デコレーションパネルといったデリケートなパーツを無菌環境で組み立てられるガラスの部屋
ロールス・ロイス・モーター・カーズはこのほど、英国グッドウッドの本社製造施設に高度なクリーンルームを設置したことを明らかにした。
ロールス・ロイスは、多種多様なビスポークプログラムによってオーナーのニーズにきめ細かく応えている。とくにデコレーションパネルといったインテリアのパーツは、一般的なクルマには用いることがほとんどない素材が使われることも少なくなく、組み立てには細心の注意を要する。
このたび同社が導入した「ギャラリー」と呼ぶクリーンルームはガラスで覆われており、マイクロプロセッサや医療機器などの製造現場などでも用いられている手法によって、デリケートなパーツを無菌環境で製造することができる。設置にあたっては、同社のスタッフが実際にマイクロプロセッサの製造現場で使用されているクリーンルームを見学。チリやホコリ、菌のない環境を作り出すのに必要な手順や要件を学んだ。パーツにほんの少しでもホコリが付着していたら、そのパーツの美的完成度は損なわれてしまうからだ。
クリーンルームは医療レベルの陽圧スペースになっており、センサーによってルーム内の粒子濃度を継続的に測定。このセンサーは人間の髪の毛の直径50〜100ミクロンよりはるかに小さい0.001ミクロンの微粒子も検出できるものだ。天井には複雑な濾過システムが組み込まれており、ルーム内の空気を循環させる際に不要な微粒子を継続的に除去することで、ルーム内をクリーンに保つ。
このクリーンルームで組み立て作業ができるスタッフは、訓練を受けた5名に限られており、一度に入場できるのは2名だけ。当然入場するスタッフは、菌やホコリの原因になりうる化粧品やヘアケア製品、消臭剤の使用は控えなければならないわけだが、入場の際もマスクやオーバーオール、オーバーシューズといった医療レベルのアイテムを装備する。
準備の整ったスタッフは加圧された準備室に入り、組み立てるパーツ群をパッケージから取り出す。紫外線による検査や拡大鏡を用いて、チリやホコリといった微粒子を抽出しパーツをクリーニング。その後、晴れて「ギャラリー」で組み立て作業に移ることができる。
「ギャラリー」の設置は、同社のクルマ作りがわれわれの想像を超えた高い次元で行なわれていることを、改めて認識させてくれるものといえるだろう。