今年のル・マン24時間レースウィークに発表されたA110の「S」。ベースモデルが、すでにその卓越したハンドリングと軽快なフットワークでスポーツドライビング派から絶賛されるなか、あえて高性能版と位置付ける「S」の投入には、一体どんな意味が込められているのか。第一報をお届けしよう。
ストイックに走りを突き詰めたい方へ
東京モーターショーでのジャパンプレミアを見届けたあと羽田に向かい、そのままポルトガルへ。エストリルサーキットと、その周辺の一般道を舞台に、アルピーヌA110Sを存分に試してきた。
1.8L 4気筒ターボを292psに増強してミッドシップマウント。フロントのボンネット下に96L、リアのトランクに100Lの収納スペースが備わる。
ピュア、リネージが一般道での楽しさを志向しているのに対して、A110Sはトラックユースを念頭にハンドリングの正確さ、そしてコーナリングスピードの高さを最優先としたという。とは言ってもハードコアなサーキット仕様というわけではなく、軸足をこちらに移した程度と考えるのが正解だろう。開発陣は日常域の扱いやすさ、気持ちよさは犠牲にはしていないと強調する。
サーキット専用スペックではないが、やはり追い込んだ時の限界性能はSの方が明らかに上。 0→100km/h加速はベースの4.5秒に対して4.4秒、最高速度は260km/h。
ミッドマウントされる1.8Lターボエンジンは、0.4barのブースト圧向上により最高出力を40ps増しの292psに高めている。シャシーは、前後とも10mmずつ太く、専用の構造とコンパウンドを持つミシュランPS4を履くのに合わせて、前後のスプリングを約50%、アンチロールバーを100%レートアップ。ハイドロリック・コンプレッション・ストップを用いたダンパーの減衰力も引き上げられ、ESCは特にトラックモードの制御が見直されている。
ドライバーオリエンテッドなコクピット回り。ステアリングの12時マーカーはS専用のオレンジに。