アンダーステイトメントな佇まいはどこか往年のスカGを彷彿とさせる
両車のこれらの個性を踏まえてスカイライン400Rに乗ると、全方位的に性格が落ち着いていることが明らかに伝わってくる。
まず乗り心地は良くも悪くも緩い。普通に走っているぶんのライドコンフォートは、19インチのランフラットを履くことを考えれば、相当整っている部類に入るだろう。が、鋭利な凹凸や目地段差にあたるとぐしゃっと鈍い突き上げ音と共に車体には微振動が響く。設計年次の新しい両車に比べれば、部位剛性の低さは否めない。
一方で、一時期は開発の気配も窺えなかった新しいVRユニットのパフォーマンスは想像以上に優れたものだった。今日びのエンジンとしては珍しくボア×ストロークがスクエア設計ということもあり、高回転域の伸びはクアドリフォリオほどではなくとも7000rpm付近まですっきり回り、6000rpm超までしっかりパワーも乗ってくる。低回転域側のトルクもリッチで、2000rpm以下の領域でも押し出しは力強い。サウンドに両車のような官能的刺激が盛れれば、相当魅力的なパワートレインになると思う。
動力性能は両車の間に割って入るくらいの迫力があるが、トラクションは電子制御でなんとか発散を封じ込めているという印象で、全開加速では時折後輪を滑らせるほどの反応をみせることもある。が、速度が乗ってからのグリップには不満はない。ハンドリングも精緻さや刺激はひとつ譲るが、ドライブモードによって癖が掴みにくかったDASは制御が素直になり、遅からず急すぎずの丁度いいゲインを実現していると思う。
確かにそれは特筆すべきエモーションではない。が、400Rには持てるソリューションを最大限に活かして、エンジニアと実験の横連携で綺麗に整えた結果の繋がりの良さ、日々の生活に採り入れての肌なじみの良さが一番強く感じられた。適度なホールド感のシートや下回りも気遣われた遮音など、Dセグメントに求められる上質な快適性をおざなりにせず、その上で腕利きも充分満足できる速さや、ワインディングをしっかり楽しめるハンドリングも備えるも、サーキットでも通用するほどの鋭さやタフさはGT-Rの領域だから——とそういった大人の取捨選択もまた、強力なコストパフォーマンスを実現した秘訣だろう。