今回の中では320dが最も3シリーズらしかった
330iはさすがにxDriveほどのスタビリティは感じられないが、M340iに比べると100kg軽い上に、車検証上で51:49という重量配分(M340iは53:47)もあって、物理的な軽さがどのモデルよりもポジティブに現れている。古からのBMWらしさという点では最も色濃くそれを継承するハンドリングといえるだろう。操舵ゲインの立ち方とクルマの動き方に位相ズレはなく、コーナーでは頭の入りの軽さや後輪側の粘り、舵を戻しながらパワーを乗せていく時の姿勢など、所作のよさという点でいえば今回の5台で最も感銘を受けたのはこのモデルだ。装着する19インチのブリヂストンのトランザT005が粗い舗装面や目地段差などではインパクトを多く伝えてくるのが惜しかったが、乗り心地も総じて受容できるレベルにある。
こと快適性でみれば330eのそれは他より一歩抜きん出ていた。何より効いているのは後席下に置かれたバッテリーと、その後ろに移動した燃料タンクなどが後軸に適切なプリロードを掛けている点。加えて装着された18インチのミシュランPS4のダンピング性能によるところも大きいはずだ。1830kgという重さが巧く乗り心地に転化されたうえ、48:52という棚ぼた的な重量配分もあってコーナリング時もトラクションはがっちり掛けられるが、いかんせん車体の動きはさすがに重く、Eセグメントに近いもっさりした応答感を感じることも多い。
320dは乗り心地的にもハンドリング的にも最もバランスよく3シリーズらしさを味わえるパッケージだ。M340iと同様、xDriveを背負うがゆえのネガはほぼ感じられず、あくまで後ろを軸としたスロットルワーク主体のコーナリングが楽しめる。重量はセダンが1680kgで重量配分はぴたりと50:50。新型3シリーズのライドフィールで印象的なのはバウンドの収まりがすこぶる良くなったことだが、フラットネスという点においてはミシュランPS4を履いた320dセダンが最も優れていたように思う。
320dツーリングの方はセダンよりも後軸側が70kg重いが、ハンドリングはそれを思わせないほど一体感があるし、相当な大入力でも大開口がゆえの剛性不足を感じることはない。ボディ形状の違いからくる残響感も常速域では無視できるレベルにある。もちろん厳密に走りの解像度を突き詰めればセダンの側にカチッとした精緻さが見いだせるわけだが、ライフスタイルを無視してまでセダンを選ぶ意味はない。
トータルバランスをみるに標準モデルを無視することはできないが、現状でも新型3シリーズの総合力はライバルとは一線を画するところにあることは間違いない。検討されている向きには好機到来とお伝えしておきたい。