正確無比な操作系と快適な乗り心地
そんな3シリーズの対極を行くのがアウディA4だ。かつては矢のような直進安定性と、剛直なスタビリティを持って全天候型高性能セダン/ワゴンの道を切り開いたが、近年のアウディはその性能の高さを、極上の乗り心地で味わうことに全力を傾けている。19インチタイヤを履き、可変ダンパーを備える試乗車の足回りは3シリーズと同等と言えるスペック。しかしながら、その乗り心地は今回の3台で最もしなやかであり、そして洗練されている。
45TFSIのエンジン出力は252ps/370Nmと、パワー/トルクともに330iより若干劣るものの、それをまったく感じさせないのは、クワトロシステムが瞬発的に適切なトルクを4輪へと配分してくれるからだ。
折しも試乗時はゲリラ豪雨に見舞われたのだが、A4の安定感は圧倒的だった。首都高速環状線のカーブを誰もが怖々走る中、A4は臆することなく走り続けられる。4WDへの過信は禁物だが、そうならないのはステアリングからきちんと接地感が伝わって来るから。エンジンのピックアップは鋭くも右足の操作に従順で、自信を持って4輪にトラクションを与えて行くことができる。豪雨が止んでひと息ついたとき、A4の魅力は、その絶大なる安心感をラグジャリー性能にまで昇華させたことなのだと理解した。
ダンピングを高めても基本的には快適性を失わないサスペンション。このしなやかさに対して、操作系がカッチリしているのも素晴らしい。取り付け剛性が高いステアリングは、柔らかなサスペンションを少しだけ動かすような操作をも可能にする。7速Sトロニックの反応は素早くダイレクトで、ライバルたちのトルコンATのようにトルクを伝えきれずジャダリングを起こすこともない。
正確無比な操作系と快適な乗り心地をもって速さを得るその走り。A4は、その玄人好みなルックスも含めて、我々日本人への親和性が非常に高い一台である。