国内試乗

【国内試乗】「フォルクスワーゲン Tクロス」要領のイイ、末っ子気質のコンパクトSUV

カジュアルでポップな佇まいでありながら、広い後席&ラゲッジスペースを備え、走りも上々の仕上がり。そんなイイトコどりの新型コンパクトSUVがフォルクスワーゲンTクロス。ライバルたちにはない魅力を備えた、満足度の高い一台だ!

輸入車デビューの方にはうってつけの一台

ここ数年、SUVはティグアンだけ、という少し寂しい状況が続いた日本のフォルクスワーゲンだが、2018年にディーゼルエンジンのTDIと4WDを積むティグアンTDI 4MOTIONを追加したことから、SUVの存在感が一気に強まった。そして、フォルクスワーゲンではSUV攻勢を強めるべく、2019年11月にTクロスを追加するとともに、2020年半ばには兄貴ぶんとなるSUV、Tロックを発売する予定である。

サイドに走る2本の水平ラインが佇まいに風格を与え、リアはブラックトリムフレームを備えた横一文字のリフレクターバンドがアイコンとなっている。

今回試乗したTクロスは、フォルクスワーゲンでは最も小さい、ポロクラスのSUVだ。その成り立ちは現行型のポロと共通している部分が多く、たとえば、フォルクスワーゲン・グループの生産モジュール「MQB」を用いることや、搭載されるエンジンが1Lの直列3気筒ターボであることが、それを表している。

まずは3気筒ガソリンターボを導入。本国では1.5L4気筒ガソリンターボと1.6L 4気筒ディーゼルターボがラインナップしている。

けれども、Tクロスのエクステリアを見る限り、ポロとの関連性は感じられないし、ひとクラス上の存在感を放っている。ポロに対して全長が55mm、全幅が10mm大きいだけだが、1580mmの全高とSUVらしい堂々としたデザインが、そう感じさせるのだろう。

8インチのアクティブ・インフォ・ディスプレイを装備し、デジタルメーターにはナビ画面の表示が可能。

見た目のインパクトに加えて、Tクロスの魅力といえるのが室内の広さ。身長168cmの筆者が運転席のポジションを調節し、後席に移ると、ニールームは拳3個ぶん確保されるし、荷物が多いときにスライド機構を持つ後席を一番前に出しても拳1個分のスペースが残る。荷室も高さ方向に余裕があるため、通常でもスペースは広く、後席を倒せばさらに収納スペースを拡大することが可能だ。

ラゲッジスペース容量は後席を倒せば最大で1281Lを作り出せる。

そんなTクロスに搭載されるエンジンは、ポロよりも21psと25Nm性能アップが図られ、116
ps、200Nmを発揮する1.0TSIエンジンを搭載。これにデュアルクラッチギアボックスの7速DSGが組み合わされ、前輪を駆動する。ポロに比べて100mmほど高い運転席に陣取り、さっそく発進すると、1270kgのTクロスの動き出しはやや緩慢な印象。一般道を2000rpm以下で走る場面では、3気筒エンジン特有のガサついたエンジン音や振動が気になることもあったが、ひとたび走り出せば必要にして十分なトルクを発揮。また、高速道路への合流や追い越しなどの場面で、アクセルペダルを思い切り踏み込めば、十分な加速を見せるだけのパフォーマンスを持っている。

軽快な動きを示すのも、Tクロスの魅力のひとつだ。すこし硬めにセッティングされたサスペンションにより、全高や最低地上高が高めのSUVでよく見られるピッチングやロールはしっかりと抑え込まれている。アイポイントが高いのを除けば、SUVを運転していることを意識せずに済むはずだ。反面、強化されたサスペンションに加えて、今回試乗したTクロスTSIファースト・プラスでは215/45R18タイヤと18インチホイールを装着するため、一般道などでは路面の荒れをコツコツと拾いがちで、ハーシュネスの遮断もいまひとつだった。これが17インチになればある程度改善されると予想されるが、こと快適性という部分では、SUVがハッチバックに及ばないのはこのTクロスにも当てはまるようだ。
そんな弱点があるとはいえ、それを上回るだけの魅力を持ち合わせているTクロス。サイズがコンパクトで、どちらかといえば四角いデザインのTクロスは取り回しも楽。全長4115mmという数字から想像する以上に人が乗れて荷物が積めるのもうれしいところで、今後このクルマで輸入車デビューする人が増えるのは確実だろう。

フロントシートの座り心地は、ライバルたちよりも上々という印象。リアシートは最大14cmのスライドが可能で、ラゲッジスペース容量は385〜455Lと増減して使える。

フォト=勝村大輔/D.Katsumura ル・ボラン2020年2月号より転載

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