1シリーズを凌ぐ快適性と静粛性
走り出してすぐに「あっ、これは1シリーズとは違う」と感じた。同じパワートレインを積むM135ixDriveと較べて、特に快適性が明らかに秀でているのだ。乗り心地は当たりが全体にマイルド。セッティングの違いだけでなく、多少なりとも前後重量バランスが改善されているのも有利に働いているのかもしれない。また、静粛性も1シリーズを上回る。これもまたボディ形状の違いに拠るところは大きいはずである。
よって高速道路を適度なペースでクルージングするようなシチュエーションでは気持ち良く走らせることができるが、そこからアクセルを踏み込むと、フロアの奥の方がブルブルと震え出し、路面によってロードノイズの大きさが結構上下する。まあ、それも普段の静粛性の高さゆえに気になるのだが、ここまで来たらさらにもう一歩を望みたい。
それでも右足につい力が入るのは、回すと断然気持ちのいいエンジンだからだ。直列4気筒2Lターボエンジンの最高出力は306ps、最大トルクは450Nmと強力で、実際に中速域以降の加速感は刺激的。しかもトップエンドに向けて詰まることなく駆け上がっていくようなゴキゲンな特性に躾けられているから、回すのが楽しい。これに1500rpm以下からでもキックダウンすることなくスーッと速度が高まっていく粘りが加われば言うことナシである。
これだけの高性能ながら気兼ねなくアクセルを踏んでいけるのは、xDriveやフロントのトルセンLSD、前輪の空転をDSCを経由することなくECUで直接検知して抑え込むARBに、ブレーキLSD機能等々のデバイスの相乗効果。思い通りのラインをトレースして、積極的に踏んでいけるスポーティさが備わっている。
ただしステアリングフィールにFRモデルほどのダイレクト感がないのは事実だし、バンプトー変化が大きく路面のうねりなどで進路が細かく乱れがちなのは、だいぶマイルドとはいえ、概ね1シリーズと一緒。ミニなら許せてもBMWとしては……という感はある。
まだ218iは試していないが、今回の試乗車で判断する限りは、見た目、走りともにスポーティで、実用性も十分に備わり、先進技術も今欲しいものをしっかり揃えた2シリーズグランクーペの総合力はなかなか高い。ただし、そこはBMWだけに期待値もまた高く、”らしさ”いう点では不満も募るのは事実。このあたりをどう判断するかで評価は分かれるだろう。とりわけ今回の試乗車、オプション込みで価格は749万9千円にもなる。それだけに、どうしてもこの格好がいいというのでなければ、330iMスポーツあたりも味見しておいたらどうかというのが筆者なりの率直な結論だ。