旅&ドライブ

さまざまな表情をもつ霊峰に美しい雲が湧き上がる(鳥取県/岡山県 国道482号・内海乢)【雲海ドライブ&スポット Route 66】

大きく広がる山裾に四通八達した信仰の道

標高1000m前後のなだらかな山々が連なる中国山地のなかにあって、ひときわ異彩を放っているのが大山である。この山は古いカルデラの上に巨大な溶岩ドームが成長した成層複式火山で、最高峰をなす剣ヶ峰の標高は1729m。その大きな山裾は日本海まで達している。

県道45号の鍵掛峠からは、荒々しい南の崩落面を間近に仰ぎ見ることができる。

周囲の山並みから抜きんでた独立峰ということもあって、大山は遙か昔から人々の信仰を集めてきた。大山寺が開かれたのは養老年間(西暦717年〜724年)とされ、平安末期には僧兵3000人を擁する大勢力になっていた。西日本では、比叡山や高野山、吉野山などとも肩を並べる大寺院だったのだ。そして、この大山寺を中心として、多くの参詣者や修験者が行き来する道が四方八方へと延びてゆき、それはいつしか「大山道」と呼ばれるようになる。
大山の南麓を東西に延びる国道482号も、そんな大山道のひとつで、標高646mの内海乢は真庭市(岡山県)と江府町(鳥取県)の境に位置してくる。

紅葉の美しい秋の大山。西麓から見ると、まるで富士山のような端正な姿をしている。

このあたりから見る大山は、まるで巨大なナタの刃を天に向けたような荒々しい姿をしている。大山は主峰の剣ヶ峰を中心に、弥山や槍ヶ峰といった峰々が東西に並んでいるのだが、その南面がえぐられたように激しく崩落しているためである。
日本海が近いこともあって、大山には1年を通じて、さまざまな雲がかかる。ただし、その切り立った崩落面の裾を埋め尽くすような見事な雲海が現れるのは、秋から冬の風の穏やかな早朝に限られる。なかでも雲海が最も出やすいのは10月下旬から11月にかけて。冷え込みの強い朝、空は晴れているのに、あたり一帯に靄がかかっているようなら、ほぼ間違いなく雲海と出会えるという。

アクセスガイド

大山・蒜山エリアの入口となる米子道・蒜山ICまでは中国吹田ICから208km/2時間半。そこから蒜山大山スカイライン、鍵掛峠などを抜けて大山寺までは32km/約1時間の道のりとなる。県道30号/34号/44号/45号/158号を使って大山の中腹をぐるっと一周すると、トータルの走行距離は60kmあまり。明地峠展望台までは米子道・江府ICから約19km/30分ほど、中国道・新見ICからは約29km/1時間弱。

Data【Route 66 国道482号・内海乢】
雲海遭遇率 ★★
雲海の季節 秋~冬

◎所在地/鳥取県江府町、岡山県真庭市
◎ルート/国道482号
◎区間距離/約16km
◎最高地点/標高646m
◎冬季閉鎖/なし

【A】湯原温泉 砂湯
川原に湧き出す開放感あふれる混浴露天風呂

全国露天風呂番付で西の横綱にランクされたこともある湯原温泉の砂湯。川底の砂を噴き上げながらお湯が湧いていることから「砂噴き湯」「砂湯」と呼ばれるようになった。無料の混浴露天風呂で、これ以上の開放感はないはず。女性には旅館の女将とワコールが共同開発した湯浴み着(有料)も貸出中。

●入浴料無料/無休(深夜〜早朝、清掃時間は入浴不可)/真庭市湯原温泉/TEL 0867-62-2526

【B】味覚工房そばの館
栽培から製法までこだわりつくした蒜山そば

冷涼な蒜山高原は昔からソバの栽培が盛んなエリア。この地でソバを自ら栽培し、挽きたて、打ちたて、茹でたての美味しいそばを味わわせてくれるのが味覚工房そばの館。揚げたての天ぷらとのコンビネーションが絶妙な天ざる(並盛り1,060円)が人気。名物・蒜山おこわ(430円)もお勧め。

●10:30〜16:00/不定休/真庭市蒜山上徳山1375-1/TEL 0867-66-7101

ご当地グルメ、ひるぜん焼そばは特産のキャベツやカシワ肉、ジンギスカンのタレを使うのが特徴。道の駅・風の家などで味わえる。

【C】大山寺
西日本有数の勢力を誇った大山信仰の地

大山信仰の中心地として、西日本有数の勢力を誇った大山寺。その繁栄は寺領3000石あまりを与えられた江戸時代まで続いた。現在の本堂は山岳信仰の修験者たちが研鑽を重ねた修行道場だったもの。日本一長い石段で上る奥宮は、明治時代の神仏分離令(廃仏毀釈)により大神山神社として独立している。

●拝観自由(宝物館入場料300円)/9:00〜16:00/大山町大山9/TEL 0859-52-2158

観光情報

大山観光局 TEL 0859-52-2502
真庭観光連盟 TEL 0867-44-4111
蒜山観光協会 TEL 0867-66-3220
日野町観光協会 TEL 0859-72-0332

 

文:佐々木 節/撮影:平島 格

『雲海ドライブ&スポット』より転載。掲載データなどは2017年8月末時点のものです。実際におでかけの際は、事前に最新の情報をご確認ください。

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