
モータースポーツ直系のアウディスポーツが仕立てた最新モデルが4ドアクーペの頂点に立つRS7スポーツバック。そのハイチューンぶりは写真を見ればご覧のとおり。鍛え抜いた高性能を隠そうともしない。ライバルはズバリ、発表間もないBMW M5グランクーペで決まりだ!
フレキシブルな高性能こそアウディスポーツの真骨頂
アウディの4ドアクーペ・シリーズにおけるハイエンドモデル、RS7が6年ぶりにフルモデルチェンジを受けた。チーフデザイナーのマーク・リヒテが「これまでのデザインで最高傑作、自分自身も注文をした!」と自画自賛するほど、たしかに強く美しいデザインといえる。フロント中央のシングルフレームグリルと左右の巨大なエアインテークは、背後にある高出力V8エンジンの存在を暗示。また、左右にそれぞれ20mmずつ張り出したオーバーフェンダー、リアのディフューザー両端から突き出たオーバルのエキゾーストエンドなどが、その存在感を臆することなく表現している。
インテリアは3つのディスプレイからなるアウディの最新フルデジタルMMIで、センターコンソールのそれはタッチスクリーン式。マルチファンクションスポーツステアリングはグリップ部分がアルカンターラで感触も素晴らしい。
V8ツインターボの排気量は4Lで、最高出力600ps、最大トルク800Nmを発揮。8速ティプトロニックを介しての0→100km/hは3.6秒で、最高速度は250km/hに自主規制されるが、オプションで280km/h、あるいは305km/hまで引き上げることが可能だ。
まさにアウディスポーツの真骨頂
試乗会はフランクフルト空港を起点にアウトバーン5号線を50kmほど南下、ハイデルベルグ東方の丘陵地帯で行われた。この5号線は片側4車線の直線路が24kmも続き、戦前には自動車による世界記録を達成するのに格好の場所であった。かつてアウトウニオンは1938年1月28日にタイプRで挑戦したが、残念ながらドライバーのベルント・ローゼマイヤーは429km/hで横風を受け横転、事故死してしまった。ちなみに、現在はレストエリアとなって記念碑が立ち、いまなお多くの人が伝説のドライバーを偲んで立ち寄っている。
さて、現代のRS7は、その速度無制限のセクションを300km/h近い速度でもきわめて安定した姿勢で突き進む。もちろん、この速度になるとオプションのエアサスが車高を10mm落とし、高速レーンチェンジもクワトロ+リアアクスルステアのおかげで躊躇なくこなせる。制動性能も盤石のひと言で、オプションのセラミックブレーキは踏力に応じて2トン近い4ドアクーペの車速を自在にコントロールしてみせる。
一方、一般道では48Vマイルドハイブリッドシステムのおかげで、快適かつ経済的なドライブが楽しめる。55km/hから160km/hの間で条件が整えばエンジンは停止、コースティング走行に入る。さらに負荷が一定以下になるとリンダーオンディマンド(気筒休止システム)で2、3、5、8番シリンダーのバルブが閉じて4気筒走行を開始。さらに赤信号などで22km/h以下になるとエンジンは休止する。これらの作動はごく自然に行われるので、ドライバーはメーター内の表示を見なければまず気付かないはずだ。結果として、日常のドライブでは最大で100kmあたり0.8Lのガソリンを節約することができる。
もちろん、ワインディングに入れば、最大で80%のトルクを後輪に送るクワトロにより、全長5mオーバーのサイズを忘れるほど軽快なステップを踏んでコーナーを駆けぬけていくこの万能さ。まさにアウディスポーツの真骨頂、ここにありである。
【Specification】AUDI RS7 SPORTBACK/アウディ RS7スポーツバック
■全長×全幅×全高=5009×1950×1424mm
■ホイールベース=2930mm
■トレッド(前/後)=1668/1650mm
■車両重量=2065kg
■エンジン種類=V8DOHC48V+ツインターボ
■内径×行程=86.0×86.0mm
■総排気量=3996cc
■圧縮比=10.0
■最高出力=600ps(441kW)/6000-6250rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2050-4500rpm
■燃料タンク容量=73L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前5リンク/コイル、後5リンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後275/35R21(10.5J)