気持ちよさを求めるならバランスの良い330i
まず試乗したのは320dだ。エンジンのフィーリングは前型のB47系に対して音・振動の面で明らかに洗練された印象だ。低回転域から発せられる分厚いトルクも過剰な演出は控えめで、アクセル開度に応じてリニアに駆動輪へと伝わってくれる。力強さは充分に感じられる一方で吹け上がりの頭打ちは早めで、スポーツモードで引っ張っても4000rpm前半でパワーの乗りは留まり、シフトアップポイントも4800rpm付近と伸びやかさは前世代に一歩譲るところだ。もっともユーロ6d規制をクリアした今日びのディーゼルユニットはおしなべて同様のフィーリングで、さしものBMWとてスポーティネスを二の次にせざるを得ない事情が伺える。
330eは前型の同等グレードに対して、モーターとエンジンとのリンケージやトルクバンドの連携といった日常でも多用する領域のマナーが一段と巧くなった印象だ。バッテリー容量は前型の7.6kWhから10.3kWhへと強化され、満充電時からのEV走行距離はWLTCモードで52.4kmと大幅な向上をみているだけではなく、スポーツモードの高負荷時には10秒間、モーターのパワーを40ps上乗せして292ps相当の動力性能を引き出すエクストラブースト機能も備えている。
動力性能的には330iと同等、そしてモーターの特性を利して中間加速などはそれ以上の迫力を感じさせるなど、車名に偽りなしといったところだ。が、燃費については200kg軽いとの差異は思いのほか小さく、普通充電環境が近くにない向きは、ランニングコスト面でのメリットは320dに遠く及ばずと思っておいた方が良さそうだ。
330i、そしてM340iのエンジンはそのスポーツ性において文句のつけようがない。320iでは物足りないトップエンドでの伸びも、330iは6500rpmの向こうまでしっかり伸び切るし力感も充分。Mスポーツ同士の比較であれば320iとの価格差は50万円だが気持ちよさを求めるならば、あえて330iを選ぶ価値はある。そしてM340iはもはやこれがM3でも構わないというほどのパフォーマンスと官能性を備えるも、330iに比べて300万円を上回る価格差をみるに、BMWの直6は完全にプレミアムアイテムになってしまったという感慨に浸ってしまう。
そのM340iはフットワークも抜群で、四駆の重苦しい悪癖をまったく感じさせないどころか、スポーツモードではDSCとの連動でぐんぐんとイン側につけていく鋭さも持ち合わせている。発表間もない試乗機会では高速サーキットでの安定性の高さとインフィールドでの鋭いターンインとのバランス感に心底驚かされた一方で、低中速域での乗り心地の渋さに心配させられたが、今回の試乗では距離の浅い個体にも関わらず、この点も少しながら確実に改善の跡がみてとれた。