新たに付けられた「e」の意味とは? マツダの次世代エンジンSKYACTIV-Xが大幅に改良された。2021年1月初旬に登場する「マツダ3」で搭載される予定だという。 それを受けて、マツダ美祢自動車試験場(山口県美祢市)で、試作車と現行車を乗り比べてみた。 車両の外観としては、車体の側面にSKYACTIV-Xロゴを新設、また車体後部のロゴがe SKYACTIV-Xに代わっている。 なにがどうして、SKYACTIV-Xの頭文字が「e」になったのか? 先に発表された、新型クロスオーバーSUV「MX-30」の場合、搭載するSKYACTIV-Gにがモーター駆動によるマイルドハイブリッド化したことで、e SKYACTIV-Gと呼ぶ。 一方、SKYACTIV-Xは、そもそもマイルドハイブリッドであり「なぜこのタイミングで e SKYACTIV-Xなのか?」という疑問がユーザーや販売店から出るのは当然だろう。 これについては、マツダが掲げる2030年を目指す技術開発の長期ビジョン「サスティナブルZoom-Zoom宣言」を踏まえて、電動化戦略でSKYACTIV全体の「e化」を一本化させるという考え方だ。 では、今回のSKYACTIV-Xの「e化」はどういう内容で、その変化をドライバーはどのように感じることができるのか? その舞台としてマツダが選んだのが、美祢自動車試験場だ。サーキット走行が主体ではなく、ワインディング路を含めて、コース上の各所にパイロンを置いて市街地や高速道路を想定した「実用性」を検証した。 Xに対する決めつけがあった…… まず、現行車に乗った。 感想としては「SKYACTIV-Xなのだから、こういう感じなのは当然」という感じだ。 SKYACTIV-Xの特長は、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃料の考え方を融合した、SPCCI(火花点火制御圧縮着火)であることは言うまでもない。 この理論について、SKYACTIV技術の生みの親であり、現在はマツダのシニアイノベーションフェローを務める人見光夫氏から詳細な説明を受けてきた。 特に、2017年9月にドイツのマツダ開発拠点で行われた、SKYACTIV-X試作車の世界初披露の際、マツダのSKYACTIV-Xにかける熱い思いを、人見氏やマツダのエンジニア諸氏からうかがった。 見方を変えると、筆者としては「SKYACTIV-X搭載車の乗り味はこういうもの」という、決めつけや思い込みがあったように感じる。 なぜ、そう思うのか? それは、今回の試乗で現行車から試作車に乗り換えた時に実感した。体感としてはクルマ全体が「まったくの別物」に感じるほど、e SKYACTIV-Xの進化は大きい。 マツダ3の担当主査である、谷本智弘氏は今回の進化について「自在感と瞬発力」という2つのキーワードを示した。一見すると抽象的だが、実車に乗ってみると、自在感も瞬発力も本当によく分かる。端的に、走っていてとても楽しかったし、運転が楽に感じた。 ソフトウエアによる大幅な実感の変化 今回、外部に対しては非公開となるトルクカーブを示す図がある。それによると、2500rpmまでのトルクの立ち上がり方が現行車と比べて大きい。 さらに、最大トルク発生回転数が現行車の3000rpm(224Nm)に比べて、4500rpm(240Nm)となり、全回転域においてトルクが厚い。回転数が伸びることで、パワーもトルクの伸びも気持ちよく感じることができる。 アクセルレスポンスがモーターとスーパーチャージャーとの連携を高めている。また、EGRを含めて、気筒内への供給空気量が増やすなど、エンジン全体として大幅にブラッシュアップされた。 さらに、オートマティックトランスミッションとの制御連携も緻密化され、様々な走行シーンで心地良いシフトダウンによる回転数の適正化を実感できた。結果的に、クルマ全体を操る愉しさが増えたと感じた。 今回の改良型ソフトウエア「SPIRIT #1.1」について、2021年1月のe SKYACTIV-X発売以降に、すでにSKYACTIV-X搭載車を所有するユーザーに対して無償アップグレードが検討されている。 マツダの電動化戦略、SKYACTIVの「e化」は、e SKYACTIV-Xで実感できるように、マツダらしい内燃機関に対する挑戦心が強く反映されている。 取材協力=マツダ https://www.mazda.co.jp/ 全文を読む