ダイナミックな雲が湧く日本一高い国道峠
群馬県の草津温泉と長野県の中野市をつなぐ志賀草津道路は、日本の国道最高地点、標高2172mの渋峠を越えていく。これはクルマの通り抜けが可能な峠道の中では、長野/山梨県境を越える川上牧丘林道・大弛峠(標高2360m)に次ぐ2番目の高さである。
通称「のぞき」から眺める長野県側の雲海。ここは晴天時の展望もすばらしく、信州のサンセットポイント100選に選ばれている。
全長50kmにおよぶルートは実に変化に富んでいて、東麓の草津温泉側から走り始めると、まず現れるのが殺生河原。硫化水素ガスのため、一帯には草木一本生えず、あたりには焼けただれた岩がごろごろしている。そこから直線とタイトターンの繰り返しで急斜面を駆け上がっていくと、やがて真っ白な岩肌をさらけ出す草津白根山が見えてくる。このあたりで振り返れば、眼下には草津の温泉街、遠くには赤城や榛名など上州の山並みも一望にできる。
風に乗って刻一刻と表情を変えていく雲海。それを渋峠では間近に眺めることができる。 写真提供:万座プリンスホテル
万座温泉郷の先、急勾配の九十九折りを登りきると森林限界を越えた稜線上に飛び出す。そこから先、標高2050mの山田峠から最高地点の渋峠を越え、長野県側に少し下ったところにある横手山ドライブインあたりまで、距離にして5km弱の区間に展開する山岳風景は圧倒的ですらある。
峠の頂上付近は意外と起伏が少ない。標高2172m国道最高地点は群馬/長野県境の渋峠ではなく、そこから700mほど南にある。
白根山、横手山、志賀山といった2000m以上の頂きが目の前に連なり、その向こうには3000m級の北アルプスの高峰群もそびえ立つ。まるで天上を駆け巡っているような気分になるのだ。
稜線地帯を抜ける渋峠周辺では、目の前で雲が湧き上がり、流れていく。まるで雲上を走っているような気分になる道だ。
雲海展望のスポットとして人気が高いのは、最高地点の渋峠から群馬県側に少し下ったあたりで、休日の夜明け前には数少ない駐車スペースからクルマがあふれ、ガードレール脇には写真愛好家の三脚が林立する。一方、長野県側が雲海で覆われることも多く、そんな時は横手山ドライブインのある通称「のぞき」周辺からの北アルプスの眺望がすばらしい。
雲海の上面が低い時は、渋峠から群馬県側に少し下った芳ヶ平湿原周辺も格好の雲海展望スポットになる。 撮影:gizumo/PHOTOHITO
志賀草津道路では、冬季閉鎖解除直後の「雪の回廊」も人気だが、この時期は下界が初夏の陽気でも、峠で天候が悪化すると、雪やみぞれになることも珍しくない。それなりの心構えと準備をして訪ねるようにしてほしい。