国内試乗

【国内試乗】「BMW 2シリーズ グランクーペ」BMW初のコンパクト4ドアクーペ登場

その優雅なデザインとスポーティな走行性能に加え、4ドアならではの利便性により、高い評価を獲得してきたBMWの4ドアクーペ。そのラインナップにコンパクトセグメントの2シリーズグランクーペが新たに加わった。大きなサイズのクルマは持て余しぎみ、でもスタイルにはこだわりたいというアナタには、ぜひ試していただきたい1台である。

前輪駆動を採用し実用性も充分

今やすっかりプレミアムカー市場のメジャーカテゴリーとなった4ドアクーペを、BMWがグランクーペの名で最初に手掛けたのは6シリーズでのことだった。そのヒットにより続けて設定された4シリーズ、そして8シリーズに次ぐ最新作。それが2シリーズグランクーペである。ついに前輪駆動プラットフォームの採用へと舵を切った1シリーズと基本骨格を共有する2シリーズグランクーペのフォルムは、大きく寝かされたリアウインドーに短いトランクリッドなど、ほのかに8シリーズグランクーペとの共通点を感じさせるものに仕上がっている。フロントオーバーハングの長さが1シリーズほど気にならないのは、やはりリアが相応に伸ばされているおかげだろう。バランスは悪くない。

試乗車はトップモデルのM235iで、最高出力306ps/最大トルク450Nmを発揮する2L直4エンジンを搭載。8速ATを組み合わせる。

そのボディサイズは、全長4540mm×全幅1800mm×全高1430mm。1シリーズより185mm長く、全幅はそのままで35mm低い。2670mmのホイールベースは不変である。真正面からぶつかるライバルのメルセデス・ベンツCLAが、新型になって全長も全幅も大幅に拡大していることもあり、キュッと締まった小気味よさが際立っている。

M235iには、BMWの4輪駆動システムxDriveを採用するほか、新開発の機械式トルセン・リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを標準装備。よりスポーティかつ俊敏な走りを実現。

実は最初てっきり、1シリーズと共有なのかと思っていたボディ前半部は、実際にはヘッドライトもグリルもバンパーも何もかも別物だ。これだけ似ているなら一緒でもいいのにと思わないでもないが、その微妙な違いにこだわるのが、かつて様々なモデルで見てきた通りのBMWの流儀だというのは、ファンの方ならよく知るところだろう。

新型2シリーズグランクーペは、全高1420mmという機械式駐車場にも入るコンパクトなボディサイズに、クーペモデルらしい流麗なルーフラインが魅力。BMWを象徴するキドニーグリルも新デザインが採用される。

試乗車は最高峰グレードのM235ixDriveということで、3Dメッシュデザインのキドニーグリルや19インチアロイホイール、角型テールパイプなどによってさらにスポーティな演出がなされている。アダプティブLEDヘッドライトは、ハイビーム・アシスタント、ヘッドアップディスプレイとセットのヴィジョン・パッケージに含まれる。

218iには16インチが標準だが、M235iには18インチMライト・アロイ・ホイール・ダブルスポークが標準装備となる。

4枚のドアはサッシュレス式。これだけでクーペらしさ、特別な感じが漂ってくる。そのドアの向こうの運転席まわりの意匠は、さすがに1シリーズとほぼ共通となる。最新のフルデジタルコクピットを備え、標準のBMWインテリジェントパーソナルアシスタントには自然発話対応の音声入力機能やジェスチャーコントロールなども備わる、その機能の充実ぶりは、まさに上位モデルにまったく遜色ないものと言える。

前席はさほどではないが、後席に移るとさすがに狭さを覚えるのは事実である。これでも2シリーズクーペに対してニールームが33mm広がっているといい、またオプションのパノラミックグラスサンルーフを装備しているにも関わらず、頭上も内張りに髪が触れるぐらいで済んではいるのだが、左右が絞り込まれたルーフ形状が実際以上に窮屈に感じさせるようだ。

4ドア化と前輪駆動の採用により、ボディサイズの近い2シリーズクーペ比で約33mm後席の足元部分が拡大するなど、余裕ある室内空間を実現。

一方、ラゲッジルームは見るからに広々としていて、深さもある。430Lの容量は、2シリーズクーペの40L増し。後席バックレストは40:20:40の割合で分割して前倒しできるから、想像以上の荷物を飲み込んでくれそうである。

