少なくなっていることに気付く。さらに操作からクルマの反応までの時間も変わっているので、ノーマルのクルマに対して走らせ方まで変わってくるほどだ。そうした点について開発エンジニアの方に尋ねると、ノーマルに対してステアリング操作からヨーが発生するまでの時間で17%短縮、Gが出るまでの時間では14%短縮を実現しているという。サスペンションはノーマルのまま、ボディチューニングを施すだけでライン取りから変わってしまうのもおかしくないほどの変化だ。

さて、もうひとつの『疲れにくいを実現するエアロパーツ』については最小限のアイテムで整流効果とダウンフォースを生み出すことがテーマとなっている。空気の乱れを抑えることで、クルマがフワフワとなる感覚を抑え、空力によって安定感を増す。すなわち、外乱が多いシチュエーションにおいて修正舵が減ることが期待できる。実際、STIの社内テストでは修正舵の舵角が58%減、ステアリングを操作する力は26%も減少したという。

こうしたエアロダイナミクスはモータースポーツでは確実で安定したラップタイムにつながり、ストリートでは運転のストレスを減らし、リラックスした気分につなげる。さらに『体幹チューニング』との相乗効果により、運転が上手くなった気になれる上に、実際に運転が上手くなる方向にクルマが導いてくれる。ユーザーのスキルアップまで考慮しているのが、STIのワークスチューニングというわけだ。

問い合わせ先=スバルテクニカインターナショナル http://www.sti.jp

フォト:石原 康(Y.Ishihara)
山本晋也

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