国内試乗

「島下泰久&今井優杏」人気モータージャーナリストが「日産スカイライン」の進化を解き明かす(動画あり)【その2】

2019年7月にマイナーチェンジを受けた日産スカイライン。世界初の先進運転支援技術「プロパイロット2.0」に注目が集まっているが、クルマの基本性能も大幅にアップデートされているのも見逃せない。そんな新型スカイラインの進化を解き明かすべく、人気モータージャーナリストの島下泰久と今井優杏が試乗インプレッションを敢行。その2のV6ターボ&400R編は島下泰久がリポートする。二人の掛け合いによる動画も必見だ。

V6ターボモデルは”これぞスカイライン”という走りが愉しめる!

従来の”スポーツセダン”路線を継承したV6ターボモデル。400Rはスカイラインとして初の400psを超えるエンジンを搭載する。

ハイブリッドモデルに搭載されたプロパイロット2.0にまず注目が集まる新型スカイライン。しかしながら、こちらも絶対忘れてはいけないのが、従来は直列4気筒2.0L ターボエンジンを搭載していたGT系モデルに新たに搭載された、V型6気筒3.0Lツインターボユニットの実力である。

GT系に搭載される3L V6ターボユニットは、最高出力304ps、最大トルク400Nmを発生。マルチシリンダーの心地よい吹け上がりと、爽快なサウンドが味わえる。

今回試乗したのはGTタイプP。最高出力304ps、最大トルク400Nmを発生するこのエンジンは、低速域から非常に優れたレスポンスを示すのが、まず好印象だ。しかも回転上昇に伴ってリニアにパワーを高めていく爽快感も備えているから、ゆったり走らせても、右足に思い切り力を込めても、それぞれ快感に浸ることができる。滑らかな吹け上がり、粒の揃った気持ちの良いサウンドも気分を盛り上げる。

ワインディングのステージはスポーツセダンたるスカイラインの真骨頂。優れたハンドリング性能を存分に感じることができるだろう。

ダイレクトアダプティブステアリングの絶妙なセッティングが好印象

実は、このパワートレインの特性に合わせて、標準装備されるダイレクトアダプティブステアリング(DAS)のセッティングも見直されている。具体的にはステアリング切り始めのレスポンスが高められているということで、一発で思った通りのラインに乗せるのが一層容易になっているのである。

ステアリング切りはじめのレスポンスを向上させ、ライントレース性能を高める「ダイレクトアダプティブステアリング」は、V6ターボモデル専用にチューニング。走行シーンに合わせてサスペンションの減衰力を最適に制御し、車体の挙動を安定させつつ、車体のロールを抑制して優れた操縦安定性を実現する「インテリジェント ダイナミックサスペンション」も用意される。

GTタイプPのステアリングを握っていると、日常の何気ない瞬間にもクルマを操る歓び、醍醐味を実感できて、思わずニヤリとしてしまう。まさにこのクルマ、オールラウンドな走りの楽しさが実現されているのだ。

パワーだけでなくレスポンスも鋭い400Rのエンジン

それだけには終わらない。新型スカイラインには、そのスポーツセダンとしての資質に、より一層の磨きをかけた新グレード、その名も「400R」が新たに設定されているのである。“R”の名がつくスカイラインには、期待するなと言われても無理な相談。そして実際、そこに注ぎ込まれたテクノロジー、そしてそれが具現化する走りは、大きな満足をもたらしてくれるものに仕上がっている。

GT系よりも最高出力で100ps上回る400Rの走りは、パワフルの一言。水を得た魚のようにワインディングを駆けぬける。

まずエンジンは、基本部分はGT系のユニットと共通のまま、最高出力を実に101ps増の405psにまで向上させている。「きっと大容量のターボチャージャーを使って……」と思いきや、さにあらず。実は最高出力304psのGT系ユニットと、まったく同じものが使われているのだという。

狐につままれたような話だが、その秘密はターボ回転数センサーの採用だ。通常はターボチャージャーの過回転を防ぐために、大きなマージンを取って過給しているところを、このセンサーで状況をリアルタイムでモニタリングすることにより、ターボチャージャーの実力の限界ギリギリまで引き出すことが可能になっているのである。

