日常と非日常を巧みに両立してみせる
まず試乗したのはBMWのM340ixドライブだ。搭載するエンジンはGRスープラなどにも採用されているB58系3L 直6直噴ツインスクロールターボだが、Mパフォーマンス銘柄であることを387ps/500Nmというエンジンスペックで示している。4WDは駆動配分をリア寄りとしイニシャルでも旋回性を重視、そこにMスポーツディファレンシャルを組み合わせることで後輪左右の差動を緻密にコントロールし、コーナリング性能とスタビリティを両立させている。
Mスポーツ以上でM未満というMパフォーマンスの立ち位置は、座って握る小径で太芯なステアリングからして、はっきりと伝わってくる。試乗車は走り込みが進んだこともあってか、登場当初感じられた硬さは角が取れた感はあったが、それでも大きな凹凸や目地段差では跳ね返しははっきりと強めだ。ただしボディの剛性は強烈で、大きな突き上げなどもガッチリと受け止めては残響すら響かせず一発で減衰させる。どえらく精緻で硬質なものに乗っているという感触は、このクルマの性格を重厚にさえ思い込ませる。
それだけに、曲がった際のシャープな動きには驚かされるはずだ。ロールは定常的ながらその量は小さく、駆動配分も活かしながらパワーをしっかり旋回力に振り向けてスキッと向きを変えていく、その限界の高さと精緻なフィードバックは先代とは一線を画した、新しい3シリーズがみせる新しいBMWの世界観かもしれない。
次いで試乗したのはアルファ・ロメオのジュリア・クアドリフォリオだ。先日発表された500台の限定車、ジュリアGTAのベースともなるこのモデルは、フェラーリ出身のエンジニアが開発を主導したという2.9L V6直噴ツインターボを搭載、その出力は510ps/600Nmにも達する。それを後輪駆動で受け止めるべく、電子制御LSDを搭載。M340iと同じく、左右輪の差動を積極的にコントロールする。
走れど曲がれどクアドリフォリオのキャラクターはとにかく刺激的だ。運転好きのドライバーは常に踏みたい誘惑と戦うことになるだろう。エンジンは7000rpmのレッドゾーンまで一気呵成に回りきり、直前まで二次曲線的に加速感も高まっていく。エンジンサウンドはM340iのような緻密さはなくむしろ粗野な印象で、好みが分かれるだろうが好戦的であることは間違いない。
フットワークもセダンとしては相当に鋭敏な部類に入る。ステアリングギア比は相当クイックでゲインの立ち上がりも強く、それを初期ロールスピードの早い足周りと組み合わせるあたりは至ってアルファロメオ的だ。でもロールが深まるほどに、車体はしっかりと粘りテールブレイクなどの挙動変化も柔らかい。だが電子制御の助けもあるとはいえ、大パワーを扱うに薄氷を踏むような緊張感とは無縁だ。この初期から足がよく動く味付けも手伝ってか、常速域での乗り心地が望外に丸く纏められているのも嬉しい誤算だろう。