国内試乗

【新世代ベントレーの肖像】「ベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブル vs コンチネンタルGT」真のグランドツアラー

太陽と暖かい気候を求めた英国の富裕層が、大陸(コンチネンタル)を快適でスポーティに走らせるため生まれたのがベントレー・コンチネンタルGT。初夏のある日、クーペとコンバーチブルの2台のコンチネンタル GTを連れ立ち、真のグランドツーリングを考察するショートトリップへと繰り出した。

V12がもたらすのは悠然とした余裕

ずしりとした重みのあるドアを開け、仕立てのいいレザーシートに滑り込む。そのままセンターコンソールのスターターボタンに手を伸ばすと、ノーズに収まるW12は即座に目を覚まし、粛々とアイドリングを奏で始めた。

パワートレインは6L W12気筒TSIエンジンに8速DCTを組み合わせる。最高出力635ps、最大トルク900Nmのパワーもさることながら、W12独特のリズムが走る歓びを掻き立てる。

まだ内燃機関を持った自動車が生まれたばかりの頃、「遠くまで壊れないで走る」コンチネンタルなグランドツーリングは、地続きのヨーロッパにおいて高性能を示す何よりの証だったという。
1919年に創業したベントレーが名を馳せたのも、1924年から30年にかけての5度のル・マン24時間制覇、ウォルフ・バーナート大佐のスピードシックスと寝台特急ブルートレインとのトライアルなどを通じて、その卓越したグランドツアラーとしての性能が評価されてのことだ。そんな故事に想いを馳せながら、 ベントレー ・コンチネンタルGTとコンチネンタルGTコンバーチブルを連れ立って、初夏を迎えた高原へショートトリップへと繰り出した。
最初にドライブしたのはコンバーチブル。機密性が高く、静かなのでつい幌の存在を忘れてしまいそうになるが、幸いなことに3代目から50km/hまでなら走行中でも幌の開閉ができるようになったので、迷わずフルオープンにする。

目的地で待っている楽しみより、移動の楽しさが優ってしまう。

ひと口にオープントップ・モデルと言っても、積極的に風を感じさせるモデルもあれば、頭上をそっと撫でる程度に風をカットするモデルもあるなど、そのキャラクターは様々だ。このコンチネンタルGTコンバーチブルはラグジュアリーカーらしく後者のタイプ。もちろん風と戯れるオープンエアモータリングを望むなら、サイドウインドーを降ろせばいいのだが、どちらの場合でも不快な風の巻き込みがないのは、ボディ全体のエアフローが上手く機能している証拠といえるだろう。

BENTLEY CONTINENTAL GT CONVERTIBLE/ルーフは50km/h以下ならば走行中でも開閉可能。ルーフカラーは7色から選べ、英国伝統のツイード模様にモダンなエッセンスをプラスしたカラーも初採用されている。フェイシアは全てkoaと呼ばれるウッドを採用。

そんなコンチネンタルGTシリーズのグランドツアラーとしての強みは、ずばり“余裕”だ。6L W12ツインターボTSIユニットとベントレー史上初めて採用された8速DCTは、635ps&900Nmというスペックや、0→100km/h加速3.8秒というピークパフォーマンスにばかり目が行きがちだが、本質はそこにはない。それだけのキャパシティがあるからこそ、一般道でも高速道路でも滅多なことで2000rpmを超えることなく、悠然と快適にクルマを前へと進めることができるのだ。当然、回転が低ければ自ずとノイズも振動も低くなり、右足に余計な力や神経を使う必要もいらなくなる。

BENTLEY CONTINENTAL GT CONVERTIBLE

他のクルマで走る時より、景色が広く鮮やかに見え、片道200kmを走り切っても、疲労を感じるどころか、まだまだ走り足りないとさえ思えたのは、まさに余裕のなせる業だといえるだろう。
もうひとつ今回の試乗車で特筆すべきは、両車ともに右ハンドルだったということだ。意外に思われるかもしれないが、これまで国内外で幾度となくドライブしてきたベントレーの広報車はすべて左ハンドルだった。つまり人生初の右ハンドル・ベントレー体験となったのだが、ドライビングポジションや、ドライブフィールの違いはまったくなかった。むしろ車庫入れなどの場面では右ハンドルの方がクルマの大きさを意識することが少なかったくらいだ。そのあたりも疲れの少なさに繋がったのかもしれない。

