自動車型録美術館

フィアット126/日本の軽規格にも収まる小さな実用車【自動車型録美術館】第32回

FIAT 126/フィアット126

これまで高性能車を中心に趣味のクルマをとりあげることの多かった本稿ですが、今回は少し趣が異なります。

イタリアの普通のクルマ

まずはフィアット126について簡単に。フィアット126はフィアット500の後継車として1972年に登場しました。サイズは全長が3054mm、全幅1378mmと実にコンパクトで、日本の軽規格に収まっています。

エンジンも594cc、652cc、そして702ccの空冷直列2気筒三種類で、702ccのモデルを除き、現在の日本であれば軽自動車として扱われるモデルなのです。

126のカタログ

フィアット126を軽自動車と考えると、カタログに感激します。大判の力作で、とても軽自動車のものとは思えません。しかも、グラフィックデザインが実に秀逸で、わたしの大好きなカタログのひとつです。

日本でいえば軽自動車にあたる、バリバリの実用車にこのようなカタログを用意する。イタリアとは何と豊かな国なのだろう。このカタログを眺めるたびに、そんな思いを深くします。

フィアット126には、無背景で迫るこのカタログのほか、美しい風景のなかにフィアット126が溶け込んでいる、まるで写真集のような出来のカタログも存在しています。

フィアット126のように道具としての位置付けが明瞭なクルマにも、単なる道具としてだけでなく、どこか情緒的な意味合いも持たせる。カタログからは、そのような意志が感じられます。

軽規格に収まる小さなクルマは規格外の大きなカタログです

小さな実用車のカタログとして、まずはそのサイズに驚かされます。縦が330mm、横244mmは当時のカタログのなかで大きな部類に属します。しかも、上質な紙を活かしたグラフィックには、いつまでも色褪せない魅力を感じます。

カタログは本来情報伝達のツールのひとつですが、フィアット126のこのカタログを眺めていると、情緒価値の重要さを痛感します。大きな判型を活かす色彩と構成で126の可憐さを際立たせた、実にイタリアらしいカタログだと思います。

ここでモデルカーの話を少しだけ。126の先代にあたるフィアット500には、リバロッシがつくり、その後リバロッシを買収したポケール社が型を引き取って製造を続けた、1/13の傑作モデルが存在します。

フィアット500のモデルとしては、このリバロッシ・ポケールの製品が最も雰囲気をよく伝えていると思っているのですが、ポケールは同じ1/13のスケールでフィアット126もつくっているのです。ミニカーの類が少ない126ですが、断然ポケール製が一押しの一台です。

●サイズ(縦×横)330mm×244mm● 全24ページ

 

Text:板谷熊太郎 /Kumataro ITAYA カー・マガジン484号(2018年10月号)より転載

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