※この記事は2004年12月に発売された「VW GOLF FAN Vol.2」から転載されたものです。
アピールポイントはスペースユーティリティ
ゴルフにユニークな派生モデルが生まれた。全高が95mm高い“ゴルフ・プラス”というニューモデルが、この12月はじめに開催されたボローニャ・モーターショーでデビューしたのだ。この新型を、フォルクスワーゲンは“プログレッシブ・オールラウンド・ヴィークル”と位置付けている。さて、どんなクルマなのか。
丸型2灯となるテールレンズに太いCピラーと、フォルクスワーゲン、ゴルフのデザインアイデンティティは、シッカリと守られている。全高が高くなって、フォトではまたまたサイズ感が分からなくなっている。
ご覧の通り、外観は少し背が高くなってずんぐりとしたゴルフ。フロントグリルはゴルフと基本デザインが同じの2ブレードであるものの、そこから広がるボンネットのVシェイプは、オリジナルが凹面であるのに対し、プラスは凸面。Aピラーの位置は前進し、よりモノボリューム感覚が強くなっている。
ダッシュボードは大幅に変更されていて、ナビゲーションなどのモニター画面を中央の高い位置に置くなど、SUVあるいはミニバン系の使い勝手を意識したデザインとなっている。
ドアはガラス下端までの高さが増し、オリジナルを見慣れた目にはちょっと変。プレスリリースによれば、ボディはほぼ新設計といってよく、共通部品はドアミラーとかVWロゴぐらいでしかないという。
これが通常の状態のリアシート。ヒップポイントはオリジナルに比較して85mm上がっているという。それにしても、余裕タップリの空間だ。
ゴルフ・プラスのアピールポイントは、なんといってもスペースユーティリティの高さ。全高をオリジナルに比較して95mm高い1580mmとして、まずシートのヒップポイントを上げ(フロントで75mm、リアで85mm)、乗員をアップライトな姿勢で座らせることによって、前後方向にさらなる余裕を生み出している。
中央のシートバッグを倒せば、カップホルダーが設けられたボードが出現。もちろん、アームレストにもなって、後席の乗員に安楽な空間を提供する。
加えて、リアシートのアレンジの多彩さもアピールポイント。リアシートは40対60の分割可倒式で、シートの中央部分はカツプホルダー付きのテーブル、アームレストにもなり、小物入れにもなるという。面白いのは左右それぞれ高さを160mm変えることができ、トランクスペースは、このリアシートのアレンジによって、最少で395L、最大で505Lまでに変化させることができ、シートバックを倒せば1450Lもの容積を得ることができるという。
シートバックは前進しつつ沈んでいく仕組み。シートのクッション部が下がっていることに注目。これらの操作は、ひとり簡単にできるという。
このリアのシート関連、ラゲッジスペースの使い勝手は非常によさそうだ。オリジナルのゴルフではシートバックを倒した場合、フロアに段差ができる状態だったが、ゴルフ・プラスの場合、トランクフロアをあげて、二重底構造としているため、ほぼフラットになる。もちろん、二重底のトランクは貴重品を人目にさらさずに置けるというメリットもある。
クッション部が沈み込むことで、現れるフロアはトランクの二重底上面とほぼ同じ高さに。水平ではないが、ほぼフラットな床面になるわけだ。
エンジンは当面、ガソリンの1.4Lと1.6L2種、ディーゼルが1.9Lと2.0LのTDI2種の予定で、順次バリエーションを増やしていく予定。発売開始はヨーロッパでは’05年1月から。フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンによれば、残念ながら、日本導入の計画はいまのところないとのこと。
二重底のトランクはそう高さがあるわけではないが、そこそこの容積を確保する。モノを人目にさらすことなく保管でき、便利なことは間違いない。
新規参入を迎え撃つ体制着々
ゴルフが属するCセグメントは最近、BMWの1シリーズをはじめ、近く発売されるというメルセデスのヴィジョンBなど、プレミアムブランドの新規参入もあって販売競争の激化は必死。このカテゴリーの王者であるフォルクスワーゲンも、シェア獲得の次の一手としてこのゴルフ・プラスを登場させたよう。ちょうどゴルフトゥーランの中間に位置するクルマで、ヨーロッパでもファミリーカーの主流となりつつあるミニバン系を意識しつつの新バリエーションであり、ヨーロッパでは大いに注目を集めそうだ。
かつてIIには“カントリー”という背高ゴルフが存在したが、それは4WDとして悪路を走破するために車高を上げたもの。ゴルフ・プラスはコンセプトがまったく違い、室内の容積拡大を追求した背高のっぽ。4WDはない。