大型ターボチャージャーを使えばパワーアップはより簡単だったに違いない。しかしスカイライン400Rのエンジニア達は、それによって低回転域のレスポンスが鈍くなるのを嫌った。その結果はハッキリと出ていて、400Rのパワーユニットは低回転域からアクセル操作に対して遅れ感の無い、とてもシャープな反応を実現している。実用域でターボラグを意識させられることは皆無と言ってよく、実用域でも小気味良さを堪能できるのだ。

そしてもちろんトップエンドまで引っ張れば、まさに胸のすく…と表現したくなる爽快な走りを披露してくれる。7速ATにはシフトパドルが備わるから、それを駆使して思い切り回したくなる。要するに、内燃エンジンに乗る意味や価値を、存分に味わうことができるのである。

スカイラインの原点に最新の技術で立ち返った

エンジンパフォーマンスの向上に合わせてシャシーにも手が入れられている。こちらも専用セッティングのダイレクト・アダプティブ・ステアリングは、SPORTもしくはSPORT+モードでは更に切れ味が鋭くなり、コーナーの連続が更に楽しくなる。しかも、400RにはIDSと呼ばれる電子制御ショックアブソーバーが標準装備となっており、日常域ではむしろGT系以上かもと思わせるほどの快適性を実現する一方で、しっかりと姿勢変化を抑制してくれる。これらの相乗効果で、クルマとの高度な一体感に浸ることができるというわけだ。

400Rの内装は、本革スポーツシートをはじめ、ブラックのシックな雰囲気にレッドステッチが施されるなどスペシャル感満載。19インチホイールにはガンメタリック塗装、ブレーキキャリパーはレッド塗装されている。

思わず走りの話から始めてしまったが、400Rは内外装も特別仕立てとされている。とりわけガンメタ塗装の19インチアルミホイールと、その向こうに姿を覗かせる4輪アルミレッドキャリパー対向ピストンブレーキは、400Rのエンブレムともども凄みをアピールするポイント。サポート部分にダイヤキルティングをあしらいた本革スポーツシートと、レッドステッチを採用したインテリアも、テンションを上げてくれるポイントである。

スカイラインは日本のスポーツセダンの源流。今もって確実に、アクティブに走りを楽しみたい人のためのクルマとして存在感を放っている。新しいV型6気筒ターボエンジン搭載モデルは、その意味でスカイラインの原点に、最新の技術で立ち返ったような存在と言っていいかもしれない。
プロパイロット2.0のような先進技術の積極投入と、V型6気筒ターボエンジンによるスポーティな走り。まさに皆が待っていたスカイラインの姿が、この最新モデルには見事に具現化されているというのが、今回改めて確認できたスカイライン像だったのである。

【Specification】日産スカイライン GT タイプP(V6ターボ)2WD
■全長×全幅×全高=4810×1820×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前1530、後1560mm
■車両重量=1730kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=VR30DDTT/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径/行径=86.0 ×86.0mm
■総排気量=2997cc
■圧縮比=10.3
■最高出力=304ps(224kw)/6400rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1600-5200rpm
■燃料タンク容量=80L(プレミアム)
■燃費=(WLTC)10.0km/L
■トランスミッショッン形式=7速AT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後245/40RF19(8.5J)
■車両本体価格(税込)=4,638,700円

【Specification】日産スカイライン 400R
■全長×全幅×全高=4810×1820×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前1530、後1560mm
■車両重量=1760kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=VR30DDTT/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径/行径=86.0 ×86.0mm
■総排気量=2997cc
■圧縮比=10.3
■最高出力=405ps(298kw)/6400rpm
■最大トルク=475Nm(48.4kg-m)/1600-5200rpm
■燃料タンク容量=80L(プレミアム)
■燃費=(WLTC)10.0km/L
■トランスミッショッン形式=7速AT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後245/40RF19(8.5J)
■車両本体価格(税込)=5,625,400円

■問い合わせ先=日産自動車 http://www.nissan.co.jp/
商品サイト
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/skyline.html

フォト=郡 大二郎/D.Kori

注目の記事
注目の記事

RANKING