8代目のゴルフGTIは、本来なら3月のジュネーブ・ショーで公開されるはずだったが、新型コロナウィルスの影響でキャンセル。今回の試乗会も大規模なイベントではなく、ドイツ、それもフォルクスワーゲンの本拠地、ウォルフスブルグ郊外で少人数のプレスを集めて開催された。さっそく、最新GTIの第一印象をお伝えしよう。
ゴルフGTIも最新こそ最良!
新型ゴルフGTIのエクステリアで最も特徴的なポイントは、フロントのハニカムグリル両脇にある5つのLEDライトだ。本来はフォグランプだが、点灯すると独特の存在感を示す。さらにその上には、伝統の赤いアクセントラインがラジエターグリル上縁を左右に走る。リアエンドに回ると、左右2本出しのエキゾーストパイプと、やや大型化されたルーフエンドスポイラーがスポーティな雰囲気を高めている。とはいえ、基本的にその佇まいは歴代GTI同様にアンダーステートメント。無闇やたらに高性能を主張しない。
一方、黒を基調とするインテリアでは、赤いステッチの入ったスポーツステアリング、そして伝統のタータンチェックのトリムを採用したスポーツシートが目を引く。ドライバー正面のメーターパネルはベースモデルと同じMIB-Ⅲを採用するフルデジタルで、中央にタコメーター、左右にパワーや過給圧、あるいはGレートなどGTI独自の情報を表示する。
エンジンは先代GTIと同じ2L・4気筒だが、開発コードはEA888 evo4。すなわち、最高出力は245ps、最大トルクは370Nmと、先代のGTIパフォーマンスと同じ数値で、燃料噴射圧を200バールから350バールへ引き上げ、直噴フィルターなどを採用して欧州最新の排気ガス規制値に対応。組み合わされるトランスミッションは標準で6速MT、オプションで7速DSGを用意、カタログ上のダイナミック性能はともに0→100km/h加速が6.3秒、最高速度は250km/hでリミッターが介入する。
サスペンションはフロントがストラット、リアがマルチリンクに変更はないが、サブフレームにはクラブスポーツ専用だったアルミ製が移植され3kgの軽量化と高剛性化を実現。電制のシャシーコントロール、DCCはオプションで用意される。さらに電制のプログレッシブステアリングも、ソフトウェアの改良で操舵入力に対する反応が素早くなっているという。
試乗車は日本で発売予定のDSGモデルで、オプションの19インチタイヤを装着していた。混雑した街中を抜け、さっそく郊外のカントリーロードとアウトバーンを繋ぐおよそ200kmの試乗ルートを辿る。走り始めてすぐに感心したのは、ダイレクトでクイック、しかも終始安定した身のこなしだ。ワインディングでは、手首のわずかな動きにリニアに反応するプログレッシブステアリングによりクイックにターンイン。路面からのインフォメーションも正確そのものだから、スムーズで素早いコーナリングを堪能することができる。旋回スピードを上げてもボディの無駄な動きはきっちと抑えられ、ステアリング特性はほぼニュートラルをキープ。アウトバーンの超高速走行では、15mmローダウンしたシャシーと約10%改善した空力特性により、盤石な直進安定性を示してくれた。
このように、あらゆるシーンで先代を明らかに上回るダイレクトでスポーティなパフォーマンスを披露してくれた8代目ゴルフGTI。派手さはないが、飽きのこない謙虚なキャラクターこそが1976年の発売以来、およそ230万台のGTIが世界中に出荷されてきた理由だ。ドイツではすでに予約受付が始まっているが、現時点で価格は未発表。現地では、ベースモデルが約3万5000ユーロ(約440万円)と予想されている。