阿蘇谷が濃霧の時は雲海と出会う大チャンス
外輪山の内側に広がる阿蘇谷は、年間降水量が3000mmに達する多雨地帯で、外輪山や阿蘇五岳(中央火口丘)に降り注いだ雨は清冽な伏流水となって、あちこちから湧き出している。しかも、内陸の盆地なので昼夜の寒暖差が大きく、晴れた日の夜明け前には放射冷却現象が起こりやすい。こうしたことから阿蘇谷では米や野菜が美味しく育つだけではなく、雲海も頻繁に発生するのだ。
雲海発生時に国道212号を大観峰に向けて登って行くと、まるで飛行機の上昇時のような雲上に飛び出す感覚も味わえる。
カルデラ内の宿で目覚めた時、もし窓の外に霧や靄が立ちこめていたら、朝飯や朝風呂のことは忘れ、なにはともあれ標高の高い場所へとクルマを走らせていただきたい。たとえば内牧温泉から大観峰までなら10km足らず。国道212号のクネクネ道を駆け上がっていくと、やがて霧の晴れ間から青空が顔をのぞかせ、その先には阿蘇谷を埋めつくす、すばらしい雲海が待っているはずだ。
阿蘇五岳を真正面に眺める展望所で、ここからの眺めは古くから阿蘇随一とたたえられてきた。大観峰の名付け親は、明治・大正・昭和の三時代にわたり活躍した熊本出身のジャーナリスト徳富蘇峰で、それまでは遠見が鼻と呼ばれていた。1年を通じて雲海は発生するが、その頻度が比較的高いのは10〜11月頃。広い駐車場があり、売店や食事処も営業しているので、のんびり絶景を楽しめる。
アクセスガイド
2016年4月に発生した熊本地震により阿蘇エリアの道路網は大きな被害を受けている。上でも簡単に触れた通り、九州道・熊本ICから阿蘇市の中心部(宮地駅)へは国道57号が寸断されているため、ミルクロードを迂回して約40km/1時間20分ほど。これまで南阿蘇村方面へは益城熊本空港ICから県道28号(俵山トンネル)経由で行くのが一般的だったが、2017年8月に長陽大橋ルートが復旧し、国道57号からも行けるようになった。
Data【Spot 80 大観峰】
雲海遭遇率 ★★★
雲海の季節 通年
◎所在地/熊本県阿蘇市
◎ルート/国道212号など
◎最高地点/標高935m
◎冬季閉鎖/なし
観光情報
阿蘇市観光協会 TEL 0967-34-1600
南小国町観光協会 TEL 0967-42-1444
みなみあそ村観光協会 TEL 0967-67-2222
文:佐々木 節/撮影:平島 格