M235iには、メッシュデザインのキドニーグリルや、専用の台形型デュアルエキゾーストテールパイプを装着。

現時点での日本仕様のラインナップは全4グレード。直列3気筒1.5Lターボエンジンを積む218iグランクーペ、さらにはその装備充実版であるPlay、MSportに、今回の試乗車であるM235ixDriveグランクーペが揃う。先日、1シリーズに追加されたディーゼルエンジン搭載車は今のところ未設定だ。

1シリーズを凌ぐ快適性と静粛性

走り出してすぐに「あっ、これは1シリーズとは違う」と感じた。同じパワートレインを積むM135ixDriveと較べて、特に快適性が明らかに秀でているのだ。乗り心地は当たりが全体にマイルド。セッティングの違いだけでなく、多少なりとも前後重量バランスが改善されているのも有利に働いているのかもしれない。また、静粛性も1シリーズを上回る。これもまたボディ形状の違いに拠るところは大きいはずである。

オプションで電動スライディングサンルーフも選択可能。

よって高速道路を適度なペースでクルージングするようなシチュエーションでは気持ち良く走らせることができるが、そこからアクセルを踏み込むと、フロアの奥の方がブルブルと震え出し、路面によってロードノイズの大きさが結構上下する。まあ、それも普段の静粛性の高さゆえに気になるのだが、ここまで来たらさらにもう一歩を望みたい。

それでも右足につい力が入るのは、回すと断然気持ちのいいエンジンだからだ。直列4気筒2Lターボエンジンの最高出力は306ps、最大トルクは450Nmと強力で、実際に中速域以降の加速感は刺激的。しかもトップエンドに向けて詰まることなく駆け上がっていくようなゴキゲンな特性に躾けられているから、回すのが楽しい。これに1500rpm以下からでもキックダウンすることなくスーッと速度が高まっていく粘りが加われば言うことナシである。

これだけの高性能ながら気兼ねなくアクセルを踏んでいけるのは、xDriveやフロントのトルセンLSD、前輪の空転をDSCを経由することなくECUで直接検知して抑え込むARBに、ブレーキLSD機能等々のデバイスの相乗効果。思い通りのラインをトレースして、積極的に踏んでいけるスポーティさが備わっている。
ただしステアリングフィールにFRモデルほどのダイレクト感がないのは事実だし、バンプトー変化が大きく路面のうねりなどで進路が細かく乱れがちなのは、だいぶマイルドとはいえ、概ね1シリーズと一緒。ミニなら許せてもBMWとしては……という感はある。

まだ218iは試していないが、今回の試乗車で判断する限りは、見た目、走りともにスポーティで、実用性も十分に備わり、先進技術も今欲しいものをしっかり揃えた2シリーズグランクーペの総合力はなかなか高い。ただし、そこはBMWだけに期待値もまた高く、”らしさ”いう点では不満も募るのは事実。このあたりをどう判断するかで評価は分かれるだろう。とりわけ今回の試乗車、オプション込みで価格は749万9千円にもなる。それだけに、どうしてもこの格好がいいというのでなければ、330iMスポーツあたりも味見しておいたらどうかというのが筆者なりの率直な結論だ。

2シリーズクーペに比べラゲッジルーム容量も約40L拡大した430Lを確保。分割可倒式リアシートにより長尺モノも収納できるなど、高い利便性を確保している。

【Specification】BMW218iグランクーペPlay

■車両本体価格(税込)=4,100,000円
■全長×全幅×全高=4535×1800×1430mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前1565、後1565mm
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=B38A15A/直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=1498cc
■最高出力=140ps(103kw)/4600rpm
■最大トルク=220Nm(22.4kg-m)/1480-4200rpm
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=7速DCT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後205/55R16(7J)

【Specification】BMW M235ixDriveグランクーペ
■車両本体価格(税込)=6,650,000円
■全長×全幅×全高=4540×1800×1430mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前1565、後1560mm
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類B48A20E/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1998cc
■最高出力=306ps(225kW)/5000rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1750-4500rpm
■燃料タンク容量=50L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後225/40R18(8J)

お問い合わせ
BMWジャパン 0120-269-437

フォト=郡大二郎/D.Kori ルボラン2020年6月号より転載
島下泰久

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