
GLAとGLB。前者は昨年末にフルモデルチェンジ、後者は昨年ブランニューモデルとして登場したメルセデスのコンパクトSUVだ。ただし、両車プラットフォームは共通ながらGLBの方がホイールベースは100mm長く、キャビン内には3列シートが備わる。では、文字通り“大は小を兼ねるのか”? コンパクトSUVとしての存在意義から考えてみる。
エクステリアデザインがキャラクターを表す
昨年から今年にかけて登場したメルセデス・ベンツGLA(開発コード=H247)とGLB(X247)は、ともにコンパクトSUVとして非常に近い存在にある。購入を考える読者の中には、早くも迷っている方も多いだろう。実は、筆者もこの2台をそれぞれ単独でテストして、あらためてその違いについて整理してみたいと考えていた。編集部からのオファーは願ったりかなったりである。ちなみに、モデルケースはともに2L 4気筒エンジンを搭載したGLA250とGLB250で、ドライブトレインは4マチック、トランスミッションは8速DCTだ。まず、ボディサイズはGLAが全長4410mm、全幅1834mm、全高1611mmで、ホイールベースは2729mm。ラゲッジルーム容量は通常時435L、最大1430Lとなる。また、 Cd値は0.30、回転直径は11.4m。車両重量は1600kgだ。
一方のGLBは全長4634mm、全幅1834mm、全高1659mmで、ホイールベースは2829mmと明確に10cmの差がある。ラゲッジルーム容量は570~1805Lと、2列目後席を立てた状態ですでに135Lの余裕がある。さらに2、3列目をフラットにすれば375Lの差で、明らかにGLBの方が有利。回転直径は11.7mで、GLAの方がわずかだが小回りは効く。すなわちボディサイズがもたらす差はGLBの方が優勢で、やや大きめな回転直径を除けば実用性は高いだろうということになる。ただし、車両重量は1670kgと、およそ大人ひとり分は重くなるが。
デザインはエモーショナルな部分で、好き嫌いもある主観的なものだ。だが一方で、クルマの購入動機に関しては常に上位3番目に上がる重要な要素でもある。ゆえに、ここではあえて比較の要素としたい。まずGLAだが、コンセプトは明らかで、メルセデス・ベンツGLシリーズのエントリー版という役割だ。今回のモデルチェンジではあえて全長を縮めるなどしてダイナミックなプロポーションを強調、GLCの弟分という佇まいを鮮明にしている。GLシリーズは、Gクラスとの競合を避けるためにすべてソフトなラインとサーフィスからなるクロスオーバー的なボディデザインとしており、GLAはまさにそのボトムラインとして明確な主張をしている。
一方、GLBはチーフデザイナーのアヒム・シュトゥーバウアーが言うように、より本格的なオフローダーデザインを追求しており、いわばGクラスのコンパクト版を狙って開発された。であれば、もっとスクエアなデザインにするべきだったとは個人的には思うが、メルセデスは過去にGLKで思うような成功を収められなかったことを踏まえてあえて角や平面を多用しなかったという。加えて、3列シートレイアウトは、実質的な競合となるBMW2シリーズ・グランドツアラーを研究した結果、ミニバン風のボディを嫌い、あえてSUVデザインを選択したとも言われる。ちなみに、インテリアは両車まったくと言っていいほど違いはなく、ともに人間工学的に優れていて高品質だ。なお、参考までにお伝えすると、GLAはドイツのラシュタットにあるAクラスのメイン工場、GLBはメキシコのアグアスカリエンテス工場で生産される。もちろん、両車とも生産国など分からないほど品質上の差はまったくないが。
ドイツ本国のユーザー年齢層が興味深い
両モデルともに同じMFA-II、すなわちメルセデス・ベンツ・フロントドライブ・アーキテクチャーの2世代目をベースに構築されており、正直その走りに関してはほとんど差がない。あえて言えば、ホイールベースの短いGLAの方が機敏でスポーティなハンドリングを示すのに対して、GLBは重心高がやや高く、シャシーセッティングが快適志向なのでボディの動きはGLAに比べてやや大きい。ただし不快なほどではなく、ルーミーでグリーンハウスは広く、Bピラーもさほど太くないので周囲の見切りはGLBの方がいい。また、ソフトなGLBの方が悪路はもちろん、あらゆる場面で快適な乗り心地を提供してくれる。
カタログ上での動力性能はGLA250が0→100km/h加速6.7秒、最高速度240km/h、GLB250は6.9秒、236km/hと、ボディが重く大きい分だけGLBがやや遅れをとる。ちなみに、本格的なオフロードコースを走ったときの印象では、全長が短く、アプローチ/デパーチャーアングルともに大きいGLAの方が有利で、急勾配の上り下りは得意。まあ、日常とは無縁だが、そんなポテンシャルも備えているということだ。
さて、一般的なクルマでもそうだが、コンパクトSUVの購入に際しては、特にライフスタイルと実用性で判断する場合が多い。デザインでは、前述のようにエステティックで洗練されたGLAがリードする。ダイナミック性能でもショートホイールベースで軽量なGLAのほうが有利。回転直径は30cmも小さく取り回し性は優秀だ。ただし、日常性という面からすると、まず大切な要件は人と物の積載能力になる。そうなると、シーンに応じて最大7人乗れるGLBの方が俄然有利。ラゲッジルーム容量も5名乗車時で比べればゆとりがある。ファミリーカーとしてはGLBのほうが圧倒的に使い勝手はいいだろう。
最後に、参考までにドイツのユーザー層をお知らせしておこう。GLAは25歳~34歳までの層が40.9%でもっとも多く、GLBは幅広く平均的で45歳~54歳までが27.5%でピークとなっている。もちろん、このデータでは家族構成などは推測できないが、年齢層から2台のおおよそのオーナー像は想像できる。つまりこのデータは、ここまでの解説の裏付けともいえるのだ。
【Specification】MERCEDES-BENZ GLA
■全長×全幅×全高=4410×1834×1611mm
■ホイールベース=2729mm
■車両重量=1600kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=224ps(165kW)/5500-6100rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1800-4000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■スペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=215/65R17:215/65R17(GLA250 4MATIC)

ヘッドルームは先代から拡大/ボディは先代に対して全長-14mm、全幅+30mm、全高+104mmと意外にもトールボーイとなったGLA。そう感じさせないのは、弓なりのルーフラインとサイドのシャープなウインドーグラフィックゆえ。全幅はGLBと同値だ。
【Specification】MERCEDES-BENZ GLB
■全長×全幅×全高=4634×1834×1659mm
■ホイールベース=2829mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1991cc
■最高出力=224ps(165kW)/5500-6100rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/1800-4000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=215/65R17:215/65R17(GLB250 4MATIC)

ファミリーユースに安心の3列シート/3列シートレイアウトを前提に、ホイールベースはGLAに対して+100mm、全高も+48mmとしてゆとりあるキャビンスペースを実現。 3列目シートは、メルセデス曰く「身長168cmまでなら十分な空間と安全性を確保」とか。