「技術による先進」をスローガンとして打ち出すアウディだけに、そのフラッグシップたるA8は、世代交代を重ねるたびに初採用となる最先端テクノロジーに注目が集まってきた。ここで取り上げるのは、いよいよオプションで選べるようになったプレディクティブアクティブサスペンション。その異次元感覚ともいえるライドフィールをお伝えしよう。
最新のフラッグシップはハイテクショーケース
2018年9月に日本上陸を果たしたアウディのフラッグシップ、A8に新たなオプション装備が加わった。“プレディクティブアクティブサスペンション”は、いわゆるフルアクティブサスペンションのことである。そもそもアクティブサスペンションとはばね定数とダンパーの減衰力を状況に応じて瞬時に変化できるのが特徴で、大きく分けて油圧式と電動式が存在するが、A8は電動式を採用してる。電動式のメリットは油圧式よりも応答が早い点にあるのだが、それを可能にしたのは、A8のマイルドハイブリッドシステムに組み合わされている48V電源である。
電動式のプレディクティブアクティブサスペンションは、この48V電源を使用する。4輪にそれぞれひとつずつアクチュエータが装備されており、アクチュエータ(電気モーター)に電気が流れるとベルト駆動でトーションバーをねじってばね定数や車高を変化させる。ばね定数と車高調整ならエアサスでもできるが、電動式のこのシステムのほうが反応時間は格段に早いという。例えば25km/h以上で走行中に側突の危険を察知すると、わずか0.5秒で衝突する側のボディを最大8cm持ち上げて、強度のあるサイドシルで衝撃を受け止める。こうしたレスポンスは電動式でないと実現できない。
乗り心地は異次元感覚ともいえるフラットライド
プレディクティブアクティブサスペンションの最大の特徴は、受動的ではなく能動的に制御できる点にある。アクティブサスを含む通常のサスペンションは、路面からの入力があった後にばねとダンパーで振動を吸収するが、これだと最初の入力に対する応答はどうしても一瞬遅れてしまう。プレディクティブアクティブサスペンションは、レーザースキャナーやカメラを用いて前方の路面状況をモニターして、あらかじめ最適な接地圧を算定し、減衰力を整えるので、一発目の入力からばね上の動きを可能な限りフラットな状態に保てるのだ。
プレディクティブアクティブサスペンションの作動状況はモニターでも確認できる。フロントバンパー前面の赤いエリア表示は路面をモニターしていることを、4輪のダンパー部分の赤い表示はプレディクティブアクティブサスペンションの制御状況をそれぞれ表している。取扱説明書には夜間など条件によって作動しない場合もあると記されていたが、都内の夜の一般道や首都高では途切れることなく作動し続けた。
その乗り心地は異次元感覚ともいえる、まさしくフラットライドだった。ばね下の4輪が超高速で適切によく動いて路面からの入力を吸収し、ばね上のボディの動きを極小に抑え込んでいる。ドライブモードで「ショーファー」を選択すると“カーブチルト機能が”オンになり、コーナリング中にボディのイン側をわずかに下げて水平に近い旋回姿勢を作り上げる。当初、ドライバーは通常のコーナリングフォームと異なることにやや戸惑うかもしれないが、後席のパッセンジャーにとっては至極快適な乗り心地に違いない。

レーザースキャナーなどと連携するモーターにより4輪を制御、幅広い走行特性を実現するプレディクティブアクティブサスペンション。トップグレードでなくとも、こうしたハイテクがオプションで選べるのはA8ならではといえる。
レーザースキャナーを含む多くのセンサーを使った運転支援システムと48V電源は、今後相次いで導入されていくであろう次世代の技術である。このふたつが揃うことで可能になった“ロードセンシング式フルアクティブサスペンション”をいち早く導入した技術力こそ、いまのアウディの真骨頂といえるだろう。
【Specification】AUDI A8 55 TFSI QUATTRO
■全長×全幅×全高=5170×1945×1470mm
■ホイールベース=3000mm
■車両重量=2040kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ターボ/2994cc
■最高出力=340ps(250kW)/5000-6400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1370-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=255/45R19
■車両本体価格(税込)=11,720,000円
お問い合わせ
アウディジャパン 0120-598-106