BENTLEY CONTINENTAL GT CONVERTIBLE

400km走ってわかったグランドツアラーの実力

シルバーレイクというブルーメタリックに彩られたエレガントなコンチネンタルGTコンバーチブルからアイスのボディカラーをもつコンチネンタルGTに乗り換える。こちらはウインドーモールなどをブラックアウトしたオプションの“ブラックラインスペック”が奢られた精悍なイメージの1台だ。

BENTLEY CONTINENTAL GT/まるで船艇のようにコクピット全体を取り囲むよう設定されたフェイシア(インスツルメンタルパネル)には、コンバーチブルの試乗車とは対照的に、全てハイグロス・カーボンファイバーを採用。

正直にいうとコンバーチブルに乗っている時は、ミシリともいわない盤石なシャシー、しっかりと路面を捉え乗り心地の良いサスペンション、そしてバランスの良いパッケージングから「クーペじゃなくても良いかも」と思っていた。
でもその想いは、良い意味で裏切られた。ボディの包まれ感、硬質感はクーペの方が圧倒的。走行モードをデフォルトの“ベントレーモード”に合わせてみると、コンフォートモード寄りだったコンバーチブルと違い、クーペはスポーツモード寄りのセットアップになっていて、すべての反応がクリアでシャープなのである。これまでそれぞれを試乗した経験はあるものの、同時に長距離で乗り比べるチャンスはなかっただけに、屋根のあるなしで、これほどまでに色付け、味わいの差が際立って感じられたのは意外な発見だった。

BENTLEY CONTINENTAL GT

特に明らかなのがそのコーナリングフォームだ。コンバーチブルが少しのロールを許して、たおやかに曲がっていくのに対し、クーペでは48Vの電動式アクティブロールコントロール、ベントレーダイナミックライドと3チャンバーのエアサスぺンションが真価を発揮し、路面に吸いつくように姿勢を変えず、軽やかに曲がっていく。コンバーチブルを“癒しのGT”とするならば、クーペは“攻めのGT”という表現がふさわしい。
でもそれでどちらかに優劣がつく話ではない。ハワイ産のKoaというウッドパネルとブルー&ホワイトのレザーを配した明るく華やかなコンバーチブルと、ホワイト&ブラックのレザーにカーボンパネルをあしらったスパルタンでありながら品性の漂うクーペのインテリアに象徴されるように、同じフォーマットを用いながらも、モデルやオーナーの嗜好に応じてキャラクターを変えられる“懐の深さ”こそが、コンチネンタルGTシリーズの凄さだからだ。

BENTLEY CONTINENTAL GT

約400kmの旅が終わり、ガレージでエンジンをストップした時、両者の平均燃費は、奇しくも同じ9km/L台を表示していた。その数字を見て、コンチネンタルGTが名ばかりのGTではなく、「あらゆる面で最上のドライバビリティを提供する」という歴代ベントレーのプリンシプルを受け継いだ、真のグランドツアラーであることを改めて確信できた。

NEW RELESE=4L V8を搭載したコンチネンタル GTがまもなく日本上陸

最高出力550ps、最大トルク770Nmを発揮するV8エンジンを搭載したコンチネンタルGT、コンチネンタルGTコンバーチブルがまもなく日本に上陸する(※当初の予定では今年の第2四半期)。特定の状況で8気筒の内の4気筒を休止することができ、燃費性能も向上している

【Specification】BENTLEY CONTINENTAL GT CONVERTIBLE
■全長×全幅×全高=4880×1965×1405mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量= 2260kg
■エンジン種類/排気量=W12DOHC48V+ツインターボ/5950cc
■最高出力=635ps(467kW)/6000rpm
■最大トルク=900Nm(91.8kg-m)/1350-4500rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40ZR21:305/35ZR21
■車両本体価格(税込)=26,807,000円

【Specification】BENTLEY CONTINENTAL GT
■全長×全幅×全高=4880×1965×1400mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量= 2450kg
■エンジン種類/排気量=W12DOHC48V+ツインターボ/5950cc
■最高出力=635ps(467kW)/6000rpm
■最大トルク=900Nm(91.8kg-m)/1350-4500rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40ZR21:305/35ZR21
■車両本体価格(税込)=29,414,000円

お問い合わせ
ベントレーモーターズジャパン 0120-97-7797

フォト=岡村昌宏/M.Okamura(CROSSOVER) ルボラン2020年8月号より転載
藤原よしお

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