スピードやハンドリング性能は、今やスポーツカーやホットハッチだけの専売特許ではない。SUVはその大きな体躯を活かせば大型プラントを積み込め、最新システムや制御を“全部乗せ”できる。これこそ高性能SUV、最大のメリットだ。
SUVであることを忘れそうな走行性能
ハイパフォーマンスSUVは欧米ではステイタスシンボルとして人気が高く、今や多くのプレミアムブランドがラインアップをする。ドイツでは有能なビジネスマンを引き抜く際の契約内容に、「カンパニーカーとしてX6Mを貸与する」なんて項目が入るほどだ。
今回はそんな超高性能SUVの中でもミドルサイズのモデルである、ジャガーFペイスSVRとBMW X3Mコンペティションという英独の2台を乗り比べてみた。
FペイスSVRは、2016年にデビューしたジャガー初のSUVであるFペイスを、ジャガー・ランドローバーのビスポーク部門「SVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」が手がけたトップパフォーマンスバージョン。一方X3Mコンペティションは、BMW M社がX3のポテンシャルを最大限に引き上げたMモデル、X3Mの、さらに過激な仕様だ。
どちらも全長と全高、ホイールベースはほぼ同じだが、全幅はFペイスが2071mmとX3Mより170mm以上ワイドである。車両重量もFペイスが2090kgと、X3Mより60kg重い。
エンジンは、Fペイスが550psと680Nmを発揮するスーパチャージャー付き5L V8で、X3Mは510psと600Nmを絞り出す新開発3L直6ツインターボ。トランスミッションはどちらも8速ATが組み合わされ、駆動方式は2台とも電子制御4WDだ。
パワーウェイトレシオはFペイスの方が良好だが、0→100km/h加速はX3Mが4.1秒とFペイスを0.2秒上回る。だがこの2台の間には、絶対的な速さより乗り味やキャラクターの違いの方がよっぽど大きく感じられる。
Fペイスの加速はとにかく豪快だ。8Lくらいの自然吸気V8のような溢れ出るトルクが、大柄なボディを軽々と加速させる。シャシーも引き締められてはいるが、ゴツゴツとした感じよりしなやかさが際立ち、身のこなしは俊敏で軽快だ。シルエットはSUVだが、その走りは伝統あるジャガーのスポーツカーの延長線上にあることがはっきりと判る仕上がりなのだ。